表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/145

01-26.vsメイド長

「まったく。

 あの子はまた勝手な事を」


 パティは満面の笑みでメイド長に手を振っている。

メイド長が負けるとは微塵も考えていないようだ。

まったく舐められたものだな。

ふっふっふ。その油断こそが命取りと言うものなのだよ。



「如何でしたか、エリク様。

 彼女の魔術は中々のものでしたでしょう?」


 あかん。バレてる。

全然油断してない。メイド長の方は。


 というかメイド長ってなんなの?

メイドの長じゃなかったの?

戦えるのが当然なの?


 メイド長だからこそ、察しが良いのだろうか。

それとも魔力が見える事と何か関係あるのだろうか。


 単に私の考えが安直過ぎるだけかもしれない。



『一つしか見せてもらえんかった。

 正直、わけがわからんかったぞ』


 医療関係の知識はそれなりに蓄えられたと思うのだがな。

昨晩はそっち系の資料が中心だったからな。

この体のせいか、今の私は結構記憶力が良いのだ。


 いかん。現実逃避している場合じゃない。



「エリク様が自然にやっていらっしゃる事も、我々からしたら理解の及ばぬ現象なのです。

 その突き合わせはこれから進めていくとしましょう」


『ところでものは相談なのだが』


「降参は致しません」


 ぐぬぬ。本当に察しの良い事で。



『お主にこれ以上続ける理由は無かろう?』


「ユーシャには強くなって頂きたいのです」


『何故それをお主が?』


「メイドの教育は私の務めです。

 それ以上の理由はございません」


 メイドってやっぱ強くないとなの?

いざとなったら主守れるように?


 いやまあ、単に惚けてるだけだろうけども。

大方、ユーシャが冒険者に戻ってもやっていけるようにと、気にかけてくれているのだろう。



『実は丁度ユーシャの師を探しておってな』


「お引き受け致しましょう」


「!?」


『良いのか?

 メイド長ともなれば多忙なのであろう?』


「問題ありません。

 エリク様のご要望には最大限お応えするようにと仰せつかっております」


 ディアナの為にって意味では?

それとも私への礼って事?

まあいっか。そう言ってくれるなら都合が良いし。



『それは有り難い。

 ならばお言葉に甘えさせて頂くとしよう』


「では早速参りましょう。

 最初の授業を始めます」


 今度はメイド長の方から仕掛けてきた。

一瞬で距離を詰め、ユーシャの肩に手を置きながら同時に足を払うようにしてユーシャの体勢を崩しにきた。


 しかしユーシャの体はびくともしなかった。

既に私の仕込みは終わっている。ユーシャの全身に魔力壁を纏わせ、地面に杭を打つようにしっかりと縫い付けてある。


 魔力が見えるとは言え、流石に地中の魔力までは見通せまい?なんて、浅い考えでも上手くいってくれたようだ。


 ユーシャ自身も動けはしないが、メイド長に隙を作り私が反撃するだけならばこれで十分だ。



『!?』


 一瞬怯んだかに見えたメイド長を魔力の腕で拘束しようとするも、気が付いた時には大きく距離を取られていた。


 こっちは準備万端で待ち構えていたのに、それ以上の速度で逃げられてしまった。


 今ので掠りもしないとは……。

腕の生成速度は課題だな。

かと言って、最初から出していたのでは意味がない。

何せ相手には見えているのだ。

今みたいに突っ込んでくるはずがない。


 これはやはり、勝つのは無理だな。

どうにか引き分けにでも持ち込めないものだろうか。



「なるほど。

 そのような使い方も出来るのですね。

 ならば腕に拘る必要も無いのでは?」


 それはそう。

けどイメージするのって案外難しいのだ。

無数の触手でも生やせれば手っ取り早いのだろうがな。


 それに私の元から離れた魔力は霧散してしまうのだ。

弾丸のように飛ばすことも出来はしない。


 かといって腕力が極端に強いわけでもない。

地面を引っ剥がして大穴を空けるような事も出来ない。


 やはりやれる事と言えば、そこらに転がっている石を投げつけるくらいか。決闘向きの戦い方とは到底言えんな。



「考えごとはそこまでに。

 まだ授業は終わっていません」


『「!?」』


 なんだ!?何が起きた!?

ユーシャの体が浮いている!?

いったいどうやって!?



「!!」


「無理に動かないで。

 肩を痛めます」


 いかん!これは地面か!?

ユーシャがうつ伏せで抑え込まれているのか!?

これでは何も見えん!!


 というか暗い!怖い!助けて!

なんて言ってる場合か!!


 私は当てずっぽうに魔力の腕を振り回した。

魔力の腕は意外とあっさりメイド長を捕える事に成功した。



「魔力の腕。

 なるほど。これは想像以上に厄介ですね。

 力は思っていた程ではありませんが。

 とは言えそこも使い方次第です」


『な!?』


 弾け飛んだ!?

今度は何を!?

まさか力尽くで!?

見えんぞ!何もわからんぞ!!



「降参して下さい。

 これ以上の抵抗は無駄です」


 だが!!まだ!!



「……こうさん……する」


 ユーシャ!?


『待て!まだ策は!』


「エリク様。貴方は甘すぎます。

 ここから貴方が何かするより、私がユーシャを落とす方が速いのです。

 ユーシャを傷付けられねば理解できませんか?」


『くっ!……降参だ!』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ