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04-45.計画通り

「ふふ♪ エリクったら気付いてないのかしら♪ あれって完全にプロポーズよね♪ 良いわ♪ やっちゃって♪」


「は~い♪ ちちんぷいぷい~♪」




----------------------




「それで?」


「「ごめんなさい」」


「二人とも全く反省しておらんだろう」


「「……だってぇ~!」」


 アニタとパティが息ぴったりだ。


 取り敢えず扉の前にいた二人をひっ捕らえて(ソファの上に)正座させてはみたものの、二人とも大して反省する様子がみられない。本当にどうしたものやら。



「なあパティ。アニタに勝手をするなと言ったのはお前自身であろう?」


「はい……」


「パティが率先して禁を破るのはマズいだろう?」


「けど……」


「けどじゃなかろう。どうしてもと言うならもう一度相談すれば良かったのだ。私は言っただろう? パティならそう望むとわかっていたと。故に最初から叶えるつもりでいたと。ただそれでも少しばかり時間を置く必要はあるのだと」


「はい……」


「む~。結局失敗したんだから良いじゃ~ん……」


「ダメだぞアニタ。そんな態度はいかん」


「むぅ……」


 まったく。ディアナ達に突き出してやろうかしら。流石にこの件ではディアナだって怒るだろうし。


『お姉ちゃんがいなかったら危なかったですね♪』


 そうだな。ありがとう。ネル姉さん。



 どうやら部屋の様子を覗き見ていたパティとアニタは、私の攫うという言葉を条件に、同意したイネスを強制的に私の眷属へと加えようとしたらしい。


 幸い今の私は姉さんが住み込みで護ってくれているので目論見は失敗に終わったが、パティが自らの言葉すら無視して凶行に及んだ事は問題だ。この子のそれはそれ精神というか、都度都度正しいと思えば棚上げも厭わないというか、良く言えば臨機応変な、悪く言えば一貫性の無い言動はいい加減どうにかするべきなのかもしれない。


 今後は学生ではなく社会人だ。自らの言動によって首を絞められる機会も自ずと増えるだろう。しかも卒業早々に社員数二十人近い会社を立ち上げる若き社長でもある。あまり勢い任せばかりでもいられまい。ただでさえ私達は悪目立ちしているのだからな。



「あの……クシャナ様」


「どうした? イネス」


「その……先程から仰られている眷属化とは? イネスと何か関係があるのですよね?」


「そうよ! 妖精だけが使える特別な術でイネスをエリクの所有物にしちゃうの! そうすれば絶対に引き離せなくなるわ! 万が一にも連れ戻される心配が無くなるのよ!」


「!! クシャナ様! 是非イネスめにそれを!」


「ダメだ。眷属化は特別なのだ。決して気軽に施せるものなどではない」


「ならば何をすれば頂けますか! なんでもします! どうかイネスを捨てないでください!」


 なっ!?


 興奮したイネスが縋り付いてきた。その瞳は恐怖に染まっている。この子は本気で私に捨てられるなどと考えている。先程感じた安堵は所詮まやかしだったのだとあっさり切り離してしまったかのようだ。ついさっきあんなに喜んでくれたのに。



「何を言っておるのだ。私はイネスを捨てたりせん」


「ならば!」


「ほら言ったじゃない。この子はそうでもしないと納得出来ないのよ」


「いい加減にしろパティ。これ以上焚き付けるな」


「クシャナ様! お願いします!!!」


 くっ……そんな目で見るな……。


『気を確かに。今現在ギンカの所有権はイネスにも付与されています。このままでは押し切られるでしょう。ここは撤退すべきかと』


 !? そうか! あの時!



「とにかくその話は後だ。どの道家族の許可も取らねばならん。先ずは皆と合流しよう」


「ふふ♪ それもそうよね♪ ええ♪ そうしましょう♪」


 おい。なんだその笑みは。まさか根回し済みなのか? やはりユーシャとディアナには事前に話していたのか?




----------------------




「許可するわ」


 ちくせう。



「私も別に良いよ。私はずっと言ってるでしょ? 眷属はただの道具だよ。エリクがどれだけ道具を増やそうが気にしないよ。変わらず私を一番に愛し続けてくれるならね」


『私の可愛い妹が……なにか妙な方向に……』


 それはまじごめん。私もちょっと危機感感じてる……。



「さぁ♪ これでなんの気兼ねも要らないわね♪ やっちゃいましょう♪ エリク♪」


「ディアナ。パティの勝手を許しておって良いのか?」


「別に勝手なんてしてないわよ。イネスの事はずっと前から聞いていたもの」


「おい。私は聞いとらんぞ」


「エリクに話せなかった理由はもうわかってるでしょ?」


「その後も含めて強引過ぎる。もっと他にやりようもあったろう」


「良いの♪ エリクは私の為なら何でもしてくれるって知ってるもの♪」


「何をそんなに浮かれておるのだ? そこまでイネスが欲しかったのか?」


「それもあるけどなんだか興奮が抜けきらないのよね。今日はエリクがいっぱい相手してくれたからかしら♪」


 昼間の戦闘からか? まだアドレナリンが出続けているのか? 大丈夫か?



「そこはせめて卒業の方と結びつけるべきであろう」


「もちろんそれもあるわね♪ 今日は嬉しい事もそれ以外の事もありすぎたのよ♪ ふふ♪ 今晩はなんだか寝付けない気がするわ♪ 後で散歩に付き合ってね♪」


「それは勿論構わんが」


「やった♪ 二人きりで夜のデートよ♪ 早速大人になれたみたいで嬉しいわね♪」


 おと……単純に学生が終わったという意味か。だが今の浮かれポンチっぷりではそのまま押し切られかねんな。パティは初心だがいざとなったら強引だからな。用心するとしよう。



「それならさっさと済ませちゃいましょう。先に明日の予定決めよ。まだイネスにも確認しておく事があるもの。眷属化で寝込まれては困ってしまうわ」


 やはりディアナの口ぶり的にも既に眷属化は決定事項であるようだ。どうしてこうなった。


『パティさんの方が何枚も上手でしたね。それだけ今日この日の為に準備を進めてきたのでしょう』


 パティは私に対する根回しだけ雑すぎる。と言うか敢えて一切を隠し通してきたのだ。私がユーシャを通して覗いている時は決してそんな姿を見せていなかったのだ。ある意味徹底している。これはこれで根回しの一環だったのだろう。


 私の心境としては依然として不服だが、パティが全てに対して真摯であった事だけは伝わってきた。今日の事は決して思いつきによるものではなかったのだ。私もパティを見くびりすぎておったのだろう。ならば仕方ない。潔く負けを認めよう。今日の所はパティの好きにさせてやろう。四年間に渡る学園生活の終わった節目だ。精一杯労ってやらねばな。



「あ、そうそう。もう一つ言い忘れてたんだけどね」


「……なんだ?」


「ナダル先生、うちでも副業してもらう事になったから♪ 大丈夫♪ 心配要らないわ♪ もちろん学園長にも根回し済みよ♪」


「誰も選んでおらんのではなかったのか?」


「引き抜きには至らなかったわ♪」


 屁理屈こねおって。小賢しい。



「……展望は?」


「隙を見て落としちゃって♪」


 この強欲王女め。未だ愛に飢え続けているとでも言うのだろうか。私達の愛が足りておらんのか? 片っ端から手を出しおって。これではハーレムの真の主はパティではないか。



「なあ、やっぱり私に対する指示だけ雑すぎないか?」


「エリクにそんなの要らないでしょ♪」


 信頼は嬉しいがな。蚊帳の外みたいで寂しい。今のパティの素っ頓狂な言葉も誰一人止める者がおらんし。これも既にディアナ達には根回し済みだったのだろう。ちくせう。

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