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04-41.祭りは続く

『ふぁ~……まだ終わらないんですかぁ?』


 ね~。


『案外と貴族って暇なんですね』


 ね~。



 ……いや、それだけ貴族的に大切なことなんでしょ。……たぶん。



「いやぁ。本当にお美しい! 娘にとは言わずいっそ我が」


 早々に壇上から降ろされて一人一人と挨拶を交わしていると、時たまそんな風に直接アプローチをかけてくる者達まで現れた。大概は十六にもなる娘がいるオジサマだ。冗談じゃない。妻子もおるのにどういう神経してんだか。たまに卒業生の兄っぽい若い人もいるけど。



『それギンカが言えます?』


 あ~あ~聞こえな~い~。



「伯爵! 妖精王陛下に対して無礼であるぞ! 身の程を弁えよ! 妖精王陛下には我が娘こそが~~~!」


「何を言うか! 貴殿の娘は~~~!」


「なにおぅ!! そういう~~~こそ! 」


 あかん。遂に言い争いまで始めてしまった。むしろここまでよく保った方だけど。



「妖精王陛下! 是非我が領に!」


「あ、ああ。うむ。機会があれば……」


「であれば明日の朝一でお迎えにあがります! なぁに我が領まではすぐでございます! 新年度までには!」


「嘘を言うでない! 貴様の領は辺境も辺境ではないか!」


「なにおぅ!? そういう貴様こそ!」


 やばぁい。ギスギス度が時間と共に上がっていく……。



「皆様。そろそろお時間でございます」


「「「「「「……」」」」」」


 学園長先生が壇上からたった一言そう告げると、今までの馬鹿騒ぎが嘘のようにピタリとやんでしまった。



「妖精王陛下。どうぞこちらへ」


 皆が固まった隙を逃さず、ナダル教諭が私を連れ出してくれた。



「ありがとうございました」


「ああ、うむ。こちらこそ」


「このままお帰り頂いて構いません。私がお屋敷までお送りさせて頂きます」


「それには及ばな……いや。お願いしよう」


「はい」


 講堂の外からも沢山の人の気配がする。一人で出てしまえばまた囲まれるのがオチだろう。



「パティとシルビアが世話になったな」


「ふふ。それは私のセリフでございます」


「そうか……。ナダル先生。来年度もどうかよろしくお願いします。デネリスの方も中々のじゃじゃ馬ですので」


「はい♪」


 やはり良い先生だ。ご迷惑をおかけしすぎないようにせねばな。ディアナにもよくよく言っておこう。




----------------------




「エリク!」


 ありゃ? パティ? と言うか皆まだ学園にいたの?



 学園の門まで辿り着くと、パティ達だけでなく大勢の卒業生達が待ち構えていた。あれ? でも今度は女子だけ?



「これから私達の家で二次会よ♪」


 おいまじか。いったい何十人いるのだ。女子会にしては多すぎるだろう……。



「先生も来て! ね! 良いでしょ!」


「いえ、私は……」


「お願い! 先生!」


「……後程になりますが構いませんか?」


「ええ! 待ってるわ!」


 まだ先生には仕事も残っているのだものな。あの学園長先生に聞いたらすぐに許可くれそうな気もするけど。



「行きましょう♪」


 メアリ達は知っていたのだろうか。流石にこの場の思いつきってことは無いよな。パティだもの。きっと事前に準備くらいしていたさ。たぶん。でもきっとニアは知るまい。知っていたら止めそうだし。



 姉さん。


『はいはい。念話ですね。どうぞ』


 ありがとう。



『ニア。そちらはどう……何をしておる?』


「!? あんたねぇ! 覗くなら覗くって言いなさいよ!」


『あ、ああ。うむ。次から気を付けよう』


 ……いや、私は元々何時でも覗いてるって話になっていた筈だけど。今日は少々立て込んでいたから暫く切っていただけで。



「それでなによ!」


『これからデネリス家の王都邸でパーティーが開かれる。ニアも是非参加しておくれ』


「パーティー? えらく急じゃない」


『そうは言っても卒業式の直後だ。そうおかしなことでもあるまい』


「それはそ……いや、無いでしょ。平民が酒場に集まるのとはわけが違うのよ?」


 まあうん。


「大体なんでデネリス家でやるのよ?」


 まあそこはほら。学園とも近いし。広いし。ね?



「また面倒事に繋がらないでしょうね?」


『そういう事は口にするもんじゃないぞ。かえって可能性が高まるではないか』


「ねえ? あなたわかってる? 貴族や王族って世間体が何より大切なのよ? そんな貴族家の子女が揃いも揃って妖精王の住む屋敷にこんな時間から集まるのよ? ただでさえ貴方の女癖の悪さは広まっているのによ? 下手すると全員分纏めて責任取らされるわよ?」


 えぇ……。



「そうでなくたって派閥だなんだと面倒なのに。やっぱりパティが王位を狙ってるんだって皆思うのよ? そこんとこちゃんと理解しているの? 貴方達は揃いも揃って脇が甘いんじゃないかしら?」


 ごもっとも……。まあこっちはわかってた。だからこうして告げ口のような事をしているわけだし。



「とにかく私も参加するわ。少し遅れるけど必ず行くから。あなたも油断しないで。私が着くまで絶対に問題を起こさないでよ」


『……うむ。すまんな。よろしく頼む』


「何か補填しなさいよ。私今日もいっぱい頑張ったのよ」


 珍しく子供みたいな口ぶりだ。



『勿論だ。何でも言うがいい』


「そういうところがダメなのよ! 気軽に何でもとか言わないで頂戴!」


『すみません……』

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