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04-40.決着と延長戦

「パト! お願い!」


「おっけぇ~! シルヴィ!」


 既に夕刻も間近。最後に残ったのはこの二人だけだった。


 パティは私の眷属でもないのにここまでずっと動き続けている。いったいどんな体力をしておるのやら。正直ドン引きだ。ここまで本気で挑み続けてきた事も含めてな。今日の主旨を忘れおって。後でお仕置きだ。


 とは言え流石のパティとてそろそろ限界も近かろう。あと明日は間違いなく疲労で動けまい。今は何かアドレナリン的なやつで無理やり動き続けているだけなのだろうし。



 パティが魔力壁を破ったタイミングでシルビアが直接殴りかかってきた。シルビアは何やら体に魔力を纏っている。未だ魔装の域にまでは至っていないのでまともな耐久性は期待出来んだろうが、それでも明らかな意図を以って巡らせているようだ。一体ここからどう繋げるつもりだろうか。



「!?」


 まぶし!?



「パト!!」


「ええ!!」


 至近距離まで迫ってきたシルビアが全身から強烈な光を放った。あの魔力はこの為の準備だったのか。警戒してシルビアを注視し過ぎてしまった。シルビアは囮だったのだ。私が怯んだ隙に更にシルビアを追い抜いたパティが杖を叩きつけてきた。



「!!」


「取った!」


 私の魔装が砕かれ、魔導杖から放たれた魔力の爆発が至近距離で炸裂する。杖の魔力電池に残った全魔力が込められたその威力は人間程度なら一瞬で消し飛ばし得るものだった。



「エリク!?」


「先生!?」


 咄嗟にパティとシルビアを守る為の魔力壁を優先した為、私は何の防御も出来ずに直撃を受けてしまった。どうやらシルビアも事前に魔力壁を展開してはいたようだ。だから私が自身の事を省みずに二人を守る事は想定していなかったらしい。体が地に叩きつけられる直前、慌てた二人の声が聞こえてきた。




----------------------




「やり過ぎだ」


「「ごめんなさい……」」


 未だ皆が見守る中、夕焼けの差し込む校庭で二人の少女が項垂れている。折角の卒業式だというのに場違いな光景だ。



「魔力壁を過信するなシルヴィ。あれでは爆発を防ぎきれんかっただろう。私が庇わなければお主らは大怪我を負うところだったのだぞ」


「はい……」


「パティも調子にノリすぎだ。爆発の威力を読み違えたな」


「はい……」


「だが二人ともよくやった。私に一撃を入れられる者なんぞベルトランかタマラくらいだ。お前達はそこに並んだのだ。学園生活の集大成を飾るには十分な成果だろう」


「「……はい!」」


 まあ私はまったくの無傷なんだけども。精々服があられもない事になっている程度だ。これはこれで問題だがな。流石の私も服までは癒やせんし。姉さんも折角なら服まで守ってほしかった。



『仕方ありませんね。ひょいっと』


 姉さんの雑な呪文で私の服はあっという間に新品同然に修復された。ありがとう姉さん。後でその術教えて。



『ギンカにはまだ無理ですよ。あなたもまだまだなんです。あの程度軽くいなしてもらうくらいでないとお姉ちゃん安心出来ません』


 うむ。精進しよう。



 さて。一先ずこれで落着だな。いい加減締めに入ろう。



「妖精王陛下」


「ああ。ナダル教諭。すまない。お見苦しいところをお見せした。それに主旨を忘れて殆ど身内だけで盛り上がってしまった。重ね重ね申し訳ない。だがここらで終いとしよう。あまり遅くまで貴族の御息女達を引き止めるわけにもいかんものな。皆も今宵は家族と語らう事もあろう」


「いえ、とても勉強になりました。このような催しを開いて頂けたこと改めて感謝致します」


「そうか。そう言って頂けるなら何よりだ。これで少しでも借りをお返し出来たなら幸いだ」


「それでですね。妖精王陛下、あちらをご覧頂けますでしょうか?」


 ナダル教諭の指し示した方向にはいつの間にか沢山の見学者達が集まっていた。



「彼らは卒業生達の父兄の方々です。彼らも妖精王陛下とお話をさせて頂きたいようでして。この後もう少しだけお時間如何でしょう?」


 つまりはこの国の貴族達か。流石に国中の者達が集まっているわけでもないだろう。大体は王都かその周辺程度である筈だ。その割にはえらく人数が多く見える気がするが。もしかして在校生の父兄も集まってない?



「うむ。勿論構わぬ。講堂をお借り出来るか? まさか彼らまで挑戦したいと言う話でもなかろう」


「ええ。ありがとうございます。どうぞこちらへ」


「パティ。そういう事だそうだ。この場は任せるぞ」


「ええ!」


 生徒達への締めの挨拶は任せて、ナダル教諭について講堂へと向かう。前方でも既に父兄の方々が移動を始めている。あっちは学園長あたりが引率しているのだろう。私先周りしなくていいのかな? こっちも一応今では名実共に王とは言え、あんなに大勢の貴族を待たせると後が面倒にならないかしら。



「ナダル教諭。私は記者会見、いや、質疑応答か何かをすれば良いのか?」


「はい。そのようにお考え頂ければ間違いないかと」


 とことん付き合うとしよう。ついでに良い印象を持ってもらえれば都合も良い。ただでさえギルド関連で騒がせてしまったばかりなのだし。広まった悪評がこの機会に多少なりとも緩和されると良いのだが。



『なんだか面倒な予感がします。ノコノコついて行って大丈夫でしょうか』


 面倒とは?


『ギンカもわかっているでしょ? 彼らは妖精王に売り込みをかけたいのです』


 まあそういう側面もあるかもだが。


『次々とお見合いを迫られますよ』


 今日の件は元よりそれが本題だったのでは? 結局パティとシルヴィとソラ以外で私に肉薄した者はおらんのだから、受け入れは無しの方向で締めさせてもらうけど。


『だからこそじゃないですか?』


 つまりこれはそういう意味での延長戦でもあるのか。


『精々気を引き締めてください♪ お姉ちゃんもこればかりはあまり力になれませんから』


 うむ。そうしよう。

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