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04-36.もう一組の協力者

 アニタ達との打ち合わせはそこそこに、その日は一旦お開きにして姉さんと二人で別室に移動した。



『なんでここに……』


「へ~♪ ユーちゃんにそっくりだね♪」


 姉さんが行こうと言い出したのはファム達の部屋だった。だいぶ少なくなってきたとは言えまだ空き部屋も残っているのに、わざわざソラを怖がらせなくともと思わなくもないが、何時までもソラがあの調子では困るかと思い直して同意した。



「今日はマーちゃんがおらんのだな」


「うん。ソラ君に譲ってくれたみたい」


 マーちゃんにも一応部屋は用意されているのだが、だいたい何時もファムかリリィのところに入り浸っているのだ。基本的にマーちゃんは一人で寝られないタイプらしい。ふふ。可愛らしいものだな。



「ネルさんね。ネーちゃん?」


「それはなんかなぁ」


「お好きに呼びください♪」


 満更でもなさそう。



「ネル姉さんは」


 あ、そっちで呼ぶんだ。



「なんでユーちゃんにバレたくないの?」


「かくかくしかじか」


「ふふ♪ ネル姉さんって面白いね♪」


 お気に召したようだ。



「それで? ボク達も仲間に加えてくれるんだよね?」


「うむ。ソラは元よりその存在を知っておったからな。ソラと一緒に過ごす事の多いファムには色々とフォローしてほしくてな」


「おっけ~♪ そういう話しなら任せてよ♪」


 ふふ♪ 話しが早くて何よりだ♪ ファムに間に入ってもらえるなら安心だな♪



「そうだクーちゃん。今晩はお姉さん借りても良い? 代わりにソラ君貸してあげるから」


『えぇ!?』


「良いぞ」


「えぇ!?」


 なんで姉さんまで? 姉さんってあれだよね。言っちゃああれだけどあまり察しはよろしくないよね。



「ではソラ。行こうか」


 ソラの手を引いて問答無用で部屋を出た。姉さんの方はファムがなんとかしてくれるだろう。たぶんこれが最適解だ。私の言葉よりファムの言葉の方が姉さんにも伝わりやすいだろう。姉さんには色々と覚えてもらわねばならん。もう少し協調性を身に着けねばバレるのはあっという間だろう。それは姉さんの本意では無いのだ。今日来たばかりの姉さんと別れるのは心苦しいが、ここはファムに任せるとしよう。



「ふむ。ここはまだ空いているな。よしソラ。今日はこの部屋だ」


『うん……』


 まだ元気が無い。姉さんとも別れたのに。



 部屋に入って、アウルムに出してもらったパジャマに着替え、ソラを抱えてベットに潜り込んだ。



『主様……』


「どうしたソラ。元気が無いではないか」


『……しっぽがムズムズする』


 今は生えてないじゃん。幻肢痛?



「大丈夫だ。姉さんは味方だ」


『うん……』


 こういう時に掛けるべき言葉はなんだろうか。私もあまり得意なわけではないのだよなぁ。ストレートに伝えたところで意味もあるまい。だがファムにはもっと難しい姉さんを任せたのだ。ソラの事は私が責任を持って元気づけよう。



「ソラ。魔力を流しておくれ」


『……うん』


 ソラと額を合わせ、片手の指をしっかりと絡め合わせる。額から魔力を流し、手からソラに魔力を流してもらう。


 別に眷属であるソラに魔力を流すだけなら物理的接触も必要無い。だがこれはこれで意味がある。これは魔力修行の一環だ。ソラに教えてもらった初歩的な練習方法だ。互いの魔力を流し合うこの行為には一種のリラックス効果もある。もちろん信頼しあった仲だとか、私の魔力の効能だとかも含めた効果でもあるけど。



「どうだ? 落ち着いたか?」


『……まだ』


 魔力と一緒にソラの気持ちも伝わってくる。どうやら少しは安心出来たようだ。私の中に姉さんが居ないと感じ取ったからかもしれんが。



「今日もありがとう。ソラのお陰で本当に助かった」


『……別に。主様の為だし』


「ふふ♪ そうか♪」


『……ねえ主様』


「なんだ?」


『……本当にあんなの飼うの? 我が居れば十分でしょ?』


「まあそう言わんでおくれ。ネル姉さんは私の姉なのだ」


『本当に?』


「うむ。間違いなくな。言ったであろう? 私は女神に生み出された神器だ。姉さんと同じくな」


『ユーシャが持ってるやつ?』


「そうだ。ふふ♪ 流石ソラだな。やはりわかっていたか」


『中身はわかんないけど。変な袋に入ってるし』


「薬瓶だ。何でも治療出来る万能の回復薬だ」


『……良いの?』


「うむ。ソラにだけ特別だ。今日はたくさん頑張ってもらったからな。その褒美だ」


『……うん。……えへへ』


 可愛い。



『主様。あのね。我ね』


「もちろんわかっているさ」


 ソラに覆いかぶさるように体勢を変え、もう片方の指も絡めてから顔の両脇で押さえつけるような体勢で唇を重ねた。



『むぅ~! 違うの~! 我がするの~!』


『たまには良いじゃないか』


『我のご褒美なんでしょ! 言う事聞いて!』


『そう焦らずとも後で交代してやるさ』


『これなんか嫌! せめて手離して!』


『本当の本当に嫌か?』


『……嫌』


『まだ大丈夫そうだな』


『主様ぁ!』

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