表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/145

01-25.魔導と魔術

「これよ!私の求めていたものは!!

 まさかこんな出会いがあるなんて!

 これってやっぱり運命ってやつよね!

 鴨がネギ背負ってやって来たってやつよね!」


 興奮気味に私の攻撃を躱し続けるパティ。

不可視のはずの魔力の腕が完全に見切られているらしい。


 パティにも恐らく魔力が見えているのだろう。

まさか魔力視は魔術師の必須技能だとでも言うのだろうか。


 それはそうと、何を騒いでおるのだあやつは。

鴨とネギあるの?もしかして東の島国とかも?

ちょっと行ってみたい。



「まあでも、これはただ凄いだけね。

 別に使いこなしているわけでもなさそうだわ。

 エリク貴方、戦闘どころか魔術も素人でしょ?

 同族達の中でも落ちこぼれだったとかそんなとこ?」


「生憎これは独学だ!」


「あ、ごめん。

 デリケートな話題だったかしら。

 悪気は無かったのよ。

 ホント、ホント」


「落ちこぼれ呼ばわりしておいてどの口で!!」


「いや、ホントマジなんだって。

 私はあなたに興味があるの!というか今湧いたわ!

 仲良くしましょうよ♪」


「それは望むところだ!

 目的を果たすまでの間に限るがな!」


「も~♪

 そんなツレナイこと言わないでよ♪

 ユーシャ共々末永く可愛がってあげるからさ♪」


「ふざけるな!ユーシャは渡さんぞ!!」


「貴方にその子が守れるかしら?」


「この!弱いもの虐めなど恥ずかしくないのか!」


「あはは♪開き直ってる♪

 だからまだ攻撃してないんじゃん♪

 とっくに初撃なんて終わってるのに♪」


 そうだ。パティは避けているだけだ。

私がどれだけ魔力の腕で殴りつけようと、余裕綽々で回避を続けている。早くこいつを片付けてユーシャの加勢に行かねばならんのに!


 ユーシャはメイド長に殴りかかっている。

結局私からは早々に離れてしまった。

そもそも誰かと一緒に戦うのが不慣れなあの子には、難しい要求だったのかもしれない。


 しかも、あちらも同じように一発も当てられていないようだ。

メイド長も回避に専念しているだけだ。涼しい顔で。



「ほ~ら♪余所見しない♪」


「!?」


 私はパティの突き出した杖の先端にぶつかり、大きく吹き飛ばされた。


 なんだ今のは!?爆発した!?

これが魔術なのか!?

あの長ったらしい呪文詠唱は必要無かったのか!?



「どう?

 これが私なりの魔導よ。

 エリク程じゃないけど、人間にしてはやる方でしょ?」


 魔導?

魔術とは違うのか?



「あら?どうしたの?戸惑っちゃって。

 もしかして魔力見えてないの?

 凄いのね、妖精族って。

 よくそれで魔力を操れるものね」


「すまんが人間の魔術をご教授頂けぬか?

 お主の言う通り私は素人なのだ」


 魔術だの魔導だの、生憎区別は付かんのだ。

わかる言葉で説明してほしいものだ。



「じゃあ防いでみて。私の魔術ーーーーー!!」


「な!?」


 パティが聞き取れない程の早口で何かを呟いた直後、巨大な火の玉が出現して襲いかかってきた。


 私は魔力の腕を上空に突き出して、火の玉を受け止めた。

火の玉はあっさりとその場に停止し、一瞬間を置いてから大爆発を引き起こした。



「くっ!!」


 必死に地面に魔力の腕を突き立てて爆風をやり過ごす。

ユーシャの事が気になるが、身動きすらままならない。



「はい、お~しまい♪」


 いつの間にか側にいたパティが私に杖を突き立てていた。

どうやらあの爆風の中を突っ切ってきたようだ。



「……まだだ」


「往生際悪いわね。

 決闘のルールも知らないの?」


「いいや。違う。

 まだ終わっていないとも。

 その杖では私の魔力壁は破れまい。

 どれだけ吹き飛ばされようとも、私の体には傷一つ付いておらんぞ」


 この決闘に場外負けは設定されておらんしな。



「これだから素人は。

 私がじょぉ~ずに加減してあげたに決まってるじゃない」


「ハッタリだな。

 私は魔力量にだけは自信があるのだ。

 それはお主もわかっているのだろう?

 私が守りに徹すればお主らにそれを破る術は無いはずだ」


「なら試してみる?

 あんまり傷付けたくないんだけど」


「ならここは相打ちという事にしないか?

 後はユーシャとメイド長に委ねよう」


「……ふひ♪

 何か企んでるわね♪

 良いわよ。あの子がメアリに勝てるってんなら、それを見せてもらおうじゃない♪」


「交渉成立だ。

 おい!ユーシャ!ちょっと話がある!こっちに来い!」


「!?」


 ユーシャは無事なようだ。

爆発には巻き込まれていないらしい。

もしかしたらメイド長が守ってくれたのだろうか。



「そんな堂々と作戦会議するの?

 まあ良いけどね。精々頑張ってみて♪」


 ユーシャが近づいてきたのと入れ替わりで、パティは私の下を離れていった。



「負けちゃったの?」


「相打ちだ。一応な。

 後はお前達次第だ。

 それより薬瓶わたしを出せ」


「それズルくない?」


「良いのだ。

 私の本体は元よりそちらなのだから」


 ユーシャの取り出した薬瓶に触れて意識を戻し、殻になった人形を少し離れたところへ移動させた。



『さて。第二回戦だ。

 次は私が力を貸そう』


「うん!今度こそ当ててみせる!」


 そこは勝ってみせると言って欲しいところだな。

まあ良い。やる気は十分そうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ