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04-32.思いつきとプレゼント

『とんでもない若作りですよ! 騙されないでください!』


 藪から棒になにさ……。


 ネル姉さんと話をしようと夕食の席を離れると、興奮した様子の姉さんの方から話しかけてきた。



『アニタとかいう妖精はとんでもない奴です! あれは自分で何度も転生してるんです! しかも記憶を持ったまま! 何が五百歳ですか! それは今生の話でしょう! 実質数千年は生きているじゃないですか!』


 それはそれは……。凄いな。素直に。


 だがダメだぞ。姉さん。人の秘密をペラペラ喋っちゃ。自分だって秘密だらけじゃないか。


『くっ! ギンカは良い子すぎです! だからお姉ちゃん心配なんです! どうせころっと騙されちゃうんですから!』


 私には何時だってお姉ちゃんがついてるんだ。心配なんて要らんさ。


『そういうとこですよぉ! そういうとこなんですぅ!』


 それより姉さん。


『それよりじゃありません! 何から聞きたいんですか!』


 ふふ♪ 先ずはユーシャ、いや。私の魔力について教えておくれ。


『あの妖精が言った通りです。ギンカの魔力はとんでもないインチキです。そもそも本来想定されていない使用方法だった筈なのです』


 私が自我を持ったのは創造主の意向であろう?


『……そうですね。あのお方は当然想定しておりました。ええ。全てはあのお方の悪ふざけ、もっと言えば思いつきにすぎません』


 ああ。やっぱりそんな感じなんだ。私の初見時の印象は間違いじゃなかったのだな。



『ええ。あのお方にも困ったものです。なんです? 事実じゃないですか! ちょっと今ギンカと話してるんですから後にしてくださいよ! え? 話すんですか? やめてください! タイミング最悪ですよ! どうせ謝るつもりも無いんでしょ! 何をへらへら笑ってるんですか! 主様がそんなんだから! あっ! ちょっと!?』『ギンカちゃ~ん♪』


 なんか聞き覚えのある声が。



『あはは~♪ 覚えててくれたんだ~♪』


 これはこれは。女神様。まさか直接お声がけ頂けるとは。



『気にしないで~♪ 私とギンカちゃんの仲だも~ん♪』


 ……そうですか。



『うふふ~♪ そんな怒らないで~♪』


 ……いえ、滅相もございません。



『お詫びに~♪ 良い物あげるから~♪』


 良い物?



「きゃ~~~~~~!!!」


 え!? 姉さん!? 空から姉さんが!? いやここ屋敷ん中!!


 天井をすり抜けて落ちてきた姉さんを慌てて抱きとめる。



「主様!! どういうつもりですかぁ!?」


『どうもこうも~♪ 言った通りよ~♪』


「こんな事して誰が主様の世話するんですか!?」


『大丈夫よ~♪ 困ったら~♪ 新しい子作るから~♪』


「ちょっ!? 嘘でしょ!? 本当に手放すんですか!?」


『え~♪ ネルちゃんが先に~出ていくって~♪』


「それはちゃんと考えが! 私が本当に主様を見捨てるわけ無いじゃないですか! だからその為の仕込みだって!」


『わかってるってば~♪』


「だったら!」


『気にしないで~♪ 何時か皆で帰ってきてね~♪』


「そんな……」


『ギンカちゃんをよろしくね~♪ 何時でも見てるよ~♪』


「……主様ぁ」


 姉さんが泣き出してしまった。自分で出ていこうとはしていたけど、女神の方から手放すパターンは考えていなかったようだ。



『う~ん? 困ったわ~』


 女神も女神で戸惑っている。女神はあくまで私とネル姉さんの希望を叶えようとしてくれていただけなのだろう。


『ギンカちゃん。ネルちゃんをお願いね。私の大切な大切な家族なの。出来るだけ泣かないようにしてあげてね』


「わかった。約束する。そしてありがたく頂戴しよう」


『うふふ~♪ やっぱりギンカちゃんは良い子ね~♪』


 私は女神、様の事を誤解していたのかもしれない。ネル姉さんが謝礼だと言うなら全てを許そう。


『それから~♪ 一つ~♪ お遣いしてくれるかな~♪』


「なんなりと。女神様」


『ありがと~♪ えっとね~♪ ネルちゃんの~姉妹を~集めて~連れてきて~ほしいな~♪』


「もしかして全部で七人いるという?」


『そうそう~♪ 残り五人ね~♪』


「わかった。請け負おう。それが果たされたならネル姉さんともう一度会ってくれるのだな?」


『そゆこと~♪ お願いね~♪』


「ところで場所は把握しているのか?」


『う~んとね~。一人だけね~。すぐ近くにいるよ~♪』


「それはユーシャとは別にという事だな?」


『そうだよ~♪ クーちゃんは~♪ ノーカンだよ~♪』


 クーちゃん? そうか。クリュスだからか。女神様はそちらで呼ぶのだな。



「具体的な場所は?」


『それは~自分で~探してみてね~♪』


 何か試練的な意味でもあるのだろうか。



「承知した」


『またね~♪』


 女神様の気配が遠ざかっていった。


 それから暫くの間、私は啜り泣く姉さんを抱きしめ続けていた。

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