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04-31.疑問がいっぱい

「……」


「……申し訳ございませんでした」


「油断しすぎよね。私も一回目は仕方ないと言ったわ。けれどその直後に同じ失敗を繰り返すのはダメよね。予想が出来なかったのもわかるけれど、そもそも一回目の後に釘を差しておかなかったからこうなったのよね?」


「はい。仰る通りです」


「アニタさんもよ。我が家に来た以上、今後はあまり勝手をされると困るの。エリクの眷属を勝手に増やすなんて絶対にやってはダメよ。エリクの眷属は私達にとって特別なの。先ずはそこだけでもご理解頂けるかしら?」


「はい。もう二度と致しません」


「ならいいわ。ご挨拶早々こんな話になってしまってごめんなさい。私達は貴方達を歓迎するわ。これからは仲良くやりましょう」


「はい♪ こちらからも是非♪」


「アニタ様共々どうぞ宜しくお願い申し上げます」


 良かった。どうにか無事に受け入れてもらえた。



「今日はもう遅いから話は食事をしながらにしましょう。お二人も人間の食事は平気かしら?」


「いえ、我々は」

「是非頂きます♪」


 シルクが言いかけたのを遮ってアニタが前に出た。なんだかんだとこの二人は良いコンビなのかもしれない。


 だが確か魔力を食うみたいな事を言っておったものな。本来食事は必要無いのかもしれんな。



「無理をしなくても良いのだぞ? そもそも消化出来ないとかであれば食べても意味があるまい」


「いえ、そういうわけでも無いのです。失礼致しました。是非ご一緒させてください」


「そうか。ならばそうしよう」


 もしかしてお腹いっぱいだった? さっき大量に魔力を流し込まれたばかりだったものな。念の為控えめにしてもらおうか。いや、それならいっそ。



「メアリ。急で悪いが今日はバイキング形式で頼めるか?」


「……承知致しました。エリク様」


 あれ? 今間があった?



「エリク。バイキングってなに?」


 あれ? パティ知らないの? まさかこっちの世界には無い言葉なの?



「立食形式でご用意致します」


「ああ。うむ。すまんメアリ。よくわかったな」


「我が主のお考えでございますから」


 メアリはそう言って速やかに退室していった。その後姿はどこか誇らしげだった。



「ふむ……」


 あれ? シルクが難しい顔してる? ライバル意識でも芽生えた?



「もしやエリク様は異界のご出身なのですか?」


「え?」


 いかい? 異界!?



「う、うむ。恐らくシルクの考えている通りだ。他に会ったことがあるのか?」


「はい。ざっと千年程前に」


 千年……え?



「あっ! 違うからね! 私はシルク程お婆ちゃんじゃないからね! まだピチピチの五百さい(くらい)だからね!」


 ちっさく「くらい」って付けたな。



「それはサバ読みすぎだろ。アニタってたしか」


「わ~! わ~! わ~!」


「うるっせ! 耳元で叫ぶな!」


 仲良いなぁ~。



「まあ気にするな。私も何百年かは生きておる筈だ。生憎具体的な年数までは知らんがな」


「なんだか曖昧ね? それにそれだけ生きてる割にはエリクって修行が足りてないよね?」


「地下遺跡に放置されていた期間が殆どだからな。私はこの世界に産まれてからの長い時を一人暗闇で過ごしたのだ」


「「「え……」」」


「加えて前世の世界に魔力は存在しなかった。だから基本の魔力操作を会得する以前に魔力を自覚するにも随分と時間を要してな。まともな修行期間はこの半年程度だ。だからアニタとシルクも色々と教えておくれ。私には師が必要だ」


『主様の師は我だけで十分だもん!』


「まあそう言うな。ソラも一緒に教わろう。ソラは確かに凄いが妖精族に蓄積された知識そのものが相手では流石に分も悪かろう。きっと二人は良い先生になってくれるぞ」


『必要なぁ~い~!』


 ふふ♪ 可愛いものだな♪ こうも嫉妬してくれると。



「エリク様の……その……正体は……」


「そう遠慮するな。なんでも気にせず聞いておくれ」


 私の言い方が悪かったのだがな。すまんな。気を遣わせてしまって。



「もちろん正体を明かすのは構わない。むしろ必要な事だろう。忠誠を捧げてもらっておいて秘密にしておくのはフェアじゃない」


 ついでだ。まだ明かしていなかった者達にも話してしまおう。



「だがそれでも敢えてぼかさせてもらおう。たまには家族の中でも優劣を付けねばな。これは私の根幹に関わる秘密だ。それを明かすと言う事はより強い結束だけでなく危険をも齎す事になる。先ずは関係性の構築が重要だ」


 それが足りんとは言わんがな。最近私はその辺の線引が曖昧になりつつあったからな。たまにはこうして意識的にメリハリをつけねばな。



「私はユーシャ、パティ、ディアナを特別に想っている。メアリを始め他にも正体を知っている者達はいる」


 レティには言ってしまったし他にも明言されずとも気付いている者達はいるだろう。そもそも回復云々の話しも特段避けていたわけでもないのだし。やはり今更過ぎるだろうか。



「家族も随分と増えた。最近加わった者達には最低限の情報だけを明かすとしよう。この場には私の具体的な正体について聞きたくないと口にした者もおるのでな。聞くことによって自分が変わってしまうのが怖いのだと言っていた。私はその気持を尊重しよう。そう伝えてくれた事を今でも嬉しく思っているのでな」


 ファムのような不安を抱く者は他にもいるかもしれない。眷属となったファムには最早要らぬ心配なのかもしれない。



「何より私はこの国においてその所有を禁じられた存在でもある。故にこれは他言無用だ。決して家族以外の誰かに話す事は許さん」


 女神の落とし物だとか神器だとかって言葉は禁句扱いだ。だが他に説明する方法もあるまい。その程度は話さねばかえって危険にもなりえる。知らぬ方が良い事もあれば、知っておいた方が良い事もあるものだ。



「私は女神の齎した神器だ。それも異世界で死した者の魂を宿した特別製だ。今明かすのはここまでだ。これ以上はまたいずれ話すとしよう」


 むしろ今話したこれの方が秘密としては大きかったか。実利的には無限に使える万能の回復薬という秘密の方が重要ではあるだろうけども。



「ああ、それと。悪いがニアには今の話も言わんでおくれ。ニアとは一つ約束をしているからな」


 ニアが真に私を受け入れたならその時は話してやろう。そう約束したものな。



「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」


 なんかあまり良い雰囲気ではないな。ちょっと暗いぞ皆?



「誰か質問はあるか?」


「はい!」


「流石だアニタ。この空気を吹き飛ばす愉快な質問を頼む」


「ふっふっふ♪ お姉さんにまっかせっなさ~い♪」


「ふふ♪ それで?」


「エリクの夢を教えてほしいの! あなたはこの世界で何を成したい? どんな未来を思い描いてる? それを聞かせてくれるかしら♪」


「夢かぁ」


「もしかしてハーレム王?」


「ふふ。それはもう叶っているな」


 別に願っていたわけでもないけれど。



「ならそれ以外は? 英雄? スローライフ? それとも魔王でも目指しちゃう?」


「その中で選ぶならばスローライフだな。だが冒険も捨てがたい。出来る事なら世界中を見て回りたいものだ」


「出来るわ♪ エリクならそんなの思うままよ♪」


「そうかもな。だが人の寿命はそう長くないのだ。先ずは何かここにいる皆で出来る事がしたいものだな」


 竜王国や神器探しの件とは別に、世界を知る為だけに旅をするのは皆を看取ってからでも遅くはあるまい。私とユーシャとシュテルとソラとアニタとシルク、それからアウルムあたりはそうそう寿命なんぞ訪れんだろうしな。



「寿命なんて心配要らないわ! エリクの魔力を流せばいくらでも生きられるわよ♪」


「そんなわけなかろう。私の魔力は治癒が出来るだけだ」


「何言ってるの? 神の生み出した品がその程度なわけないでしょ?」


「……え?」


「不老不死くらい当たり前に与えてくれるわよ♪」


「いやいや。流石にそれは……」


「あれ? まさか気付いてないの? なら気をつけないとダメよ? 魔力をずっと流してたら成長も止まっちゃうわ。まだ成長が終わってない子達もいるんだし。あ、でもエリクはそっちの方がお好みだったかしら? ふふ♪ なら私も変身しちゃおっかな♪ いっそ心機一転子供からやり直すのも悪くないわよね♪ そうと決まれば早速始めましょう♪ シルクも手伝って! 万が一にも失敗出来ないわ♪」


「待て待て待て! 勝手に話を進めるな!」


「エリクも手伝って! エリクの魔力があればきっと上手くいくわ♪」


「話を聞かんか!」


「アニタ様。ステイです」


「わん」


 え? あのアニタが本当に大人しくなった?



「シルクひどぉ~い! 今のはダメよ! あんまりよ!」


 恥じらいで顔を真赤にしたアニタがポコポコと拳を打ち付けながらシルクに抗議を始めた。どうやらシルクは少しインチキをしたようだ。パスを使って強制的に従わせたらしい。ところで妖精も犬を飼ったりするの? 単にシルクが特別人間の生活に詳しいだけ?


 じゃなくて。



「アニタ。さっきのはどういう事なのだ?」


「シルクがぁ!」


「いや、そっちじゃなくて。私の魔力の話だ」


「エリクの魔力があれば私の転生も」


「待て待て。そこも気になるがそれよりもっと前だ。私の魔力は人に不老不死を齎すのか?」


「ええ。たぶんね」


「出来れば詳しく調べてみておくれ」


「もちろん♪ こんな面白いもの見逃す筈無いじゃない♪」


「頼んだ。念の為詳しい事がわかるまでアカネに流す魔力は止めるとしよう。アカネも気をつけておくれ。私の魔力無しで外を出歩くでないぞ。ギルドの件もあるのだからな」


「は~い」


 ユーシャはどうするべきか。一応この子も成長はしているのだよなぁ。女神がその手で直接生み出した存在とはいえ、人と同じ肉体を持っているのは間違いない。少なくとも私にはその違いを見いだせなかった。念の為極力流さんようにしておくべきだろうか。あとで姉さんにも聞いてみよう。



「皆様。お食事の準備が出来ました。ご移動くださいませ」


 良いタイミングだ。折を見て少しだけ席を外させてもらうとしよう。

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