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04-14.知恵と勇気

『なるほど。変身術を』


 できそうか? アカネの容姿を十歳くらい嵩増ししたい。別に幻術の類でも構わないのだが。


『幻術の方がかえって面倒ですよ。影響範囲が増えるので』


 そういうものなのか。


『アカネに変身術を授けるのは構いません。ですがこれは前借りです。ギンカがいずれ私の所有者となってくれる事が大前提です。約束を違える事は決して許しません』


 もとより諦めるつもりなんぞ微塵も無い。やってくれ。


『良い覚悟です』


 変化は直ぐ様現れた。私の魂に鎖のようなものが巻き付いた。


 まあ、あくまでイメージの話しで実際に物理的な鎖が巻き付いているわけではないけども。


『もし約束を違えればその戒めがあなたの魂を締め砕くでしょう。期限は設けていませんがどうかお気をつけを』


 甘々だな。ありがとう。お姉ちゃん。


『期限の無い契約なんて実質無いようなものと思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。ギンカはこの契約が果たされるまで滅びる事すら許されませんし、逆に万が一私が見限ればその瞬間にギンカは砕け散ります。或いは私の気が変わればその時点で契約を書き換え、直ぐ様ギンカを掌握してしまう事すら出来るのです。不完全な、すなわち綻びのある正当性の無い契約というのは、優位者の意思次第で好きに改ざん出来てしまうものなのです。要するにギンカは一方的で理不尽で不条理な契約を結ばされたのです。精々私の機嫌を損ねないよう気を付けてください』


 なんでまたそんな契約を? 別に構わないけど。


『そんな考えだからですよ。これからギルドと契約を交わすのでしょう? 油断しないでください。お姉ちゃんのように好意的な相手ではないのですから』


 うむ。心しておこう。


『約束ですよ』


 えらく念を押すな?


『本当に気を付けてください。ギンカはパティさんの所有物なのです。もし仮にパティさんがその権利を他者に譲ってしまえばギンカの所有者は変わってしまうのですから』


 そんな事ありえんだろ。


『パティさんにその気があるかどうかは関係ありません。例えばギンカが何らかの危機に陥ったとします。パティさんがそれを救うために自らの全てを投げ売ってでも誰かに助けを求めるかもしれません。そうなればパティさんは何より守りたかったギンカをも失うのです』


 なるほど。今の契約はもしもの時の備えか。だが姉さんは私を所有できないのだろう?


『余計な事は考えないでください。自覚すれば言い訳も利かなくなりますから』


 姉さんは本当に甘々だな。


『私の全力はまだまだこんなものではありません。早く手にして使いこなしてください。期待していますよ』


 どんな力があるんだ?


『内緒です』


 ヒントだけでも。


『……私は知恵担当です』


 担当? ならユーシャは?


『堅固です』


 ……そのまんまだな。


『ギンカの考えている意味だけではありませんよ』


 なるほど。それぞれに何らかのテーマがあるのだな。同様の存在は他にもいるのか?


『全部で七体存在するようですね。これ以上は答えません。私の"知恵"を使いたければ先ずは私を手に入れてください』


 なるほど。だから前借りか。


『そういうことです。ここまではおまけのサービスです。これ以上は前借りも許しません』


 基準がわからないな。普通に質問するくらいなら問題無いのだろう?


『その判断は私が下します』


 案外と緩いのだな。


『そういうわけでもありませんよ。とにかくこの話はここまでとしましょう。アカネ達が戸惑っています。ソラと一緒に説明してあげてください』


 そうだったな。皆の所に戻るとしようか。ありがとう。姉さん。


『はい♪ 頑張ってください♪ 姉さんは何時でも見守っていますよ♪ ギンカ♪』


 やっぱり姉さんは甘々だ。




----------------------




「なんこれ!? なんこれ!?」


 二十代半ば程に変身したアカネがあたふたしている。


 流石姉さん。注文通り完璧だ。しかも大人アカネは目が覚めるような美人さんだ。これはそのまま成長した姿なのだろうか? 将来が楽しみだな。ふふ♪


『やっぱり気付いていないんですね』


 姉さん? 何の話だ?


『なんでもありません』


 言えない系か。なら仕方ない。



「落ち着けアカネ。ソラの力だ」


『使い方教えるね~』


 先に口裏を合わせておいたソラがアカネに変身方法を伝授してくれた。人化と年齢操作という違いはあったがソラは問題なく説明してくれた。更にはアカネまでもが驚く程の理解力であっという間に使いこなしてみせた。



「あはは♪ おもろいやん♪」


 幾らなんでも使いこなし過ぎでは? アカネは早くも二十代半ばだけでなく、元より幼くなったり更に歳をとってみたりと自由自在に変身出来るようになっていた。


『中々の才能ですね。これはそのまま魔導の素質と考えて良いですよ』


 つまり魔力壁とかも教えればすぐに使いこなすのか。それもまた楽しみだな。



「妖精王様♪ うちのおとんに会うてくれへん?」


 ひとしきり変身を楽しんだアカネは唐突にそんな事を言い出した。



「それは勿論構わんが。今か?」


「うん♪ 根回しが必要やもん♪」


 ああ。なるほど。ギルドから確認がいった時の為だな。それとカナレス商会の名も利用するつもりなのだろう。確かに必要であろうな。


 でも大丈夫? お父さん腰抜かしちゃわない? 一日も経たずに娘が十も年取っちゃったよ? というか変身術の事は伝えて良いの?


『構いませんよ。あくまでソラの力とするなら何の問題もありません』


 そうか。なら安心だな。ソラが姉さんの事を知っていてくれて良かった。詳しく説明しなくても口裏を合わせてくれるから都合が良いな。ただそのせいで羨ましがったファムに詰め寄られて困ってるけど。ふふ。そろそろ助けてやるか。

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