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04-10.読み違い

「ほんでクラン結成して、竜を従え、冒険者として魔物を乱獲したと。ざっくり纏めるとこんな感じやな」


「うむ。そうだ。そんな流れだ」


 ここまで長々説明してしまったが、纏めてしまえば要点はそんなところか。随分スッキリしたな。うむ。



「もしかして乱獲については姉様の想定を上回っていたんじゃない?」


「実際そこは強調しておったな。とするとそれがポカとやらか?」


「どうかしら。もし何時ものポカなら既に目的は果たされている筈よ」


「例えば厄介な塩漬け案件を抱えていた可能性は無いか?」


 なんかこう不死系の魔物とかさ。一筋縄でいかないやつ。



「私達がそうと気付かずに討ち取ったかもしれないわけね。妖精王をぶつけて解決しようって姉様がギルドに持ち込んだのかもしれないわね。或いはギルドから相談されたか」


 ありそう。短期的な目的としてはやはり既に果たされているのか?



「そんな依頼ありましたか? なんだかんだとこの国の冒険者達も優秀ですよ?」


「どうだったかなぁ。倒したって聞いた魔物達の中にそんな子いたかなぁ」


「揃いも揃うて何すっとぼけた事言うてるんや。いるやん大物が」


「「「「え?」」」」


「巨大な飛竜従えてるやん。絶対それやん」


「「「「あ~」」」」


 いや、素で抜けてたわ。そう言えばソラってやたら王都に近い位置に陣取っておったのだよな。実は知らん内に緊急事態として大騒ぎになってたとか? ソラの実力ならベルトランだって危ないだろうし。あれ? でも姉さんのブーストも込みであれなんだっけ? いや、例え姉さんのテコ入れが無くたって私がソラに勝てるとも思えない。だから間違いなくソラは危険視されていた筈だ。それこそ討伐隊でも組もうとしていたのかもしれない。



「ただそうなるとジェシー王女と相談していた者がギルドだけとは限らんな。城の方も大騒ぎだったのかもしれんし」


「そうね。大規模な討伐隊は莫大な予算もかかるもの。姉様の策をありがたがる人達は少なくないでしょうね」


「陛下もですね。爺が真っ先に私達を出迎えたのも余計な情報を得る前に帰ってほしかったからじゃないでしょうか」


 それで許可証くれたの? もしかして最初から竜を従えさせるつもりだったの? 許可証を発行するのが早かったのはそもそも事前に準備してあったからってこと?



 たぶん陛下とジェシー王女は別の思惑で動いている筈だ。あの二人はなんとなくだけど手を組まない気がする。思い込みは危険だけど、たぶんこの直感は外れていない筈だ。


 とは言え全くの無関係という事も無いのだろう。互いに利用し合うくらいはする筈だ。結果的に手を組んだような動きにもなり得る筈だ。



「目的は巨大飛竜の討伐。それによって城とギルドに貸しを作りつつ妖精王に恩も売る。せやけど想定外が起きた。妖精王が飛竜一体で満足せーへんかったんや。そもそもギルドの動きが思惑を外れとったのかもな。挑発しすぎた事もそうやし、飛竜だけで済まさず次にまで繋げてもうた事もそうや。むしろあん方はギルドに釘を差しとったんと思う。妖精王を甘う見るなと。あくまで飛竜にぶつけるだけやと。せやけどギルドは約束を違えた。欲をかいたんはギルドや。そんで今は火消しの最中なのかもしらんな」


 一見筋は通っているけど……。



「なら何故素直にそう言ってこない? 奴は帳尻合わせも得意なのだろう? 我々との仲が拗れるくらいなら全てを明かしてしまう方が得策だろう?」


「「「「……」」」」


 なにその顔。



「その、ね」


「ジェシーちゃんですから」


「絶対認めないよ。あの人」


「諦めの悪さもあの人の強みやし。多少はね?」


 つまり単に意地を張っているだけだと? これまでもなんだかんだ上手くいっていたから今回も押し切れると?


 あれだぞ? 素直に謝れない人はどれだけ優秀でも嫌われるのだぞ? ああ。だから嫌われてるのか。こんなに評価されてるのに。なんかもう納得しちゃうじゃんそれ。




「やはりただのポンコツなのでは?」


「まあそういう側面が無きにしもあらずというか」


「ジェシーちゃんですから」


「だからか、なんだか憎めないんだよね。お近づきになろうとは思えないけど」


「けどなんぼ失敗しても最後まで逃げたりはせえへん。そういう方なんよ」


 そうか。ある意味責任感があるとも言えるわけだな。「ギルドが悪い。ギルドが勝手にやったこと。私は止めた」なんて事は口が裂けても言えないわけか。


 要約するとプライドが高いのだな。厄介なものだな。素直に負けを認めるなら私達だって助けてやれるものを。なんならそう話してくれるだけでも矛を収めてやれるのに。



「パティ。奴を連れてきておくれ。眷属化させて全て吐かせよう」


 なんかもうそれで全部解決する気がする。今の話しが本当ならムキになってギルドと関わるだけ損だし。



「素直に付いてきてくれるかしら?」


「問題ないだろう。別に眷属化のことまで知られているわけでもなし」


「察してはいると思うわよ? この短期間で幾人もの少女を拐かして飛竜まで従えちゃったんだから」


「もしかして義姉上は私を嫌っているのか?」


「かもしれないわね。私を取り戻すのが最終目標なのかも」


「ならば尚の事だな。奴の心を捻じ曲げてしまおう」


「エリクも嫌いなんでしょ」


「うむ。私は義姉上が嫌いだ。だから躊躇もせん。そう決めた」


 あれはもう魔物の一種とでも思おう。これ以上引っ掻き回されてなるものか。



「エリクって悩むと長いくせに思い切りもいいわよね」


「それはそれと棚を作るのだろう?」


「元々って話よ。まあいいわ。レティも付き合って。万が一の時はその場で眷属にしちゃいましょう」


「本気ですか? 本気でジェシーちゃんまで仲間に引き入れるんですか?」


「いいや。奴は側に置かん。強い好意を植え付けた上で遠ざける。そして時たま飴を与えるのだ。私の傀儡として調教してやる。眷属化だけではそこまでの強制力を持たんからな」


 眷属と花嫁は同義と言ったがそれはあくまで人間の話だ。魔物は別枠だ。流石にそれを口にはしないけど。



「クーちゃんなんでそんな怒ってるの?」


「全て奴の空回りが原因ではないか。やはり素直に謝れん奴はダメだ。だから教育してやるのだ。私にはその力がある」


「まだ全部憶測やで? 真実はちゃうかもしれんよ?」


「それも奴に喋らせればいい。最悪全部勘違いでも私達には何の損もない。ただ優秀な手駒が一つ手に入るだけだ」


 優秀かどうかは諸説あるけど、普通に視覚と聴覚をジャックするだけでも役立つ筈だ。別に何の役にも立たなかろうと奴に外せない監視カメラを設置できるだけでも安心出来る。



「足元掬われへんようにな。油断したらあかんで」


「うむ。アカネも気を配っておくれ」


「任しとき♪」


 アカネも切り替えが早いなぁ。



「そうだパティ。ピーちゃんと蜘蛛アラネアも連れて行ってくれ。万が一奴が居留守を使ったら忍び込ませよう」


「承知したわ。けど先に一つだけ約束して」


「なんだ?」


「姉様を許してあげて。どんな真実であっても」


「それは……家族として迎え入れることはせんぞ? それでもいいのか?」


「ええ。そこまでは求めない。けど好きな人から嫌われるなんて辛いじゃない。だから眷属にするなら好きになってあげて。その上で姉様をどう扱うかは任せるから」


「……わかった。約束しよう」


「ありがとう。エリク。それじゃあ行ってくるわね」


「ああ。頼んだぞ」

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