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りょうりたちの楽園

 むかしむかし、頭が料理でできた人間の町があった。この町には一人だけ料理人がいて、住人のために毎日料理を作っていた。


 できあがった料理を、住人は胴体にくっつけて頭の代わりにする。住人それぞれ好みが異なり、パンやハンバーガー、ケーキなど様々な頭の住人が住んでいた。


 毎日、住人は朝、昼、晩の三回、料理人の元へ料理をもらいに行く。この町の住人にとって料理は大事な体の部品で、バイキンや雨で傷まないようにこまめに交換する必要がある。


 バイキンというのは、目に見えないけれどどこにでもいて、料理を腐らせてダメにしてしまう厄介な存在だ。バイキンだけでなく、美味しい料理を狙いに、食いしん坊な怪物も時々、町に襲いかかってくる。もちろん住人たちもやられるばかりではなく、ずっと昔から、バイキンや怪物と戦ってきた。


 ところがある時、とても手強い巨大な怪物が現れた。


 今までにない大ピンチに、パンもケーキも、町のすべての住人が集まり、力を合わせてその怪物に立ち向かった。


 しかし怪物は、これまでに戦ったどの怪物よりも強く大きく凶暴であった。ただ足音を鳴らすだけで建物を壊し、住人もバラバラに蹴散らした。


 それだけではない。奴は恐ろしいバイキンも持っており、口から炎を吐く。炎の熱はバイキンを活性化させ、怪物はバイキンと炎で平和な町をめちゃくちゃに踏み荒らした。


 このままでは、住人たちは炎で焼かれ、バイキンに侵され、怪物に潰されてしまう。町の下には、冷たく暗い洞窟があったため、住人たちは急いで避難した。


 ここなら、大きな怪物は襲ってこないし、寒いところが苦手なバイキンにかかる心配もない。


 しかし、冷たく暗い場所で長い時間を過ごすのは、住人たちにとって辛いことだった。きれいな水にきれいな花、明るい太陽に優しい月の見える生活を、住人たちは長く大事にしてきたからだ。


 そして本当は彼らも、怪物とバイキンも含んだこの世界のすべての存在と平和な共存を望んでいた。



 今も冷たい洞窟で暮らす彼らは、はるか昔に祖先が描いた絵本を片手に、仕事に励む。


 その絵本は、子供でも手に取りやすい大きさで、優しい雰囲気の絵本だった。大昔には世界中の多くの子供が読んだらしい。頭がパンの人間やケーキの人間などいろいろな頭の人間が集まって、みんなが仲良く歌ったり踊ったりする話である。最後は、花と水と太陽と月と、地上にあるものすべてが笑顔で一緒に手を繋ぐ、という美しい一枚絵で締めくくられる。


 このように、祖先の思い描いた平和な理想郷__すべての存在がすべて調和する平和な楽園をいつか地上に実現させようと、彼らは今日も計画の準備を進める。



おわり

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