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炎の令嬢と氷の御曹司  作者: 青井亜仁
炎の王国
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騎士団集合会議2

 宮殿内の会議室に充てられた部屋には大きな長方形のテーブルが置かれ、王宮騎士団パラーティルムの団長ノクス・ルナネブーラ侯爵、近衛騎士団レクスプラエトリアニの団長アルドール・プロキシムス・レクステルム第二王子、私設騎士団(プライベエクストゥルマ)の代表者たちが呼ばれ、割り当てられた席に座している。

 私に割り当てられた席の右手に設置された上座の中央に、宰相ノヴソムニ・アルッギラ公爵が目を閉じて座り、その左に司会を務める軍務大臣カリュプシウス・ゲマネウム侯爵が緊張した面持ちで何かメモをしている。反対の右側には主席参謀リュスタルス・ウェルテス伯爵が泰然と座していた。


 家格、騎士団エクストゥルマの規模・強弱により意見が出しにくくなるのを防ぐ為、各騎士団の席は適宜に分散して配置されているようだ。

 私の正面にはグラテアンに次ぐ規模の私設騎士団である、プーリウス騎士団の団長フォール・ルウィア子爵。その左隣には、中規模のスクトゥーム騎士団の団長ウェリタス・エクトス卿。右隣には、小規模のアニラス騎士団の団長グランデ・アニラス伯爵が座っている。


 団長の席の背後に副団長が立ち、副官を伴っている者は副団長の斜め後ろに控えさせている。イーも、私の席の後ろに立つ小兄さまの斜め後ろに立つ。

 パークス団長は私の右隣に座り、ルナネブーラ侯爵へ挨拶をしていた。私へ挨拶をくださるアニラス団長の右側には、アルドール殿下がおいでなのだけど、アニラス団長はまったく動じることなくニコニコしている。

 昔から私たち兄妹を可愛がってくださっていて、大兄さまもとても尊敬する方である。そろそろ老齢の域に入っているはずなのに、がっちりした筋肉は健在だし見た目も壮年のようで、ついうっかり昔の癖で『おじさま』と呼びそうになる。

 この方もパークス団長と同じくマイペースな方だと感心する。よくよく考えて、マイペースでない私設騎士団の団長って、居た?

 …うん、騎士団の団長で『ふつう』を求めるのが間違っているのかもしれない。なんといっても第二王子という立場のアルドール殿下ですら、物静かな王子然とした様子ながらも、けっこうな変わり者だったりするし。


 いくら兄の王太子殿下に三人目の王子が誕生されたからといって、これ幸いと王子ご誕生から三日目に継承権を放棄しなくても良かったんじゃないかな。いくら我慢していたとはいえ、慌てすぎでしょう。

 さらに近衛騎士団に副団長として入団する前には、腕ならしだと言って天馬(カエルクス)捕獲の集団の護衛に付いて天馬確保の遠征に行ってしまったしねぇ。

 そこで捕獲師たちに師事して、ご自分と陛下へ献上する天馬二頭を捕獲してきたという、とんでもないことを成し遂げてきた。


 初回に前人未到の業績をあげてしまい、甥たちの天馬も捕獲したいという呟きを聞いた当時の団長が卒倒しかけた。という話を大兄さまから聞いた小兄さまが『俺も付いて行きたい』と言っていたのには笑ったなぁ。

 ただでさえ青白い大兄さまの顔色が無くなったのは記憶に新しい。

 天馬は主人を選ぶんだもの、王子方を選ぶ天馬が見つかるまで捕獲しに行くぞぉって宣言されたら、そりゃ慌てるでしょうよ。


 そういえば、ルナネブーラ侯爵は祖父というにはちょと若い年齢ながら筋肉の鎧を纏った大きな体躯に、いかつい頬に不機嫌そうな口つき。太い眉毛の下にはくりくりとした大きな黒目があり、ぱっちりとしてお可愛らしい目つきという、なんともアンバランスなパーツが集まっている、とても愛嬌のあるお顔。

 そのうえなぜあの顎とふっとい首からそんな声が?という、男性にしては高い声がお嫌いで極端に無口でいらっしゃるから、侯爵の声を聴いたことのある者は騎士団でも少ない…らしい。背後に控える副団長か、その横にひっそりと控える副官が侯爵の口替わりとなっている。

 ちなみに侯爵の口替わりのお二人は細面で細身なのに、それはもう低音の美声だった。侯爵が悔しそうにしていたのを知っている者は、アルドール殿下と私くらいだと殿下が仰ってたっけ。


 アルドール殿下もなにか考えてる風情でお座りだけど、あれ絶対この後抜け出して大きな戦闘前に天馬捕獲に行こうかな、なんて考えてる。

 ダメでしょう、天馬捕獲なんかでウロウロしてたら帝国のいい標的じゃないの。破天荒な行動のせいでとんでもない人物と思われていても、実力の伴った近衛騎士団の団長なのだ。ただそこに立っているだけでも騎士たちの士気が上がる、得難い将なのだから。

 近衛騎士団の団員とあまり仲が良いとは言えない王宮騎士団の団員でさえ、殿下の実力や気さくな態度やカリスマ性には尊敬の眼差しを送り、好意的な対応だしね。

 小兄さま、アルドール殿下に次の天馬捕獲はいつ行くんですか?とか発言しないだろうか。いくら小兄さまでもしないよね。しないでほしい、切実に。確認なんかしたら、そういえば聞きたいんだったわ!と殿下に直訴待ったなしになる。…詰んだわ。

 会議は苦手なんだけど、早くはじまらないかなぁ。と、こんなに期待したことってない。


 そんな私の願いが届いたのか、軍務大臣ゲマネウム伯爵から会議を始めるとの声がかかった。

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