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炎の令嬢と氷の御曹司  作者: 青井亜仁
炎の王国
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騎士団集合会議

 王宮で行われる騎士団集合会議のため、各々の天馬カエルクスに騎乗し空へと飛翔する。

 我が蒼炎カエルライグニーはマイペースに、イーの紅天ルフスエルムは大好きな蒼炎の傍で少し遅れて付いてくる。

 小兄さまの疾風ベンダフェルは主と同じくマイペースに好きなように駆けている。

 名前の通り速いので、蒼炎も紅天も追いかける気は全くなさそう。頑張っても追いつけないものね。


 天馬の持つ浮遊能力で空を駆けるのは、地上を駆ける馬に乗る騎士や見習いたちの憧れでもある。

 羽はないのに空を滑るように走ったり、突然地上を駆けるように上下したりするのでバランスを取るのも難しいし、落馬したら地上で落馬するよりもひどい怪我になることもある。

 天馬へ安全帯は繋げているが戦闘の邪魔になるため、腕や足か腰にベルトを巻いて繋ぐしかない。

 落馬しても地面へ打ち付けられはしないが首に帯がひっかかれば首吊り状態だし、そうでなくても一部に全ての負荷がかかり、天馬に戻れずそのまま駆けられたら神の国へ行けるだろう。落馬状態から再び騎乗するのも技術が要る。


 なにより天馬たちは気難しいうえに騎士が騎乗馬を選ぶのではなく『天馬が』騎士を選ぶので、技術とやる気があれば天馬騎士カエルクスエクエになれる訳ではないのだ。

 天馬は人語は話さないが賢く、自らが選んだ騎士とある程度の意思疎通はできるし、共感力を持つ者とは詳細な対話が可能である。


 主従関係がしっかりしていれば単独で行動も出来るが故に、過去に頭の悪い貴族たちが犬か何かと勘違いをして暴力で従わせようとした事件があった。

 犬扱いされた天馬がそのアホな貴族を蹴り飛ばした所そいつが死にそうになり、更にアホなその親が天馬を虐殺しようとした大事件だ。

 その結果、自らも優れた天馬を主騎としていた当時の国王指導により、天馬保護の法や罰則が定められたという歴史もある。


 障害物のない空を駆けるので、そう時間をかけずに王宮へと到着する。

 天馬待機場へ蒼炎たちを預けて会議場へと向かうと集合期限間近ということもあり、道すがら顔見知りと出会い共に向かうことになった。


「お久しぶりです、パークス団長」


「ああ、ひさしぶりだね、グラテアン団長。相変わらず副団長は元気そうだ」


 ニコニコ優しげに笑う痩身のパークス団長は、パークス侯爵家当主の弟君で普段は見た目通りに優しいおじ様なのに、いざ剣を握ると鬼神に変貌するちょっと差の激しい方だ。


 何癖あるかわからない騎士団長たちのなかで、剣を握らなければあまり変貌しないこの方は私に対して軽蔑も侮りもせず、普通に対応してくださる数少ない方だったりする。

 父くらいのお歳で独身でいらっしゃるのに、父より父らしくて尊敬できるおじ様だ。


 全方位に傍若無人な小兄さまに対しても、やんちゃ坊主ってこんなもんだよねっていう態度で、公的な場以外での馴れ馴れしい態度にも穏やかに笑ってお怒りにならない。

 小兄さまがパークス団長を尊敬していて、全力で懐いているから大目に見てくださっているという気もするけど。


 そんな穏やかな方だが敵と見なした者には穏やかな態度のまま、丁寧な口調と美しい言葉使いの影と行間に、それはもう居たたまれないほどの嫌味を混ぜ込んでくる。

 一度、そんな相手に満面の笑みでチクチク嫌味を繰り出しつつも態度はとても丁寧で礼儀正しい、という現場に大兄さまと居合わせて絶対にこの方を怒らせるは止めようと決心した。


 大兄さま「職場が伏魔殿の様なものなのに! 職場の外、それもよりにもよって妹の職場にまで悪魔が…また息のできる空間が無くなっていく」って、小さな声でぶつぶつ呟いてたな。

 うん、よく考えたら尊敬はできるがけっこうなクセのある方だわ。小兄さまの懐き方を見るに、人柄は悪い方ではないと思う。人柄がいいけど、性格はいいとは言えないってやつかな。


 でも、楽しそうに会話をしてるパークス団長と小兄さまを見ていると、こちらも楽しくなってきて知らず知らず笑顔になれていた。

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