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炎の令嬢と氷の御曹司  作者: 青井亜仁
炎の王国
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愛し子たちが見た兄妹2




 ちょっとあんまりな事を言っている青年は、今までの無表情はなんだったんだって言うくらいにニコニコ笑いだした。え、さっきの紅い妹との感動の涙は自覚なしってこと? それとも演技だったとか?

 兄のあまりな返答に、思わず目を見開いてまじまじと兄を見つめる妹。もう涙を流していることを気にしたり誤魔化したりしてる場合じゃねぇ!って聞こえた気がする。


「カルゥお兄様は馬鹿なの? いえ、馬鹿ですわ!」


「うん。カーリィにも言われた。そう馬鹿バカ言われると、事実でも傷つくなぁ」


 いや、ほんとに無表情どこ行った?

 めっちゃニコニコしてるぞ、このおにー様。


「賢いと思っていた方が馬鹿だったと知らされた、わたくしたちの心もご理解いただきたいですわね」


 仕方ないなぁって苦笑した妹が、真顔になって兄を見つめる。妹はもう流れる涙を隠そうとはせず、兄はそれすらも嬉しそうだ。


「なぜ、笑っておられますの?」


「やっと、家族や恋人が『好き』なんだって、本当に理解できたから。カーリィやニィ、ルーやアーフも愛しいってこういうことだったんだね。やっとエゥヴェが最期に満面の笑みだったっていう理由が分かったよ」


「エゥヴェお兄様、笑っていらしたのですか」


「うん。すごく幸せそうに笑ってたって、カーリィが言っていたよ。あの時私はエゥヴェの背後に居たから、顔は見えなかったんだ。ニィは泣きながら蹲っていて知らないだろうけれど、カーリィはちゃんと見ていた。カーリィに聞いてごらん、きっと満足そうに笑っていたって教えてくれるよ」


「 ……… 」


「エゥヴェはニィに自分の最期が満足だったって、知って欲しいと思うよ。そして私も最期は満足そうに笑っていたって、カーリィに伝えて欲しいと思う」


 そう言って、兄は妹をそっと抱き締めて「お願い、ニィ」と囁いた。妹は兄を抱き締め返して静かに泣いていた。


「お兄様、わたくしは意気地無しですから、すぐにお姉様にはお伝え出来ないと思います。ですが、いつか必ずお伝えしますわ」


「うん、ありがとう。ニィ、大好きだよ」


 妹は兄から離れて晴れやかに笑い、拳を握りしめ全力で兄の顔面を殴った。

 はあっ? 物凄い音がしたぞ。足力入れて地面を踏みしめてないと吹っ飛ぶくらいの力だよな。


「わたくしもお兄様が大好きですわ。でも簡単に消えてくお兄様は、嫌い」


「いったぁ…全力で殴ったね、ニィ。こんな殴り方誰に習ったの」


 殴られた頬に手をあてて擦りながらも、嬉しそうに笑っている。殴られてんのに嬉しいもんなの? 変わった趣味持ってんなぁ。


「エゥヴェお兄様ですわ。カルゥお兄様は、消えた先で同じようにエゥヴェお兄様に殴られればいいんです。では、わたくしはこれでお暇致しますわね。ごきげんよう、カルゥお兄様」


 妹は華麗にお辞儀をして、俺と反対側で同じように兄と妹たちとの別れを見つめていた少年の腕を掴み、颯爽と消えていった。

 すげぇ格好いい子だわ。ああいう気位高い貴族女子の言葉使いを聞くだけで頭痛がしていたけど、ああいう子なら会話できそう。うちの国にはああいう貴族令嬢って居ないんだろうなぁ。

 残念、残念。なんて消えた方を見ていたら至近距離に誰かの気配があってそちらを見て、心底驚いた。目の前ににこやかに笑う青い青年の顔がある。一歩程しか距離がないぞ。悲鳴が出なかったのが奇跡みたいだ。


「私はね、殴られて喜ぶ趣味など持っていないよ」


 え、どゆこと?


「お前、私がニィに殴られて笑っていたからって失礼なこと考えただろう?」


 あ、あれか。いやだって握り拳で顔が赤くなる程の力で殴られて笑ってる姿は不気味じゃないか。


「ニィがそれだけ私が消えるのを怒っているのが嬉しかったんだよ、失礼な奴だ。お祖父様の愛し子でなければ、顔変形するくらい殴ってやるのに」


 おおう、物騒な発言。…んん? お祖父様の愛し子って?


「え、俺が?」


 青い青年は口だけで笑いの形を作り、俺に顔を寄せてくる。我が巫覡に良く似た美形に迫られて、驚きのあまり少しも動けない。


「そうだよ。軟弱な巫覡ディンガーもお前も、お祖父様の愛し子じゃないか。それもかなりの寵愛を与えられている。私たち兄妹と同じ神の気配、神の息吹がある。だからここへ来られたんだ」


「同じ?」


「そう。炎と氷、そして戦の神の気配。お前も、先ほどここに居た少年も同じ気配を纏っていただろう?」


 確かに彼は我が父神の象徴である青と、その妻神である女神の赤をその身に持っていた。だが、俺は。


「俺は父なる神へお仕えする神殿所属ではあるが、炎の女神や戦の男神とはなんの関係もないぞ。我が巫覡も、ここにはいらっしゃらないし…」


「軟弱な巫覡がここへ来られないのは、私がアレを嫌っているからだよ。お前は、神々の執着を知っているはずだ。知らないふり馬鹿のふりはやめておけ」


 いや、ふりじゃなくて本当に知らないし馬鹿なんだが…


「まあいい。父は母のことを溺愛していて、母の両親の愛し子のことは父も気にかけておられる。そして祖母の愛し子は祖父にとっても愛しい存在であり、祖父の愛し子は祖母にとっては自らの愛し子も同じ。祖父の愛し子が祖母に近付けば、つい反射的に祝福を与えてしまう程にね」 


 え、待て、待って。

 そもそも、目の前の青年はどこの誰?

 いや、なんとなくは分かってるが、脳が断言するのを拒否している。理解したくねぇ、と別の俺が嫌がっているというか。


「はは。面白い人間だと思っていたけれど、お前本当に面白いね」


 混乱する俺からすっと後ろに下がり、笑う。


「最期にこんなに笑えるとは思ってなかった。ルーの元に居る半分に分けた私も同じように笑っているようだし、私は今幸せなんだと思うよ」


 俺だけでなく、ここに居ない彼の気にかけている人たちに向けた言葉を楽しそうに紡ぐ。


「とても気分がいいから、助言してやろう。さっきの私の言葉、一言一句違えずに軟弱な巫覡に伝えて教えを乞うといい」


「我が巫覡に?」


「私としては楽しくないが、喜んで解説してくれるだろうさ」


 ……? なにが楽しくないんだろう。祖父母に気に入られるのが嫌とか?


「そんな訳あるか。アレは気に入らないが、アレに意地悪をするとカーリィが悲しむ」


 そんな子供みたいな。って我が巫覡を気に入らない? 我が巫覡にこんな知り合い居たか?


「最期の最後にお前と、それもこんな会話で終わるとはな。それがあまり嫌ではないという今の気持ちが、悔しいという感情なのかな。ふふ、楽しませてもらった礼だ、もう戻れ」


 憂い顔だが楽しそうでもある微笑を浮かべて、三本の指で俺の額を押した。

 いや、指が額にめり込む勢いだったから突いたとか、刺したっていうべきだな。

 もっと優しくしろよ~と声が出なかったが、力のかぎり叫んだ。


「うるさい。巻き込まずに帰してやったんだ。多少痛くても我慢しろ」


 彼から遠ざかっていくごとに暗くなる視界だが、楽しそうに笑っているのが分かった。まあ、最期というのなら、楽しそうで良かったと思うよ。



 お前、人型だと我が巫覡に似ていたんだな、蒼炎カエルライグニー







『馬鹿者。アレが私に似ているんだよ』


 目覚めようとする俺の耳に青い青年の楽しそうな声が届いたのは、きっと勘違いじゃないと思うんだ。




某神による某家族の兄妹弟紹介


長男:カルゥ

 両親と妹、弟はすごく可愛い。自分と下の妹と弟たちに振り回されて割をくっている上の妹が不憫で、申し訳ないのと可愛いのとで全力で可愛がっている。

 しかし、感情というものが理解できない、身体は大人だが中身は…というちょっと困った君。

 「家族も恋人も大好きなんだけど、愛ってなんだろう…」とずっと思っていたが、消滅間際に感情というものを理解できたかもしれない2号。

 (最期は幸せそうで良かったといえば、良いのかしら…)



次男:エゥヴェ

 長男に輪をかけて感情というものが理解できない、とても困った君。

 両親は割と好きだし、兄と妹弟も可愛いと思う。けど、ひとりで居たいからしょっちゅう行方不明になる。完璧なる無表情。喜怒哀楽がぜんっぜん顔に出ない。

 前回の人生でニィとルーシェムに降りかかった禍から二人を庇い消滅している。

 自分のせいだと泣き崩れる下の妹を、同じく泣きながら慰めつつ抱き合い兄の消滅を悲しむ上の妹を見て「なんだ、俺妹たちのこと好きだったんじゃん!」って気がつき、満面の笑みで消えていった。

 消滅間際に感情というものを理解できたかもしれない1号。

 (自分の感情に気が付くのが遅いのよ、もう…!)



長女:カーリィ

 両親、兄も妹も弟も大好き、兄たちは格好いいし妹はすっごく可愛い。妹が自分に懐いていてかまってもらえなくて拗ねる弟も、そりゃもう可愛いしかないわよね。

 我が道しか行かない兄妹弟に振り回される苦労人。

 底抜けに明るく情に厚いため、兄妹弟の起こすいざこざの解決は大抵この子。皆、騒ぎを起こすだけ起こしてどこかへ行ってしまうから…

 巻き込まれた騒動にて高確率で窮地に陥り、他の兄妹弟にしょうがないなぁと言われ助けられている不憫な娘。両親がそれを理解しているのが救いといえば救い。

 今回もしっかり巻き込まれてお約束の窮地に陥り、長兄に救われる。が、連続で兄の消滅を見て心の痛手は深くなった。どちらの兄も笑って消滅したので、辛うじて正気を保っている。

 (もうやめてあげて…)



次女:ニィ

 家族は皆好きだけれど、精神的にしなやかで優しく強い姉が一番大好き。

 兄二人とも元はといえば、私が原因じゃないの! 私が消滅しなきゃいけなかったのでは…と軽く病みかけたが長兄の「お前のせいじゃないし、お前が死んだらカーリィも消えるよ?」との一言で立ち直る。

 これからは騒動を起こさないで生きるのが必須だと決心した。

 (無理しないで、姉妹で支えあって幸せになって。)



三男:アーフ

 次女大好きツンデレ君。いつも長女が騒ぎを起こして次女が駆けつけて構ってくれないため、長女はあまり好きじゃない。

 しかし、もしかして長女は何も悪くなくて、原因は俺たちだったりする?と、兄と姉の誰よりも早く気がついた。

 そのせいで、長女には気を使うようになった。でも、ニィねぇちゃんがこっち向かないのが寂しくて素直になれなず、長姉に対してツンツンしちゃう。

 (あなたからねぇちゃんの所へ行きなさいな。そしてねぇちゃんのお姉様を助けてあげて。)



両親:アグメン&アウラ

 兄たちは巡りめぐって自業自得とも言えるけれど、自分たちが忙しくて手が回らないばかりに…カーリィ、本当にごめんね。

 (謝ってないで行動しなさいよ。お前だ、父親!)



長男の恋人:アーシェム

 自分と他人の感情の機敏が理解できないが、一生懸命に理解しようとするカルゥがとても愛しい。

 騒動の原因ではないが、巻き込まれて解決に奮闘するカーリィを助けに行ってしまう恋人の背中を何回も見ているので、カーリィはちょっと苦手。

 他の妹と弟たちは大丈夫かといえば、騒動を起こす原因の奴らはもっと苦手だ。

 しかし、その騒動の半分ちかくは恋人と、恋人と一緒に居る自分が起こしているので何とも言えずにいる。

 (何も言わなくていいから、これからはできるだけ自分で解決なさいね。)

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