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炎の令嬢と氷の御曹司  作者: 青井亜仁
炎の王国
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余談 ── ある兄とある妹の雑談 ──

「赤い炎持つ御君に、紅き炎の娘よりご挨拶申し上げます、王太子殿下」


「高貴なる紅き炎の巫女姫にはご機嫌麗しく…誰も見てないんだ、この挨拶は省略しないか」


「殿下のお許しを頂けるなら喜んで。挨拶だけでせっかく用意して頂いたお茶が冷めますもんね」


「そうだね。寒くなってきたから冷たいものは出来るだけ飲みたくないし、このお茶は温めが一番美味しいんだ。さて、カリタにご褒美を…と言っていたアルが急用で出ているんだ。戻るまで私に相手をさせてくれたまえ。まずは座って飲もう」


「ありがとうございます、いただきまーす。……うわっ色も味も濃いのに苦くないし口に残らないですね、凄い。とても上手に淹れられてます」


「ふふ、それは良かった。私が淹れたんだよ」


「王太子殿下自らですか?」


「いつもの通り名前でいいよ。ルゥリに淹れているうちに上達したんだ」


「あらまあ、ご馳走さまです。ペルゥーリタ妃殿下にお会いしたら、美味しいお茶を頂けたお礼をお伝えしなくちゃ」


「ルゥリは喜ぶと思うよ。ついでにルゥリの部屋の明かりをカリタが点けてくれたら、更に喜ぶよ。読書が好きだからね」


「明かりなんて誰が点けても同じじゃありません?」


「それが違うんだよ。私が点けた明かりと、アルが点けた明かりでは器具が違うんじゃないかという位でね。なにもせず過ごすには問題ないのだけれど…」


「そうなんですね。ああ、だからいつもカリドゥース殿下の侍従たちに点灯を頼まれるんですね」


「そうなんだよ。申し訳ないとは思うけれど、執務や読書となると(国王陛下)が点けた明かりだと近くに照明器具があっても手元が見にくい時があるんだ。すぐ壊れるし。目の前で点け直ししたりするとぐちぐち煩いんだ」


「それはまた…お疲れさまです?」


「はは、ありがとう。本当に疲れるんだ、あの人の相手するのは。グラテアン邸や騎士団(エクストゥルマ)でそういったことはないのかい?」


「ありませんね。そうえば、先ほど殿下の仰ったすぐ故障するで気がつきましたが、我が家でも騎士団でもあまり器具の故障はないですねぇ」


「ああ、やはりそういった所でも女神の寵愛が出てくるのだろうね。アルの部屋の照明器具は壊れにくいからと、父が取り上げた事があってね…」


「交換したらすぐに壊れたってオチですか?」


「いや、取り付ける前に器具が粉々になったんだ」


「………ああ、そうなんですね。ええぇ……そりゃアルドール殿下の不在を狙って、しかも黙って器具持っていったら殿下がお気に入りの母なる女神はお怒りになりますって」


「カリタはその件を知っていたのかい?」


「今知りました」


「今?…ああそういう(カリタの頭上に視線)」


「(カリドゥースの視線を見て)ええ、そうなんです」


「これからも父が側に居ると壊れ続けるのだろうか。いや、あの人あまり仕事はしていないんだが、突発的に私の執務室に乱入して王の仕事を取るとは何事だって怒るんだ」


「カリドゥース殿下に押し付けたこと忘れて怒るって、頭大丈夫ですかね? 殿下の父君」


「大丈夫じゃないね。あの人をどうにかしたいんだけれど、アレはあの状態がいいっていう家臣が多くてね。どうやってあれらを排除して諸悪の根元を退位させるか悩んでるんだ」


「あ、やべっ。王家の闇を覗き見しちゃったやつだこれ。私は聞いてない、聞いてないんだ…」


「聞こえてるよ、カリタ。私が行動を起こしたくなったら協力してくれると嬉しいんだがね」


「う、うわぁ… ええと、私や兄たちが ………(もにょもにょ) なのは現国王陛下であって、次期国王陛下には期待しかないですよ?」


「おや、嬉しいことだ。頑張るよ(にっこり)」


「あ、あはは… あ、明かりといえば」


「なんだい?」


「アルドール殿下って、眩しくありませんか?」


「うん? 眩しいとは?」


「いえ、アルドール殿下の周囲だけ物がハッキリ見えたり、夜間戦闘だとやたら目立つから殿下に敵がすごく集中したり。こっそり行動したいときに殿下が同行してると高確率で敵にバレるから困るんですよねぇ」


「特に眩しいと思ったことはないな」


「そうなんですね。お身内には効果ないのかな」


「いや、待てよ。ソルが似たような事を呟いていた気がする」


「ソノルース殿下が?」


「そう。アル兄上は輝いているから、外でとても見つけやすいとかなんとか言っていた」


「仲間! 仲間が居るじゃん、やったぁ。あ、でもソノルース殿下かぁ。取り巻き連中に絡まれるもんなぁ、話したいけどしたくない。困るぅ」


「全部聞こえてるよ、カリタ」


「はうっ、またしても口に出ていましたか!」


「ソルは環境が悪くてね。王族や貴族としての常識を、今アルから学んでいる所なんだ。面倒だろうが、あの子のおかしいところは遠慮なく指摘してやってくれると助かる。公爵令嬢たるカリタに頼むことでないけれど…」


「私、常にソノルース殿下を避けていますの。彼の連れている取り巻きたちが、本当に卑しくて嫌いなのですわ」


「叔父上と歳の離れた兄たちが放置していたようで、その隙を狙って下級貴族たちがすり寄ってきたらしい。引き離すようには言っているんだが… 早急に手を打つよ」


「カリドゥース殿下がそこまで仰るなら、仕方ありませんわね。いつものように避けるのは止めませんが、もし出会ったら指導して差し上げてもよろしくってよ」


「ふふ、さすがはカリタリスティーシア嬢。完璧なる公爵令嬢だ」


「見本はヴァニトゥーナですわ。けれども、わたくしが令嬢っぽくすると皆さん周囲から居なくなるんですのよ? どうしてかしら」


「美しく気高いご令嬢の隣に、みすぼらしい自分が居てはいけないと思うのじゃないかい?」


「同じ制服を着て、同じ学舎に通うもの同士ですのに。不思議ですのね」


「仕方ないと思うよ。私も今のカリタには少し緊張するからね」


「言葉遣いが違うだけじゃないですか。緊張することなんてないと思いますけど」


「なんというか、貴族的な無表情のカリタは巫女リーシェンっぽくて頭を下げたくなるから、かな。普段は思っていることが全部口に出てしまう面白いお嬢さんなのに、差がすごい」


「それを言うならアルドール殿下じゃないですか。普段の小兄さまの悪友みたいな殿下が、王子様をしていると眩しくて気品があって腰がひけちゃうんですよ」


「ふーん、そういうものなんだね。アルが王子をしている時に巫女をしているカリタが並ぶと場がとても華やかになって、ご令嬢たちが『お似合い』だってウットリしてるの知っているかい?」


「お似合いとは?」


「式典なんかで二人が並ぶのを見て、ルゥリの侍女たちが美男美女でお似合いだって騒いでるんだよ」


「殿下、見た目は完璧王子ですもんねぇ!」


「綺麗に美女の所は聞き流したね」


「はい?」


「なんでもないよ。そろそろアルがこちらに逃げてくる頃だ。カリタ、お茶のお代わりはどうだい?」


「あ、飲みたいです」


「では、アルの分も淹れて待とうか。アル、今日は気合い入れて服を盛っていたからね、期待しておいで」


「うわぁ、眩しいんでしょうね。直視しないようにしないと、目がやられちゃうかも」








 どこかの家の妹が嬉しそうにお茶を受け取ったとき、お茶を渡したどこかの王子の弟王子が部屋に飛び込んでくるのが同時で、光を背負った弟王子を見て爆笑したとかしないとか…

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