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炎の令嬢と氷の御曹司  作者: 青井亜仁
炎の王国
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騎士団集合会議5

 滑舌よく流れる水のごとく滑らかに言葉を繋ぎ、いつもより早めの、でも早すぎない速度でクソ参謀に口を挟む隙を与えず最後まで言い切ってやったわ。ちゃんと黙らせました! えへっと笑いながら目でおじさまへ報告する。

 すごい顔でこちらを見ていたアルドール殿下は、ちょくちょく入る嫌みに笑いをこらえるように段々無表情になっていった。

 あの、すんって息してるのかしらってくらい静かな表情になると、私的な場でしか表情を崩さなかった頃の殿下っぽい。

 無理難題を言うからには対策を言えよ今すぐに(意訳)、と言い切った辺りでそりゃもうクソ参謀に負けない人の悪そうな笑い顔へと変わってた。ちょっと前までどこからどう見ても王族です、って方だったとは思えないくらい表情のあるひとになったなぁ。

 黙って澄ましていれば王子サマ、天馬(カエルクス)捕獲師見習いするときは少年のような好青年に、近衛騎士団レクスプラエトリアニの団長として会議室で嫌みな笑顔を浮かべている姿は、上品なのに野性味あふれる様になっている。顔とガタイのいいひとって、なにやっても様になっちゃうんだって見本のようだわ。

 ただ見てるだけ、で済ませてくださらないしちょっと自分愛の強い方だから私の『素敵な美形枠』に入らないんだけど。見た目いいけど中身残念、なイーと同じ『見た目はまあいい感じ枠』になるわね。


「なるほど、巫女殿の言われるように主席参謀殿にはちゃんと策があったのか。全てをグラテアンに丸投げするという、他人任せの無責任で都合よく責任転嫁する気なのだと勘違いしていた。主席参謀に対して失礼な思い込みだったな、申し訳ない」


 唇の片方を上げて微笑した後、真顔に戻ったアルドール殿下の低い声が力強く響く。


「では、グラテアン騎士団エクストゥルマを使い捨てるのではない、主席参謀殿の作戦の説明をしていただこう」


 爽やかに主席参謀に向けて謝罪し追い詰めるように、絶対考えてねぇだろうけど素晴らしい作戦を聞いてやろう、をなんか上品っぽく聞こえるように言ったわ。『申し訳ない』に力入ってたもん、これクソ参謀にも謝罪させて何がなんでも作戦提案させる気しかないじゃないの。うわ、怖っ。


 慇懃無礼なクソ参謀は真っ青な顔をして、固まったように黙り込んでいる。どうやって誤魔化そうかと考えてるようだけど、逃がしてもらえない状態ということだけは理解してるっぽい。

 チラチラと左側に座る宰相と軍務大臣に視線を向けて助けを求めてるようだけど、二人とも彼の方を向こうともせずボソボソと会話していた。まさか、クソ参謀がまともな作戦をたてれば良し、バカみたいな作戦を提案したら失脚させる気でいたとか?

 こんな非常事態に、目障りな家臣を排除するなんて事しないで欲しい。なんの実りもない集合会議で終わっちゃったら、結束もなにもあったものじゃなくなる。困る、とても困るわ。


 助けておじさま…とアニラス団長を見れば、こちらも片方の唇を上げるニヒルな笑みを浮かべて頷いている。や、やだなぁ、おじさまがああいう顔してるときってすごく不機嫌になってるのよね。やめてください、そんな良くやったね次は?みたいにこちらを見ないで!

 た、助けてパークス団長とばかりに右を向けば…いやだぁ、こっちもすっごくいい笑顔があるじゃないの~ 笑顔で額に青筋って。怒ってる、これものすごく怒ってるときのパークス団長!!


 ちょ、席外していいですか? いいですよね?! 

 あの笑顔は笑顔で・丁寧に・あらん限りの暴言を、怒涛のように繰り出し尽くす前触れなの。いくらクソ参謀とか宰相とか軍務大臣に向けてとはいえ、こんな至近距離で静かにお怒りの言葉は聞きたくない。クソ参謀、あーうー唸ってないでさっさと土下座でもして謝ってしまいなさいよ。


 なにかしら、クソ参謀をただたじっと見つめてたアルドール殿下、アニラス団長とパークス団長お二人だけでなく、ほぼ全ての団長が私を見たり意識を向けている気配がする。

 みなさん、なにを期待していらっしゃるのかしら?


 ああ、ソウデスネ。快適な相談の出来る空間を求めていらっしゃるのね。そう、私が提案してその空間をもぎ取ればいいんですね! 殿下、おじ様、パークス団長。

 よ、よし覚悟を決めて団長のみでお話しようって、おじさまとパークス団長を見ないように提案しましょう。そうしましょう。

 お三方以外への主導権奪取のチャンスと思うのよ、頑張りなさいカリタリスティーシア!




 母なる女神、どうか団長以外の人々をこの会議室から上手く追い出せますように。今日久しぶりに何回も祈りではなく、願いを捧げたことは大目に見てください。

女神

 そんなことより、その口の悪さをなんとかなさいな。

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