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炎の令嬢と氷の御曹司  作者: 青井亜仁
炎の王国
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騎士団集合会議4

「結束力もある大規模帝国軍に、グラテアンだけに負担を強いさせる気なのかと聞いたのだが?」


 アルドール殿下の低くなった声に眉をひそめる主席参謀。


「我が王国軍が帝国軍を打ち破るために、グラテアン騎士団エクストゥルマには帝国軍と総大将(インペドゥムスの目をひいてもらわねばならぬ、と申し上げたのです。侵攻してくる帝国軍をただ迎撃するだけでは、国土への被害が大きいではありませんか」


「グラテアンを陽動ための囮として据えるのと、迎撃する全ての場所の主軍にするのはまったくの別物であり、物理的に無理だろう。そもそもグラテアンは王宮騎士団パラーティルム近衛騎士団レクスプラエトリアニと渡り合える稀なる騎士団とはいえ、あくまで私設騎士団(プライベエクストゥルマ)であり規模は国軍とは比べ物にならない。主席参謀がいう総大将を巫女リーシェン殿に相手にさせるのも、そう難しいことではない。だが、正面からのみ侵攻して来るわけでもない帝国軍を迎撃するために、展開したすべての軍の最前にグラテアンを持ってくるのはやりすぎだというのだ。我が国の危機である今、持てる力で国を守るために尽力するのが貴族たちの義務とはいえ、いち貴族だけに国の為にすべてを捧げよというのは間違いだと言っている」


 誰にも口挟ませることなく、演説のように追い詰める殿下に気にした風もなく主席参謀が反論する。


「しかし、グラテアン家は巫女どのへの特権を国や神殿から数多く与えられております。その分国へ還元して頂くのが筋というもの。グラテアン家にすべて負担せよ、とは言いません。今回の戦闘での予算はすべて国が請負い、グラテアン家には戦闘力の派遣を要請しているだけです」


 おい待て、騎士をバラけて配置する事と特権問題を一緒にすんな。神殿からの特権なんてなんの役にもたたないどころか、むしろ神殿に有利な事案だし、その特権で潤ってるのはグラテアン騎士団じゃなくて義母じゃないか。というのを、回りくどく言うにはどうすれば…と考える間もなくアルドール殿下がさらに反論してくれた。


「巫女殿とグラテアン騎士団に与えられた特権は、騎士団の維持や巫女殿の発揮する能力を十全にするためのもの。現に巫女殿の展開する国を覆う結界のは巫女殿のみが起動できる代物だ。その結界のもたらす恩恵をただ享受するだけの貴殿は、与えた特権以上に還元しろと言いたいのだな?」


 そうなんだよね。私を戦闘特化の狂戦士扱いするわりに、私のように国内保全結界を起動する能力者が神殿には居ない。維持は神官たちで出来るから年に数回の点検・再展開に呼び出されるだけではある。こっちの都合は丸無視な計画なだけで。


「すべての戦闘区域の前面に据えてしまえば、グラテアンの騎士たちがすり潰されグラテアン騎士団が壊滅するぞ。それが当然だと主席参謀がいうのなら、他の騎士団も貴殿のいう作戦で戦うのは断固拒否するだろう。少なくとも私は配下の騎士たちを使い捨てるという、貴殿のたてる作戦を採用したくない」


 アルドール殿下の鋭い視線と、主席参謀の自信満々な視線がぶつかり合い殺気だってくる。やだ、擬音が出そうだわ、バッチバチだわ。

 振り返らなくてもわかる、小兄さま絶対満面の笑みでアルドール殿下を無言で褒め称えてるわ!

 なんて実況してる場合じゃない、アルドール殿下の横に座るおじさまの視線がとても痛いので、そろそろ発言するかー。


「主席参謀のおっしゃる、わがグラテアンを前面に置きたいという提案は賛成といえば賛成です、アルドール殿下」


 割って入る私の発言にすごい勢いでこちらを振り向く殿下に、とっておきの笑顔で応える。大丈夫です、アホな作戦を受けるとは言っていないのです。


「私の戦闘力が桁ちがいだから、と各騎士団との合同訓練に巫女(わたくし)が参加したことはありません。私の特殊能力も使った戦闘を経験している方、見た事がある方は、ここに集まった方々でも、殿下とアニラス団長、パークス団長のみですよね?」


 全体を見回すと、みなさん頷いている。なかには『自分を誇大評価して粋がった小娘が』みたいな薄笑いをよこす者も居るけど。気になるなら地べたに這いつくばらせてやるから、楽しみにしてるといいわ。


「氷と炎の質の違いがあっても対処の仕方はそう変わらないのですが、未経験者にいきなり対応させるのは難しいでしょう。戦闘開始早々に総大将と私が相対することができなかった場合、私が駆けつけるまで戦闘場を保たせなければいけません」


 主席参……もう脳内じゃクソ参謀でいいや、が理解できて無さそうな表情で話を聞いている。一呼吸おいてためを作って続ける。


「その点、グラテアンの者は慣れているので、主席参謀の仰る配置する隊にグラテアンの騎士を置くといのは、理にかなってはいるかと」


そらみたことか、と嫌らしい笑みをうかべ殿下を見やる主席参謀に向きなおり、いっそう無邪気に笑って続ける。


「しかし、すべての前面にグラテアンの騎士の配置をするのは無理というもの。という事を、主席参謀はもちろんお分かりですよね?」


 こんどは「は?」と声なく口をあけ、こちらを見る馬鹿面に続けて言い募ってやる。


「ご存知のように、我がグラテアンでは中隊以上をもっての戦闘が基本的です。単独で騎士の集団とわたりあって戦闘できるのは団長の私、副団長、そして副官のソリスプラだけです。今回は地上と空へ、どれだけ軍を配置するのか具体的に決まってないとはいえ、全軍にグラテアンの中隊を派遣は無理というもの。

当然、主席参謀は小隊や騎士単独で配置すればいい、とお考えではありませんよね。そこを解消する作戦を用意されていらっしゃるんですよね?……ああ、まだ具体的な案はでてないのですね。例えば、グラテアンの騎士数人を他団に派遣するとして、よそ者であるグラテアンの指示に他団の騎士たちが同じように迅速かつ正確に、グラテアン式に動けるわけがありません。どうやって短期間に連携がとれるかの方法などが必要ですが、そこのところはどうするのですか? まさか、その辺りもグラテアンと各騎士団へ丸投げなんて事ないですわね?……なさらないと私は主席参謀を信じていますわ。当然従ってもらわねばならぬ、というただの信念のような意見ではなく現実的にできる方法を思い付いておいででしょう? 是非ご教授くださいませ!」

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