表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎の令嬢と氷の御曹司  作者: 青井亜仁
炎の王国
1/144

少女の独り言

 炎の女神エイデアリーシェの巫女(リーシェン)は燃え盛る炎の剣。

 人々は炎の巫女である私を慈悲なき猛火とも烈火とも呼ぶ。激しい戦闘時に、その末に他者を燃やし、そびえる建築物を焼き付くし、大地を炭化せしめる。生きとし生ける者たちの脅威にしかならない煉獄の炎。慈愛の女神の厄災であり、戦にしか活用する場のない存在、と。

 そんな私は持てる狂熱で他者だけでなく、自らも焼き尽くし身を焦がすような感情と能力(ちから)を持て余し燃え続ける者。


 氷の男神エイディンカの巫覡(ディンガー)は凍える蒼い槍。

 人々は氷の巫覡である貴方を冷徹な激流、崩れぬ氷山とも呼ぶ。激しい戦闘時に、その末に人間の氷の彫像を作って砕き、建築物を凍りつかせ、溶けぬ氷の大地へと変貌させる。生きとし生ける者たちの脅威にしかならない煉獄の氷。慈悲の神の厄災であり、戦にしか活用できぬ存在、と。

 そんな貴方は持てる冷淡さで他者だけでなく、自らも凍りつかせるような動かぬ感情と能力(ちから)を持て余し凍える者。


 はじめての出会いは穏やかだった。一目で互いに互いを理解する。

 こうして我々が和やかに会話できていようとも、いずれ命かけて戦うしかないと。例えお互いの神どうしが敵対する存在でなく、手を取り合い素晴らしい世界を築けるとしても、我々を取り巻く環境がそれを許さないと。なぜならば我々の属する国は敵対しているのだから。

 戦いたくない、殺し合いたくない。だって、こんなに貴方の苦しみを理解できる。だって、きっと貴方も私の苦しみを理解できている。

 だからこそ、そんな願いは叶わないことも解る。主たる神は、自らの存在を確固たらしめる者たちの望みを聞かねばならないのだから。例えその結果、お互いが滅びようとも。


 出会いから数年の時を経た今、知らなかったことも理解する。


 貴方は全てを凍らせる。でもその慈悲の氷で焦土と化した大地を潤し、緑の大地へと戻せる。そして、身を焦がす炎の剣である私をただの人にする力を、そうとは知らず持っている。ただひとり、貴方だけが。


 私は全てを燃やす。でもその慈愛の炎で凍てついた死せる大地を溶かし、緑の大地へと戻せる。そして、身を凍らす蒼き槍である貴方をただの人にする力を持っている。ただひとり、私だけが。


 そうとは知らなかった、ついさっきまでは。

 そうとは知らなかったはず、貴方も。

 でも貴方もたぶんもう…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ