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黒でも白でもないものたち  作者: スノーフロップ
1/1

黒と白の狭間のチーム

 モニターの光が体を照らし、後ろの壁に影を映し出す。部屋にはカタカタとキーボードのタイプ音だけが響き渡る。


 「…見つけた。」


 というつぶやきと共にタイプ音が消え、代わりに電話のコール音が部屋に響き渡った。


 「…もしもし?私だ。目標を確認。現在ターゲットは石川県を南下中。…早いな。ターゲットが現在の速度を維持したら、あと大体10分で岐阜県に入るぞ。」

 「オッケー、ちなっさん。岐阜県で迎えうつよ!とばりん、ありがとね。」

 「報酬、忘れないでよね。あと、絶対成功させなさいよ。」


 と言うと電話を切る。ふぅ、と息を吐く。座っていたゲーミングチェアをくるりと半回転させると立ち上がる。

 左右に体を捻り、グーっと一回伸びをして…


 「…おっと。」


 とよろけた。

 私は自室を出ると暗い部屋の中を灯りもつけずに歩く。冷蔵庫を開けておとっときのプリンを…と思ったが、置いてあった場所にはプリンの姿は無く、代わりにメモが一枚。


 『プリンごちそうさまでした

  めっちゃ美味しかったです♡

  今度どこで買ったか教えてね

           ひなつ 』


 …あんのやろー

 グシャッとメモを握りつぶし、舌打ちをかます。ひなつはついさっき連絡をした少女で、AAAと呼称される組織の掃除屋だ。

 AAAの仕事は犯罪のうち、闇に葬らなければならない事件の犯人を消す事だ。大体が、スパイだったりテロリストなのだが、最近は政府が秘密裏に進めていたプロジェクトが失敗し、脱走した被検体を消すのが主だ。

 おかげで私たちの仕事は急激に増えた。AAAには他にも掃除屋を持っていてAAAの全員で被検体を躍起になって探している。

 なのでこの案件がきたときに遠回しでうちの部署はパスでという内容を本部に送ってみたのだが、おかげでえらい目にあったので泣く泣くやっている。

 

 「ちゃんとやってるかな、あいつ(ひなつ)。」


 そう呟くと私は遠く離れた岐阜県にいるであろうヤツに思いを馳せた。


 ウチ…ひなつはおきにのパーカーを羽織ると、送られてきたデータを元におおよその位置を割り出す。その位置に行くと予想通り…いた。


 「ちなっさん、ハルさん、3カウントで行こう。」


 そう言うと私はパーカーの内ポケットから1丁の拳銃を取り出し、セーフティを外すとコッキングする。


 「いくよ?」


 とヒソヒソ声で聞くと2人は頷く。予定通り3カウントの後、一気にそのターゲットへと突撃を開始した。


 「!?」

 「て、敵だ!敵が来たぞ!」


 と取り巻きが騒ぎ始める。私は取り巻きに向かって躊躇なく発砲した。私がトリガーを引くと鉛色した弾丸の代わりに銃弾より若干遅く一回り大きい弾が射出される。

 その弾は一番前にいた男の肩を痛撃し、残りは後ろの木を穿った。


 「ねぇハルさん、精度もうちょっと良くならないの?」

 「無理言うな!このフェレット弾を拳銃でも使えるように改造させやがって!大人しく9mmパラベラム使ってればそんなことなってねえよ!」

 「ちょっと遥輝(はるき)、ひなつ!こんな時に仲間割れしないの!」


 とお互いを罵り合う姿は格好の的だ。その証拠に、どデカい火球がこちらに飛んでくる。


 「ハルさん!」

 「わかってる!」


 私が指示を飛ばそうとするがすでに遥輝は動いていた。手元にある手榴弾のピンを抜くと火球に向かってぶん投げる。直後、火球がかき消され、少し焦げた手榴弾がカラカラカラと地に落ちる。

 これはとばりんこと(とばり)とハルさんが開発した対能力者兵器ESPスタン・グレネードだ。

 このグレネードは特殊な特殊な音波を発して、能力者が改変した現実をかき乱し、改変する前の現実に戻す効力を持つ。AAAの中でも私たちのチームにしかない特色だ。

 このグレネードの有効範囲は直径90mの球状で有効時間は約1時間。この間に一気に勝負をつけたり、一時的安置を生み出している。

 この兵器を作ってからは私たちに依頼が集中している。このグレネードは元々“ギフテッド”と呼ばれる奇跡的な確率で能力を持って生まれたものが起こした犯罪、または存在そのものを抹消する行動そのものを円滑に行うために作ったものが、今となっては…だ。

 もうここまで来ればわかると思うが、一応説明すると、政府が秘密裏に進行させていたプロジェクトそれは“能力者の人工的な作成”らしい。そのさきに政府が何を考えているのかは分からないが、プロジェクト内容については十中八九それであっているだろう。

 まあ私は一界の掃除人だからここまで知っていてもしょうがない。

 そんなこんなで私たちは5人を制圧した。やはり全員が能力者だったようだが、グレネードのせいで能力が出せず、そのまま私のフェレット弾の餌食になった。フェレット弾は弾丸の中に催涙ガスなどのガスを入れて相手を無力化させる非致死性兵器だ。

 

 「じゃあ。なっさん、いつも通りよろしくね〜」


 と手を振る。今回捕まえた5人をAAAのチームメンバーなっさんこと鳴海隼人(なるみはやと)が乗ってきた引越しトラックに乗せると、颯爽と去っていった。


 「うっし、仕事も終わりましたし、帰りますか!ちなっさん、車よろ〜」

 「あんたが運転しなさいよ!」

 「ええ〜私ペーパードライバーだしぃ、最近乗ってないのでぇ、いきなり運転はぁしんどいかなぁって。」

 「AAAならいついかなる時でも運転できるぐらいには訓練受けてんじゃないの!?」

 「今時そ〜んなブラック会社労基でつぶされてますよ。」

 「ぐぬぬぬ…あ〜言えばこう言う…ストレス!」


 ちなっさんが頭を掻き毟るのを私はドン引きした目で見ていると、


 「ちなっさん…いや、ちなみ。運転お願いできるかな?」


 と遥輝が超絶イケボで全力でオトしにかかる。遥輝は声を自由に出すことができ、高音低音など音域にとらわれることのない発声ができる。遥輝も運転が苦手なのでなんとしてでもちなっさんに運転させようとしていた。


 「でも…私疲れちゃったし…」

 「帰ったらお茶入れてあげるから。」(←超イケボ)

 「でも…」

 「頼むちなみ。お前だけが頼りなんだ。」(←超イケボ)

 「そこまで言うなら…」

 (あ、案外チョロい)

 

 そうしてちなみことちなっさんは車を取りに行った。ちなっさんが見えなくなると、遥輝はハァッと息を吐いた。

 

 「あ〜疲れた。」


 と元の声に戻った遥輝を見て、つい


 「もったいないな。」


 と心の声が漏れた。

 

 「は?どう言うことだよ。」

 「いや性格はともかく顔はいいからさっきちなっさんオトとした時の声いっつも出してれば女の1人や2人余裕で引っかかると思うんだけどなぁ…って考えたらAAAにいるのもったいないなって思ったの。」

 「それも考えたけど…俺の居場所はどこにもねぇよ。もう葬式も済ませた。本来の俺は死んでるんだよ。今更、AAA抜けるなんて無理だ。それこそ本当に俺という存在自体が消える。」

 「ま、それもそうなんだけどね。」


 なんて喋っていたらちなっさんが車を持ってきてくれた。


 「ありがとうございます。」

 

 と言って乗ろうとするが


 「ちょ〜いちょいちょいちょい、誰があなたを乗せる言うた?私が乗せるのは帰ったら茶を入れてくれるイケボ少年1人だ!」

 「らしい。悪いな、ひなつ。…お願いします。」(←超イケボ)

 「うわきっしょ…その声で名前言うのやめてもらえます?不愉快。」


 と言うのとほぼ同時にちなっさんは無言で車を発進させようとアクセルを踏もうとする。

 

 「はいストップ〜」


 と言うと私は助手席のドアを開き、車が発進するのを防いだ。


 「なんで私が無言発進するってわかったのよ。」

 「ん〜、勘、かな。」


 と言いながら車に乗り込む。


 「ま、いいわ。帰るわよ。」


 というひなっさんの意見に同意すると、私たちを乗せた軽は私たちの拠点である愛知県岡崎市へと向かっていった。

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