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魔女セリスと8人の大魔女 〜この世で二度目の大厄災〜  作者: もーる
第3章 空間魔法の使い手たち
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欠章1.始まりの記憶

 これはどの記録にも誰の記憶にも残っていない物語。

 そして、魂の欠片(カケラ)としてこの世に残り続けている、誰かの記憶の残滓──。



***



 とある国のとある森の中。

 私は人里から離れた場所へとやってきた。



「ふう……」



 普段は魔物の討伐を生業としている私だが、街中にいると変な目で見られる。

 恐らくはこの服装のせいなのだろうと思いつつも、生計を立てるのに精一杯で服を買うお金がない。

 そんな毎日続きで、私は人目につかない場所で休むのが習慣になっていた。



「本当に何をやってるんだ、私は……」



 そう呟いていると、前の方から誰かの声が聞こえた。

 それは女の子の声で、誰かと話しているように聞こえる。

 覗いてみると、目の前には6歳ほどの金髪の少女が座り込んで話している。

 だが、周りには誰もいない。

 声を掛けると不審に思われると思い、私は黙って様子を見ることにした。



「あら、光の精霊さん。今日は何だか楽しそう。何かあったの?」



 少女がそう言うと、少女の周りがちかちかと光った。



「ふふ、そうだったの。光の精霊さんが楽しそうで良かったわ」



 私にはその光の精霊さん、という存在が確かに見えていないが、一瞬だけ声に呼応するような光は見えた。

 色々と考えていると、突然少女の周りの草むらが燃え始めた。



「ちょっと、火の精霊さん!」



 少女が怒ると、近くにあった池の水が突然浮かび上がり、燃え盛る草むらを鎮火した。

 すると、次は風が吹き荒れ、どこからか土煙も発生し始めた。



「はぁ……。光の精霊さん、お願いね」



 少女が溜息をついたかと思った瞬間、私は先ほどの光と同じような暖かな光が空から降り注ぐのを見た。

 そして光が止むと、風も土煙も止まったのだった。



「いつもなら、闇の精霊さんが悪戯してるけど、今日はみんなどうしたの?」



 私は「もしや」と思い、どこからともなく眼鏡を取り出してそれを掛ける。

 この眼鏡には不思議な力があって、普通は見えないものが見えるのだ。



「(やっぱりそうだ。あの子は……)」



 彼女の近くには赤、青、緑、黄など様々な色の光が集まっている。

 私は()()が何なのか分かった。

 それに気づいた私は、一歩前へと進むことにした。



「あぁ、光の精霊さんだけずるいって? 大丈夫、私はずっとあなたたちと一緒よ。だから、あなたたちも私とずっと一緒にいてね?」


「その子たちはお友達かい?」


「だ、誰!?」



 明らかに怯えられている。

 街中で変な目で見られる時点で何となく分かってはいたが、実際に恐怖を露わにされると胸が痛む。



「えーと、私は通りすがりだったんだけど、声が聞こえたものだから……」


「精霊さんたち、この人知ってる? え、顔が見えないから分からない……?」


「あ、そうだった」



 私は頭から被っていた黒いローブのフードを脱いだ。



「これでどうかな?」


「……それでも知らないって。でもお姉さん、この子たちのこと見えてるの?」


「あぁ、見えてるよ。君ほどはっきりとは見えていないと思うけど」


「ふーん。じゃあ、お姉さんも今日から私たちの友達ってことにするわ!」


「良いよ。今日から私は君の友達になってあげよう。その代わり、だ」


「その代わり?」



 私はなぜだか、そう言わなければならない気がして、思うままに口を動かした。



「私の弟子になって欲しい」


「でし?」


「要は私が先生ってこと。君のお友達がさっきみたいに暴れたら大変だろう? もっと仲良くなれるための方法を教えてあげるよ」


「精霊さんたちともっと仲良く……」


「心配しないで良い。お姉さんは経験が豊富だからね。その子たちのことも良く知ってる」


「分かった! お姉さんは今日から私の先生……いえ、師匠!」



 師匠、と言う言葉がなぜか無性に胸に沁みる。

 私はその気持ちを胸に収めて、少女に尋ねた。



「そういえば、君の名前を聞いていなかった」


「先に師匠から教えて? 精霊さんたちにも覚えてもらわなくちゃ!」


「名前を聞くならまずは自分から、か。そうだね……」



 私は少し考え、答えた。



「私に名乗れるほどの名前はないんだけど……。敢えて付けるとすれば、ケルビム。黒の魔女・ケルビムだよ」


「まじょ……?」


「今は気にしなくて良い。いずれ分かるから。さあ、次は君の番だ」


「うん!」



 少女は周りに虹色の光を集め、言った。



「私の名前は()()()()! 精霊さんたちもほら、挨拶して!」



 彼女がそう言うと、少女を囲むように様々な色の光が煌めく。

 この時の光の煌めきを見て、私は心の底からこう感じた。


 なんて()()()()()光景なんだろう、と──。

次回は本編を来週投稿します!

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