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10話.[優しく叩かれた]

「よう、拗ねてた文も連れてきたぞ」

「そうか」


 今日はまたラーメンを食べるために出てきていた。

 そうしたら文も参加するようになったという……。

 待て、なんで拗ねてるんだ?


「健二が断ろうとしたのか?」

「いや、匠が全く連絡してきてくれないって拗ねてんだ」

「ああ、だって直接会えるわけだからな」


 毎日必ず一緒に過ごすようにしている。

 それでもまだ足りないということなら、スマホの画面をタップしすぎるのもだるいからもう泊まってほしいぐらいだった。


「っと、きたな」

「食べるか」


 先程から黙ったままの文が気になるがのびても嫌だから食べ始める。

 相変わらずここのラーメンは美味しいな、何度来ても飽きない味だ。


「それにしても付き合い始めたのなら言えよな」

「悪い、もう文のことしか見えていなかったからな」

「おいおい、俺の名前を呼びつつ嬉々として来てくれた匠はもういないのか?」

「いや、健二もいなけりゃ駄目なんだ、だからこれからも頼むぜ?」

「任せておけ」


 全てを食べ終えた辺りでやっと文がお兄ちゃんと話し始めて一安心。


「さてと、俺は珠樹ちゃんに会いに行ってくるわ」

「じゃあ俺は文とゆっくりするかな」

「任せるぞ」

「任せておけ、文を雑に扱うわけないだろ」


 このままにしておくと小さな傷から致命傷に、なんてことになりかねない。


「文」

「……なんで連絡してきてくれないの?」

「俺は直接話したいんだよ」


 気にする必要はないから遠慮なく抱きしめる。

 彼女もしてくれたものの、なんとなく不満があるということが伝わってきていた。


「俺がひとり暮らしでもしていれば文に来てもらうぐらいだけどな」

「……寧ろ私がひとり暮らしをするから匠くんが来てよ」

「はは、遠い話だなそれは」


 結局まだこっちは高校一年生で彼女は中学三年生だ。

 受験勉強をしなければならない年だからできるだけしてやれることはしてやりたい。


「文、なにしてほしい?」

「……またキス」

「それは勘弁してくれ、ここはまだ外だしな」


 しかもラーメン屋の目の前だからな。

 なにをやっているんだとツッコまれかねない雰囲気。


「勉強だって教えてやるぞ」

「そっか、そうすれば一緒に居られる時間も増えるよね」

「って、毎日一緒にいるだろ」

「足りないのっ、それに匠くんの周りにはたくさんの女の子がいるし」

「ふたりは妹でひとりは友達だ」


 って、何度このやり取りをすればいいのか。

 なんか逆に微笑ましくなって頭を撫でたら何故か胸を優しく叩かれた。


「心配するなよ」

「うん」


 文が飽きなければこれだけは変わらないことだ。

 それだけはこれまでの態度とかも含めて分かってほしかった。

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