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悪魔との契約はよく考えず  作者: やみの ひかり
1/5

01話 悪魔との契約

 人間界の暗い路地、電柱にもたれかかる悪魔。夕闇が悪魔を隠し始め、空飛ぶカラスは家路を急ぐ。


 カァー カァー カァー


「はぁ、はぁ、はぁ…… あの野郎、絶対に許さねぇぞ。これで俺様は終わりなのか? 裏切りやがって。くそくそくそくそ!! なに飲ませやがった」


 お腹を抱え、今にも力尽きそうだ。その悪魔の名はザイリ。


「きゃあ!!」


 そこへ、女子高生の牧野麦が偶然通りかかった。今流行っている映画『アニキの刃 無限電車編』を見ていて、帰りが遅くなってしまった。


 ペタン


 この世の者では無い風貌にビックリして、静かにその場で腰を抜かす。眩しい夕日と影の明暗の差で、影がより濃く見え、近づくまで悪魔の姿に気付かなかった。


「ちょうど良かったぜ。おい女!! その体よこせ!!」


 ザイリが、腰を抜かした麦に、


 ズル…… ズル…… ズル……


 最後の力をふり絞り、地面をこすりながらすり寄っていく。


「俺様は終らない。俺様はラッキーマンだぜ。くくくくく」

「いやあああ!! 気持ち悪い!!」


 近づいてくるザイリを、


 バチイイイン!!


 麦が思いっきり頬を引っ叩く。


「ぎゃふん」


 ピクピクピク……


 白目をむき気絶するザイリ。


(えっ? よわ……)





 気絶したザイリが意識を取り戻したのは、


(ここはどこだ? 人間の部屋?)


 麦の部屋だった。その部屋は、必要最低限の物しか置かれていない。殺風景な部屋だ。ただし、ゲーム機、ゲームソフトは充実している。


(助かったのか? 俺様は何時間気絶していたんだ?)


 ガチャ


 麦が制服姿で、部屋に入ってくると、優しい笑顔でザイリに近寄ってくる。


「あっ!? 起きたでちゅか?」

「何言ってんだこの女は? 俺様はなぁ。赤ちゃんプレイが大嫌いなんだよ。SMで言ったらスーパード級Sなんだ」

「ダメよ。そんな汚い言葉使っちゃ。めっ」

「そのノリやめろっての!!」


(あれ? やけに女がでかく見えるな。うん? 違う、俺様の体が……)


 ザイリが、自分の両手を見てみると、


「うえええええ!! なんじゃこりゃあああ!!」


 指は短く、鍛え上げられた筋肉は見る影も無い。プニプニとした短い腕になっていた。


「どういうことだこれは? てめぇ何しやがった!!」

「私は何もしてないわよ。気絶したと思ったら可愛くなっちゃって。こっちが聞きたいわ。ほら、自分で見てみれば」


 手鏡をザイリの顔に持っていく麦。鏡に映った顔は、4歳児の男の子のようだ。


「いやだいやだいやだ!! 俺様は悪魔一の冷血ソルジャーなんだい!!」

「駄々こねて、子供でちゅね」

「やめろ俺様を子供扱いするな!! これじゃあ死んだほうがましだ」

「よしよし」


 ザイリの頭を優しく撫でる麦。


「やめろおおお!!」


 恥ずかしくなったザイリは、顔を真っ赤にし、


 ペシ


 腕を振りほどく。


「私学校行ってくるから。この部屋から出ないでね。お母さんに言ってないの。私の名前は牧野麦。あなた名前は?」

「おう!! 聞いてしまうのか俺様の名前を。その名を聞けば天界の誰もが腰を抜かす、大悪魔ザイリ様とは俺様のことよ!! わははははは」

「はいはい、ザイリね」

「あ、あれ? ちょっと反応冷たくね?」

「あっ、急がないと遅刻する。お留守番出来るかしら」


(久しぶりにこんなに家族以外でしゃべったな)


「行ってくるね……」


 それまでのやわらかい表情とは一変して、暗い表情になる麦。


「おい待て!! 俺様の武勇伝を聞けば、どんなにウルトラなヤツかすぐわかる」

「わかったわかった」


 バタン


 ザイリの話を聞かず、麦は学校へと出かけていく。


 プルプルプル


 悪魔界で名の通っていたザイリは、麦の冷めた反応に、


「く…… 屈辱……」


 悔しさを隠しきれない。





 お昼になると、麦が通う学校では、仲の良いクラスメート同士が、机をくっつけてお弁当を食べる。麦はその輪に入れず、トイレの個室でお弁当を一人で食べていた。


「はぁ……」


(学校は息苦しい。私、どこで間違えたのかしら…… 早く帰ってザイリと遊ぼう。あんなに人と話したの久しぶり。人じゃなくて悪魔だった)


「ふふふふふ」


 今朝の出来事を思い出し、つい笑ってしまう麦。


 モグモグモグ


 お弁当を食べていると、トイレの個室の外から話し声が聞こえてくる。


「ねぇ、あんた牧野と隣の席でしょ?」


(あっ!? 私のこと話してる)


 食べるのを止めて、息をひそめ聞き耳を立てる麦。


「うん。そうだけど」

「あいつ気持ち悪くない?」

「だよね。いつも下向いてるし。休み時間は寝てるかどこかに消えてるし。早く席替えしてくれないかな」


(私だってそんなこと本当はしたくない……)


「なに言ってんの。私なんて一番前の席だよ。次は圭介くんの隣が良いな」

「それなんだけどさ…… 私も隣が良い」

「えっ!? もしかして、あんたも圭介くんのこと好きなの?」


 圭介くんというのは、同じクラスの加藤圭介のことだ。その爽やかなルックスから、女子からの人気が非情に高い。


(確かに、かっこいい。私は恋愛とは、無縁の人生なんだろうな……)


「うん…… ごめん。なかなか言い出せなくて」

「そうだったんだ。もし、どちらかが圭介くんと付き合っても恨み合いっこなし。友達でいよう」

「そうだね。私達ずっと親友だよね」

「うん」


 話していたクラスメートの二人は、トイレから出ていった。


(わかってないな。ずっと親友なんて難易度マックスだよ。できっこない)


 眉間にしわを寄せて、弁当を見つめる麦。


「はぁ…… 食欲無い……」





 幼い頃から、父親の仕事の関係で、麦は日本中を転々としていた。父親の仕事は、転勤が多いい銀行マンだ。数年に一回は転勤する職業なのだという。だが、それだけでは説明が付かないほど転勤が多いい。どうやら会社でやらかして、何度も飛ばされているらしい。


「麦ちゃん。引っ越ししちゃうの?」

「うん…… お父さんの転勤が決まったの」


 幼い麦はその土地土地で、友達を作った。何度目の転勤なのか麦ははっきりと覚えていない。一年に一度は、必ず引っ越しをしていた。


「行かないで麦ちゃん」

「私も行きたくない」


 友達と涙を流しながらきつく抱きしめあう。


 麦の母は、夫が単身赴任よりも、家族が一緒にいることを選んだ。小さな麦はそれに応じるしかなかった。


「手紙いっぱい書くからね」

「私もいっぱいいっぱい書く」

「離れていても、ずっと親友だからね」

「うん!!」


 短い間だったが、各地で、親友と呼べる友達を作っていった。


 引っ越しを終えて何か月かすると、


「ねぇ。お母さん手紙来た?」

「来てないわよ。郵便受け見てきたら」


 いつも、手紙はぱったりと来なくなる。毎日郵便受けを覗くが、一向に手紙はやってこない。


(まただ。引っ越ししちゃうと、みんな私を忘れちゃう。友達って何なの? 親友だって言ってたのに……)


 何度も手紙が来なくなることを経験すると、麦は次第に孤独へと逃げるようになっていた。





 学校が終わり、自宅の最寄りの駅で降り、改札口を抜けると、


(ザイリだ!?)


 駅前でザイリが歩いている姿を発見する。でも、麦は話しかけなかった。


(もうどこかに行っちゃうのね。やっぱり、みんな私から遠ざかって行く。悪魔だったら違うかもと思ったのに)


「さよなら……」


 いつものことだろうと、ザイリの後ろ姿に別れを告げて、家に帰る。


 ザイリが現れて、雲の切れ間から光が射した様な気持ちでいた。ザイリが去り、消失間が麦を襲う。


「もっとおしゃべりしたかったな……」


 自宅に戻った麦は、


 ボフッ


 自分の部屋のベッドにダイブする。


 ギュウゥゥゥ


 枕を強く抱き寄せると、瞳から涙が静かに溢れてくる。


「ダメなんだ私。友達が出来てもすぐ忘れられちゃう…… それなら、ずっと一人でいたほうが良い」


 ふと目をやると、テーブルに無造作に紙が置かれているのに気が付いた。


 そこには走り書きで、


『ちょっと出かける 夕飯用意しとけよ ザイリ』


 と書かれていた。


「ザイリが戻って来る!!」


 ピョンピョン


 麦は涙を拭い、うれしくなり飛び跳ね、部屋中を走り回る。


 でも、太陽が沈みはじめ夕日が町を染めだしても、ザイリは帰って来ない。


(なにかあったのかしら。やっぱり、帰って来ないのよ。私からみんな離れて行く。ううん。ザイリは違う。探しに行かなきゃ)


 ザイリの帰りを待てない麦は、気が付くと家から飛び出していた。ザイリがいた駅前のほうへ行き、あっちこっち探したが、ザイリの姿はどこにもない。気が付くと、すっかり夜になっていた。


(どこにもいない。行き違いで、家に帰ったのかしら。きっとそうだ。そうだよね?)


 家に帰る途中、ビルの工事現場を通り過ぎようとしたそのとき、


「うわあああああ」


 上からかすかに叫び声が、聞こえた。


(今のザイリの声だったような? 気のせい?)


 工事現場の入り口まで行ってみると、


「これは!?」


 ザイリが着ていた服の切れ端が入口の隙間に引っかかっていた。


(ザイリの服? この中にいるの?)


 昼間の工事現場とは違い。作業員がいない夜の静まり返った工事現場は真っ暗だ。


(どうしよう。聞こえた気がする。気のせいかもしれない。ザイリは、もう家に帰っているかもしれない。でも…… 難しく考えちゃダメ。確かに聞こえた)


 意を決して、塀の隙間から侵入し、月明りを頼りに、ビクビクしながら、麦はビルの上を目指す。





 ビルの建設途中の最上階。まだ天井が無く、夜空にはまんまるの満月が光り輝く。


「ザイリ!! もう逃げ場は無いぞ!! 思い出したか俺の名前を!!」

「いやぁ…… 誰だっけ?」


 ザイリは、過去に恨みを買った悪魔に見つかり襲われていた。当の本人は、恨みを買ったことなど覚えていない。


「この野郎!!」


 バコン!!


「うぐっ」


 不用意な発言に怒りを買い、お腹を強く殴られうずくまるザイリ。力の差は歴然だ。


「そんな小さな体になっちゃって、弱くなったな。最初わかんなかったぜ。忘れちまったのか? 俺の家を燃やしたり、コンクリートで生き埋めにしようとしたり、花火にくくりつけて打ち上げられたり…… 思い出すだけでムカムカしてきたぜ」


(まずいな…… この体で攻撃を受けていたら、これ以上もたない。目の前がかすんできやがった)


 飛ぼうとする意識を、


 ブンブン


 首を振って戻すザイリ。


「おい!! 聞いてんのか? まだまだお返しが足りないんだよ!! もう終わりか?」

「ちょっと待ってくれ!!」

「うん? どうした? もう命乞いか?」

「それは俺様なのか? たしかに、そんな遊びしたけどよ。おまえの顔覚えて無いんだわ」

「ふざけんな!! 遊びだと!! こっちは死にかけてんだぞ!!」

「悪かった悪かった。今度、キンキンに冷えたビールおごるからさ。そうだ!! 思い出したよおまえの名前。チョビ田くんだろ?」

「そうそう。僕、チョビ・チョビ田です。って誰がチョビ・チョビ田じゃ!! ぶち殺す!!」


 チョビ田(仮)がザイリの胸ぐらを掴み、拳を上げる。


(いやいや。チョビ一つ多いいんだけど。こんな雑魚にとどめを刺されるとは……)


「待ちなさい!! 弱い者いじめして楽しい!! はぁ、はぁ、はぁ……」


(やっぱり、ザイリの声だったんだ。良かったザイリは、私から離れていこうしたんじゃない)


 そこへ、麦が最上階まで登ってきた。


 チョビ田(仮)のザイリを殴ろうとしていた手が止まる。


「誰だ。この人間は? こんな弱そうな小娘と付き合ってんのか!? まさか、悪魔と人間が恋に落ちるとはな。ぷぷぷぷ」

「なに言ってんだチョビ田!! 付き合ってないわ!!」


 チョビ田(仮)の手を振りほどくと、ザイリは一生懸命弁明する。


「こんなド直球ブスと付き合えるはずが無いだろう!! これは俺様の人間奴隷一号だ!!」


 ザイリの言葉を聞いた麦は、


「はあああああ!! 誰がド直球ブスよ!! 私はドストライク美人よ!!」


 怒った麦は、ザイリに詰め寄る。ザイリも、負けじと麦に詰め寄る。


「逆にね。逆に考えちゃったのね。その顔で。くくくくく」


 パコオオオオン!!


 ザイリの頭を、思い切り平手で叩く麦。


「いたああああ!! やったな!! 警察呼ぶぞコラ!! 誰かここにド直球ブス犯罪者がいます。助けてくださーい」

「あぁ!! 悪魔が、どこでそんなの覚えたんだ!!」

「おまえが学校行ってる間、暇だからテレビで覚えたんだろうが!! 俺様は、適応能力が高いからな。すぐ理解したぜ」

「へー。それはそれは、頑張ったでちゅね。子供は物覚えが早いからね」

「子供じゃねぇ!! 俺様は大悪魔ザイリ様だ!!」

「いないいないばあっ!!」

「このクソアマ!!」


 ザイリと麦は、チョビ田(仮)を忘れて、取っ組み合いの喧嘩をし始めてしまった。


「あの…… 俺を忘れてない? 喧嘩はやめようね」


 チョビ田(仮)が二人に割って入ろうとするが、


「チョビ田は黙っとけ!!」

「チョビ田くんは黙ってて!!」


 二人の物凄い気迫に押され、


「はい……」


 一歩後ろに後退し、遠巻きに麦とザイリを見る。


(もうちょっと待ってからにするか。ヒートアップしてんなこいつら。なんなんだ。仲が悪いのか? 仲が良いのか? いやいや。なんで待ってんだ。そもそも、俺が主導権握ってんだよな)


 プッチン


 冷静に考えてみたチョビ田(仮)だったが、


「こらあああああ!! おめぇら!! もう、堪忍袋の緒が切れたぜ!!」


 蚊帳の外に追いやられたチョビ田(仮)がブチギレる。


 チョビ田(仮)が力強く腕を振ると、


 ブワアアアアア!!


 突風が巻き起こり、口論している二人を襲う。


「うわああああ」

「きゃああああ」


 吹き飛ばされるザイリと麦。吹き飛ばされた方向は、建設中で壁は無い。ビルの外まで吹き飛ばされる二人。


 パシ


 麦は間一髪、建設中のビルの壁に飛び出る鉄骨を右手で掴んだ。そして左手は、ザイリの腕をなんとか掴む。


 プラーン


「ひいいいい!! 女!! 絶対放すなよ!!」

「むりいいいい!! 手がちぎれそう!!」


 もし、麦が手を放したら、二人とも地上へ真っ逆さまだ。


「おうおう。お二人さん助けてあげようか?」


 チョビ田(仮)が二人へと軽い足取りで近づいてくる。


「早く助けてえええ!!」

「バカヤロウ!! チョビ田なんかに助けてもらうな!! 悪魔のプライドが許さねぇ!!」

「なに言ってんのよ。プライドなんか捨てなさいよ。命より大事なものなんてないんだから!!」

「俺様にはあるんだよ!! 命より大事なもんが!! ただ生きてるだけじゃ、死んでるのと同じだ!! 俺は前向いて、好きなことして生きてたいんだよ!!」


 チョビ田(仮)は、踵を返し距離を取ると、工事資材に座り頬杖をつく。


「あっそう。じゃあ、後は勝手に落ちてくれ。ここで俺は、おまえらの最後の断末魔を見学しているとしよう」


 ニタアアア


 思わず笑ってしまうチョビ田(仮)。すでに勝利を確信している。


「女!! おまえの体を俺様によこせ!!」

「嫌よ!!」

「命より大事なものなんてないんだろう!! 俺様と契約しろ!!」

「絶対に嫌!!」

「契約すれば、願いを一つ叶えてやる」

「なにそれ!! こんな状況で考えられない!!」


 麦の力が弱ってきている。掴んでた鉄骨から手が離れそうだ。


 ズズズ……


 少しづつ二人の体が下へ落ちてきてる。


「バカバカバカ!! もっと力を込めろ!! 今一番欲しいものはなんだ? あるんだろう?」

「なんでも良いなら、今一番欲しいものは友達!! 私のことをずっと忘れないでいてくれる一生の友達!!」

「友達ってのはなんだ? 悪魔の俺様にはわからない。他にないのか?」


 ズル


 むぎの手が限界を迎え、手が鉄骨から離れてしまう。


「きゃあ!!」


 ヒュウウウウウウウ


 地面へと真っ逆さまに落ちていく二人。


「もう何でもいい!! 俺様がおまえの友達になってやる!! 俺様がおまえの一生の友達だ!!」


 ボワッ


 二人の繋ぐ手が、黒いオーラに包まれる。


「契約だ!!」


 スウウウウウ……


 麦の体にザイリが溶け込んで行く。麦の体が、


 メキメキメキ


 アスリートの様に引き締まり、牙が生え、爪が伸び、頭から角が生える。


「きたきたきた!! 体中からパワーがみなぎってくるぜ!!」





 建設中のビルの最上階では、


「さよならザイリ。長い間俺を苦しめていたバツだ。なんだかあっけなかったな…… でもよ。ザイリを倒したってことは、明日から悪魔最強は俺だぜ」


 バサッ!!


 最上階に降り立つザイリと融合した麦。


「おい!! チョビ田、やってくれたな!?」

「ななな、なんだその体は!?」


 麦の体から大きな黒いコウモリの様な翼が生え、体は怪物と化している。


「えっ? まさかザイリに体をあげたのか? 契約したのか?」

「悪い子はお仕置きだ!!」

「ちょっと待ってくれ!! あれは、ザイリが助け入らないって言うから。本当は助けるつもりだったんだ」

「うるさい!!」


 バチイイイイイイン


 思いっきりビンタする悪魔化した麦。


「ひゃん!!」


 ビュウウウウウウ…… キラーン


 チョビ田(仮)は吹っ飛ばされ、夜空に消えていった。


 スウウウウウ……


 麦とザイリの体は、二つに戻る。


(あれ? なぜだ? なぜ戻った? もしかして、友達になりたいという契約のせいなのか? 俺様は、確かに女の体をもらったはずなのに)


 麦は、ザイリの横で、


 スヤスヤ


 おだやかな顔で、気持ちよさそうに寝ている。


(この女。変な契約させやがって……)


「起きろ!! こんなところで寝るな!! 帰るぞ!!」


 麦をゆすって起こすザイリ。


「むにゃむにゃ。わかったから。ううううううん」


 麦は、背伸びをして、眠たい目をこすり、寝起きの顔でザイリを見つめ、


 ニコリ


 ザイリに笑いかける。


「な!?」


 そっぽを向き、胸を抑えるザイリ。


(なんなんだ。この湧き出る感情は……)


 ドクンドクン


 ザイルは、胸の奥から沸いてくる感情に戸惑いを隠せなかった。人間と悪魔が友達になる契約は、ザイリをこれから、変化させていくことになるだろう。


「胸が熱い……」

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