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3/6

魔法

「魔法!」

 メイリーの言葉に、思わずテンションが上がる。

 異世界転生といえば、これだよね。

 もしかして、もしかしなくても。チートとか出ちゃうんじゃない……?


「はい。魔法です……というわけで」


 メイリーがごそごそと鞄をあさる。それをドキドキしながら見守っていると、メイリーは鞄から毛糸と編針を取り出した。

 そして、それを私に手渡す。


「さぁ、お嬢様、編み物をしましょう」

「?」


 編み物?

 あれ、魔法のレッスンだって聞かなかったっけ?


 ?????


 私が首を傾げていると、メイリーも不思議そうな顔をしていた。

「気分が上がらないですか?」

「ええと……」


 気分が上がるとか、上がらないとか、そういうことではなくて……。


「メイリー、これは魔法のレッスンなのよね?」

「? はい、そうですよ。……ああ!」


 メイリーは私の質問でようやく合点がいったようで、説明してくれた。

「お嬢様、魔力を編むのと編み物はとても似ているんですよ。だから、魔法のレッスンの最初は、編み物をするんです」

「……なるほど」


 ごくり、と息を呑みこんだ。

 実は、私ことヴァイオレットは、刺繍の先生から「お嬢様は個性を伸ばす方向で行きましょう」と生暖かい目で言われるほど、不器用である。

――魔法、終わった……。


 めちゃくちゃショック!


 落ち込んでしまった気持ちを頬を叩いて、切り替える。


 まずはやってみないとわからないよね。

 刺繍は無理でも、編み物は得意かも!




「では、編み物をしましょうか」

「はい!」


◇◇◇


 ――結論から言うと、編み物も苦手だった。

「お嬢様、よく頑張りましたね」

 メイリーは褒めてくれたけれど、出来上がったのはぼろ雑巾のようなそれだった。

「……ありがとうございます」


 せっかくねぎらいの言葉をかけてくれたというのに、お礼も目を見て言えないほど、私は落ち込んでいた。


「お嬢様」

 そんな私の頭に何か柔らかいものが触れた。

「?」


 俯いていた顔を上げると、メイリーが私の頭に手を置いて、微笑んでいた。

「誰にも、得意不得意はあります。それに、魔法の技術は日々の練習によって、向上します。継続することで、今日出来なくても明日出来るようになることもあります」

 ……継続、かぁ。

「それに、お嬢様は通常の生徒たちよりも早く、魔法に取り組まれています。それだけ、努力できる時間があるということ」

「……そうね」

 確かに、魔法は普通、学園に入ってからならう子供が多い。不器用な私は、人よりも努力が必要だろうし、人よりも時間がかかるだろう。


 でも、努力を続けることができたら、ちゃんと人並みに魔法を使えるようになるかもしれない。


 それにお兄様に殺されないために、手段はできるだけ多い方がいいもの!


「ありがとう、メイリー。これからも頑張るから、どうか、よろしくお願いします」

「はい、もちろん」


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