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過去③

 強引に婚約者にする事も出来るが、リディアに自分を好きになって貰わなければ意味がない。政略ではなく恋愛結婚なのだと、シオンは未だ拘っていた。


 ひとまずリディアを婚約者候補の一人とする事が決まり、週に三日程の妃教育で王宮に通うことが義務付けられた。家柄も申し分なく『真面目風』に見えるリディアを婚約者候補とする事に、異論を唱える者などいない。


 シオンの婚約者候補には、エヴァンス公爵令嬢であるリディアとフェリア。そして国内の高位貴族令嬢、数名が選ばれる事となった。

 後はリディアが自分の婚約者、そして王太子妃となる未来を、少しずつでも想像してくれさえすれば……。




 **


 エヴァンス姉妹がシオンの婚約者候補へと選ばれて半年が経ち、リディアは十四歳になっていた。

 その間もシオンは、エヴァンス邸への定期的な訪れを続けている。


 本日は、事前に知らされる事なく、公爵邸へとシオンがやってきた。

 そんな今回の彼の訪問目的は、リディアが昨日王宮にお妃教育で訪れた際、忘れて帰ってしまったハンカチを届ける事。明日になれば王宮にリディアが来る事が分かっているが、わざわざ家まで届けに来たシオン。そんな彼だが、そのままハンカチを貰っておくか、リディアに会いに行く口実として、ハンカチを渡しに来るか。その二択で一晩悩みまくったのは自分だけの秘密だ。



 リディアは四阿にいると聞き、シオンはそちらに足を運ぶことにした。



 穏やかな木漏れ日に包まれた庭園の一角。一年を通して、出来るだけ長くそこで寛げる事を計算して建てられた四阿に、リディアはいた。

 心地のいい風を受けながら、読書を満喫している最中である。


「熱心にお勉強ですか、お嬢様?」


 そばに控えている侍女に声をかけられたリディアは本から目を離し、顔を上げた。


「まさか、流行りの冒険譚を読んでいるのよ。今からゴブリンやオークと戦う、白熱した場面が展開されるところなの」

「お嬢様はそろそろ、お妃教育での試験が近い筈ですが」


 侍女の苦言に近い一言に対し、特に反省した様子もないリディアは飄々と答える。



「落第点を取らなければそれでいいでしょう。わたしは王太子妃にも、王妃にも興味がないのだから。そこそこの点数さえ取っておけば、何も問題はないはずよ」

「まぁ。不真面目なのを窘めるべきか、野心のなさを感心すべきか、お仕えさせて頂いている身としては悩みどころですわ」


 いくらやる気がないからと、落第点という醜態を晒して家名を傷つけるつもりもなく、かといって目立つつもりもない。

 世の中、何事も程々が一番だ。


 こんな風に思えるのは、彼女は記憶力に自信があり、多方面に卒なくこなせるからだろう。


 一つ問題点を挙げるとするならば、先程の侍女との会話を、シオンにばっちりと聞かれていたという事実。

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