ヒロインさん‥貴女、ずっと王子を待てますか?
ざまぁの話を読み過ぎて、書いてみたくなってしまい、衝動で作りました。
超初心者の文章力皆無の私のお遊びな物語です。
楽しく、暇つぶしにお読み頂けたら幸いです。
「ユリア・フリージア!!お前との婚約を破棄する!!!!」
煌びやかな夜会のホールにて、突然、勇ましい声が響く。
金髪・碧眼の見るからに王子様な男性が、ピンクブロンドでふわふわした綿菓子のような甘い女性の腰に腕を回しながら、ホール前方へ出てきた。
「ここにいる皆様にも是非証人になって頂きたい!
この、たいして美しくもなく、愛らしい言葉1つ言う事すら出来ず、王子の私に指摘ばかりする、こんな女が、王太子となり、未来の王となる私の横で王妃として支えれる筈がない!!」
第1王子であるエリオット王子の突然の発言に、夜会を楽しんでいた貴族達は驚き、言葉も出ない。
「更に、学園の同級生でもある、このジェニー・マリーゴールド嬢に対して、嫌がらせ行為がエスカレートしている!!学友を虐めるなど、淑女として在るまじき行為!!許されぬ!!!」
「わ、、、私、、、本当に怖かった。。ユリア様に呼び出され、悪口ばかり毎日言われて。お気に入りのドレスは破れて、中庭の池に捨てられてたり。。
一昨日は、階段の上から、急に突き飛ばされて。。。
いくら、エリオット様の事が好きで、私に嫉妬してるからといって、、、これは酷過ぎます!!!!」
ぐすんぐすんと泣きながら、ピンクブロンドが揺れている。その髪を愛おしそうに優しく撫でながら、エリオット王子は更に言う。
「もう、大丈夫だ。ジェニー!この悪女は今日を持って、断罪し、私達の目の前から消える!
そして、ジェニーと私は婚約する!!!!!」
「………。…理由は理解しました。しかし、大変申し訳ございませんが、1つだけ、そちらのジェニー様にご質問させて頂いても宜しいでしょうか?」
俯きながらも、ようやくユリアが2人に対して言葉を発した。
「なんだ、自分が今までしてきた悪事をようやく理解したか!良いだろう!!1つだけなら、質問を許す!」
ふふんっ!と自分が上位なのだと、自慢げにエリオット王子は言った。
「…ありがとうございます。……では、ジェニー様、貴女はエリオット王子との婚約を10年後まで待てますか?」
「えぇっっっ?!?!?!」
「はぁぁっっ?!?!?!」
ジェニー嬢とエリオット王子は同時に仰天した。
「何をほざいている!!お前との婚約破棄の手続きさえ整えば、すぐにこの愛しいジェニーとの婚約をするに決まっているではないか!!
何が10年だっっ!!!…っ!ま、まさか、お前!!婚約破棄を引き延ばすつもりか!!」
「そっ、そんなっ…!!いくら何でもヒドイです!ユリア様…!!!私達はこんなにも愛し合っているのに。。」
「あぁ……ジェニー…っっ!!!」
くらくらと、倒れるジェニー嬢を支えながら、エリオット王子は嫌悪感丸出しの目つきでこちらを睨む。
「………。お2人はご存知ではないのですか?王太子となられる王子の婚約の規約を。。。」
「…!!き、規約だとっっ!!なっ!!!そんなもの知らんぞ!!?」
「き、、きやく、、?!な、何ソレ??食べれるの??」
ジェニー嬢は、よく分からない事を言っている。多分、脳内がお花畑だからだろう……。
「……でしょうね。…では、恐縮ですが、私からご説明させて頂きます。」
ユリアはまだ俯き、視線を下げたまま、発言する。
「この王国、ガーデニア王国は、立国されてから今まで王となる王太子には、20人の婚約者が選定され、候補者として挙げられております。」
「「へぇっっっ?!?!?!」」
バカップル2人は、思わぬ事を聞いて、同時に変な声が出る。
「私、ユリアは、第1婚約者でございます。」
「「はぁっ????だいいちっ??!」」
2人はまだ、よくわかっていない。
「歴代の王太子は、婚約者を決定するにも時間を要します。より良い王妃を迎える為、王太子との相性を見極めるのです。
それは、愛などの感情だけではなく、器量や発言、リーダーシップ力や観察力、、、様々な面を見た上で決めなくてはなりません。」
「…!…それはそうだ!しかし、ジェニーは優しさに溢れている!国母にぴったりだ!!!」
「……エリオット様…(きゅんきゅん♡)」
また、何か甘い雰囲気になってるけど、大丈夫かな?この2人。
「それから、こちらが1番重要なのですが…。
歴代の王太子は、、、、、。飽き性なのです!!!
も、、申し訳ございませんっ!!
王族に対して、不敬とは存じますが…。ですが、これは長年の王家の法律として存在する、王太子の心移りに対しての対策なのでございます。」
「………あ、飽き性。」
「た、、、たいさく、、??」
「ご存知ではないかもしれませんが、王太子となりますと、やはり政治的な事も強くなり、貴族の親であれば皆、娘を嫁に!!!と、勧めるに決まっております。そうなりましたら、王太子は、気分が上がり、貴族のお嬢様方に、甘い言葉を所構わず言いまわり、お嬢様方は真に受け、自分が未来の王妃になれるのでは?と皆、期待を膨らませるのです。」
夜会のホールは、ざわざわしつつも、この内容を理解しているようだ。
「ぐふっっ!!!汗」
ピンクブロンドのおバカちゃんには図星だったようだ。
「なので、このような事でトラブルが起こらぬよう、婚約者に順位を付けたのです。」
「「ええ゛っっ?!?!順位??」」
「はい。私、ユリアを筆頭に、公爵、侯爵、伯爵の家より、考慮された上で20名が現在エリオット王子の婚約者として列を成しております。
ちなみに、第20番目はリリー伯爵令嬢、4歳でございます。」
「「よ、4歳??!!」」
「ええ、4歳でございます。
王太子と婚約し、3年婚約が継続されれば、以下の婚約者達は破談となります。
ただし、婚約者との婚約破棄後、新しい方との婚約は、最短で6ヶ月空けなくてはなりません。
それは、2人の問題ではなく、王家の血筋の問題です。
万が一、婚約者が身籠もっているにも関わらず、婚約破棄してしまえば、他の貴族の家に王家の血が混じってしまう。
それを防ぐ為です。
なので、エリオット様がこれからお嬢様方、皆の婚約を破棄されるなら、最短で約10年となります。1日で破棄したとしても、半年は婚約出来ないのと、私を除いて後、第2位〜第20位まで計19名の婚約者が待機しておりますので、婚約と破棄の書類提出・承認期間も踏まえると、10年以上かかるかもしれませんね。」
「それだけ、長期に渡っての王妃の選定の婚約者選びに月日を要する為に、後半の順位の令嬢は、まだ幼女の令嬢を選定しております。」
「「よ、ようじょっ!!」」
もう、ラブラブだった熱々の2人はなく、青ざめた表情となっている。どうやら、少しは理解したようだ。
「今回、私は、其方のジェニー令嬢を咎めたという理由で婚約破棄されますが、第2のアリーヌ公爵令嬢は、そうもいきませんよ。
アリーヌ公爵令嬢は、普段よりほぼ姿を見せないインドア令嬢ですから。そもそも会うのが難しいので、婚約破棄も時間がかかるかもしれませんねーーー。」
「「!!!!!」」
ジェニー様はもう何が何だかわからないようで、口を金魚のようにぱくぱくしている。
エリオット王子は、これから超!長期に渡る婚約と婚約破棄を考えてなのか?ぐったりしている。
「まぁ、そもそも、私はこの1年隣国に留学しておりましたので、ジェニー様に悪口を毎日言ったり、ドレスを破いて池に捨てたり、階段から突き落としたり出来ないので、エリオット王子の仰る断罪は出来ません。」
「そして、これから後、19名のご令嬢に、同じ手は通用しません。」
「それでも、ジェニー様は10年待ちますか?」
「…………ま、待てませ…ん。……待ちません!!」
「え?へっ?!ジェニー??な、何故?!?!」
エリオット王子は狼狽る。
「当たり前じゃない!10年も待ってたら、私、28歳になるじゃない!!もう行き遅れよ!しかも、待ってる途中で、婚約者の1人と上手くいったら、私、待ち損じゃない!!!そんな、博打出来ない!!ムリ!!」
「私達の真実の愛があれば乗り越えていけるのでは…なかったのか………?!」
ラブラブだった2人の甘い雰囲気は無くなり、終焉を迎えたような暗闇の中、2人は無言で佇んでいた。
「それでは私は、お父様に婚約破棄の件を伝えなくてはなりませんので。…あっ!もう私も本来の姿に戻っても宜しいですよね?」
ユリアがぱちんっと指を鳴らすと、ユリアのくすみ、傷んだシルバーの髪は輝くような、美しい髪となり、かけていた瓶底メガネは消え去り、輝くような深いエメラルドグリーンの大きな潤んだ瞳が見えた。
『『『う、美し過ぎる!!!女神だ!!』』』
エリオット王子を含む、夜会全ての男性が息を呑みながらそう思った。
「未来の王妃選定に、惑わすような容姿は不要との現王妃の意向で、魔法で姿を変えてましたの。
それでは、皆様ご機嫌よう。」
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その後、エリオット王子は王太子となれず、廃嫡となって、田舎の僻地で平民と共に生活している。
ご想像にお任せするが、結局のところ、エリオット王子はまた『運命の愛する女性』を見つけたようで、その繰り返しを、ウンザリしたように傍観していた、現王と王妃が、このままでは待機している婚約者のご令嬢達に申し訳ない!!と、早々に、王子を廃嫡した。
この展開は、かなり早かったが、それでもジェニー嬢は待つ事は出来なかったようだ。
真実の愛は、幻のように消えてしまった。
婚約破棄の物語でも、断罪してざまぁではなく、実はまだまだ婚約者が待機してる!と言う、新しいざまぁを書いてみたくて、構想しました。
第1から婚約破棄すると第2の婚約者に移行する。
それが、第20まで用意されていたという、ある意味恐ろしい婚約でした(笑)
至らない点あるかと思いますが、軽く読んで頂ければと思います。
7月25日.9月24日修正:誤字報告ありがとうございます。