梔梨(くちなし)くんの思いやりサポート
部下に嫌われている。
それはもうガッツリ。
「梔梨を私につけるのやめません?」
「上司に口答えするな」
麗らかな午後、洗練されたオフィスフロアでこれまたガッツリとしたパワハラを受ける。鋭く睨まれたので口答えせず呻き、上司の組んだ過密スケジュールのせいで行けなかったジンギスカンフェスの遺恨をのせ羊の泣き真似をしていると「何が不満なんだ」と上司の態度が軟化した。パワハラへの対抗手段は法に頼るか人間をやめること。
私は後者を選んでいる。
「だって私と梔梨との相性最悪じゃないですか? 私もっと馬鹿みてえな……なんていうんだろうな、馬鹿みてえな男と相性がいいでしょうし。ミスったらすいませんでしたパンツ脱ぎます‼ って言うくらいの馬鹿みてえな男がいいんですよ。梔梨は正気の人間の下につくほうが効率良いと思うんですよ」
梔梨というのは私の部下だ。
性別は男。でも別に男だから嫌というわけじゃない。同性部下だとトイレのタイミングが重なったときに「相手に気を使わせちゃうかな」とシンキングタイムが発生するけど、異性だとそれがないのがデカいから。
でも梔梨はそういう利点を差し置いても大層やりづらかった。だから放牧したい。
「飲み会で桐生も言ってただろ、誤解なんじゃないのか?」
「何で知ってるんですかそれ。部下全員に盗聴器仕掛けてるんですか?」
「そんなわけないだろお前は俺を何だと思ってるんだ」
「だって全てを疑うのがこの仕事じゃないですか」
ここは防犯セキュリティの会社だ。そして最近はSNS運用に関する防犯のサービスも始めた。現実のみならずネットすら疑う仕事になってしまった。
「確かに全てを疑う仕事だが、俺はお前が信用できないんだよ」
上司が直球で酷いことを言う。まるで横領でもしたかのような言い草だ。私は何もしてない。新人が入るたびに「あのおじちゃん前職パワハラで懲戒免職になってるんだよ」と嘘をつくだけだ。
「そもそもお前、ずっと変えろ変えろ言ってるけど梔梨に好き嫌いなんかないだろ、人当たりもいいし」
どこがじゃ。
口答えしたくなるけど言わない。注意されたからじゃなくこうして信じてもらえないから。
なぜなら私を嫌う部下こと梔梨は、何でか皆には愛想が良かった。
最初から無口とか喋るの苦手ならいい。具合が悪いとか今は精神的にあれこれ無い人間のほうが少ないから、事情があるならいいけど、私だけポンポイントでされるとなると、純粋に苛立ちが募る。
「だって見ててくださいよ。私今、資料渡してくるんで」
上司に伝えてから私はいったん自分のデスクに戻り梔梨に声をかける。
「梔梨、プリントだで」
「あっす」
死んだような顔の梔梨がこちらに視線を向けずプリントを受け取る。
受け取り方も普通のキャッチじゃなく親指と人差し指の詰めの先の先で汚いものをつまむようにだ。私はそのまま上司のもとへ戻っていく。
「見てくださいよあの視線の合わなさ。あっすですよあっす。どうもですらない。びっくりする。あっす怪獣あっすドンじゃないですかあれ」
「だで、がいけないだろ。プリントだでが悪い」
「だでって言ったって仮にも梔梨にとって私は上司ですよ? 受け止めてくれたっていいじゃないですか。だでをいう上司を」
「上司はだでなんか言わないだろ。というかお前はプリントの受け取り方が気に入らないからペア変えたいのか?」
「それだけじゃないんですよ。積もり積もってなんですって」
私はしぶしぶ梔梨との来歴を思い返す。
最初の頃はマシだった。ただ段々そっけなくなっていった。愛想レベルならば初対面は100点だったと思う。今はもうマイナスレベルだ。
元々飲み会や食事に誘うと「今日は用事が」「仕事残ってるんで」と断る人間だったけど三年目あたりで「なんでですか」に変わった。「一緒に行きたいから」と言えば「意味が分からない」で終わった。
「あー行かないタイプかぁ」と思っていたけど梔梨は別の管轄の人間と普通に食事会に行っていた。それだけなら「あー仲いい人と行きたいタイプかぁ」で済むけど、その食事会には私も誘われてたっぽいのに何でか梔梨が断っており私は強制欠席だった。
「……なので変えてくださいよ」
「それお前、女お前しかいない会だろ。誘ったらお前は行くだろうし良くないと思ったんじゃないか?」
「なんで良くないんですか」
「だってほら……女性で楽しくしてる飲み会に男混ざったら嫌だろ」
「その嫌は常識によるものですか。百合に挟まる男が嫌いだからですか。それとも娘がいる父親として、年下の女が男に囲まれるともしも自分の娘が……って不安になるからですか?」
「全部だよ! 全部⁉」
上司は「後半二つ全部プライバシーだからな」と注意した後「何があるか分からないし女子トイレでお前が倒れてても分からないから心配だったんだろ」と締める。
だったらどれほど良かっただろう。それだったら好かれてる感がある。「心配してくれたの?」と喜びのあまり抱き着いて振り回してそのまま放り投げてしまうかもしれない。
でも現実は違う。
そんな優しい世界はない。あいつは私が風邪を引いたときにお大事にも言わないし、大きめの怪我をした報告をした翌週に「先週何で休んだんですか?」とヘラヘラしながら聞いてくる男だ。同じ目に合わせてやろうかと思った。
「というかお前は何か嫌われてないと都合が悪いことでもあるのか」
上司がこちらを見据えてくる。上司は座っているから私が見下ろす体勢だけど、底知れぬ圧を感じ私は視線をそらした。
「おい」
「……純粋に怖くないですか?」
「何がだ」
「嫌われてる、相手が嫌がってるかもしれない視点を外して人間を相手にするの。相手は部下でNOが言えない立場で……」
「NO言ってるだろ飯行かないなら」
「それが怖いんじゃないですか、これはNOじゃなかったんだからこれもNOだろという慢心、全ての可能性を視野に入れて動くのがこの仕事じゃないですか」
「ならお前のこと上司として尊敬してた場合は、傷つくんじゃないか」
「私に尊敬するところなんてありますか⁉ 私に⁉」
「お前自分で言うなよ……なんかあるだろ」
「なんかあります?」
「骨密度が高いみたいなこと言ってなかったっけ」
上司は長考の末、絞り出すように言う。無言で睨むと上司は首をひねった。
「あんまり俺から言いたくないが好き避けとかなんじゃないか? ああいう年頃多いだろ」
「私のどこを好きになるって言うんですか」
上司に問うと「骨密度がしっかりしてるところ」と続けてきた。
「とにかくさっさとあいつ私から外して、もっとちゃんとしてる奴につけくださいよ。私は馬鹿みてえな男でいいんで。やる気さえあればいい」
「おまえそれで俺が選んだら、こいつパンツ脱ぐ男ですって決めるようなもんだぞ。自分の発言忘れてんのか」
「すいません自分が何言ったかの記憶あんまないんですよねー」
私は社内の男を見渡す。なぜかみんな私から視線を逸らした。
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人間との会話が面倒くさい。
でも人嫌いにカテゴライズされると窮屈になるし一人にしておいてほしい時があるだけで独りにされたいわけではない。
目の前の人間が悲しんでいれば悲しくなるし人並みに怒りだって持つ。絶対出さないけど。バラエティで笑うし映画ではジンとする。でも一人が合っていて独りがキツい。埋まらない何かがある。
かといって何かのレクリエーションに誘われたら素直に行きたいとは言えないし楽しんでいるみんなを眺めるのは好きだけどそこに自分が参加していると思うと綺麗に見えていた場が一気に濁り、話しかけられでもしたら一気に自分の存在が邪魔で迷惑な気がして嫌になる。会話だって盛り上げたくて喋っているのか、自分が恥をかきたくないから喋っているのか分からなくなる。
とりあえず相手を傷つけないよう明るい調子に合わせて盛り上がった後、自分はイタかったんじゃないかキモかったんじゃないか鬱々としてくるし、多分人との会話そのものに疲れる。でも無視はできない。傷つけたくないし嫌われたくないから。愛想笑いの仮面が外せない。
自分の持つこの感覚が分からない人は、たぶん一生分からない。それは自分でもよく分かっているので、求めない。理解を求めることはおこがましい気もするし。
そもそも僕のこれは欠陥でしかないから。
自分だって上手く説明できないし、仮に他人が僕を予想しアレコレ当てはめたところで、多分それは違うと否定の繰り返しになる。最終的に自分は色々と異物なんだろうなと諦めだけが鮮やかになってそんな僕を理解してくれる理解者が欲しいなと思うけどそもそも僕を理解したいと思う人間もいないし、理解されたところでじゃあ僕に何が返せるかと問われても何も返せないので困る。
僕の心情を正確に把握できる人間が存在したならば、天才だけどややこしいみたいな推理ドラマや映画映えしそうな人間の理解者になれそうだし。
いい意味で普通じゃない、にもなれない。中途半端平凡。
それが僕だということは十分に理解して、きちんと社会に順応できるよう補正に努めているので、どうか何も言わず見ないふりをしていてほしい。
そう思いながら生きているけどまぁつらい。
日々のものごとに耐えられないと思うことはあれど絶望を自称するには少し軽い。
こんなことでクヨクヨするなと責められそうだなとか馬鹿にされるのかなと思っているとより一層鬱々として、苦しい。
突然なにかを放り投げたりめちゃくちゃなことを言いたくなるけど未来をあれこれ考えるのが常だから、第三者から見た自分の姿を映画顔負けの多方面アングルで鮮明に4K出力可能だ、頭の中では。
こんなこと考えてもキリがない。
自己啓発本を呼んで折り合いをつけては何かしらの再読でダメージを受ける僕の人生にイレギュラーが発生した。
「だって私と梔梨との相性最悪じゃないですか? 私もっと馬鹿みてえな……なんていうんだろうな、馬鹿みてえな男と相性がいいでしょうし梔梨は正気の人間の下につくほうが効率良いと思うんですよ」
ドスッ
たぶん、漫画とかの世界なら音がしていただろう。
オフィス内でせっせと仕事に励んでいると、僕のイレギュラーこと形美茶塗さんの発言により週の半ばで摩耗していた心に追い打ちがかけられた。
聞いていることがバレないよう手元に視線を固定しながら、馬鹿みてえな男ってなんだよ、と心の中で突っ込む。
なんだよ馬鹿みてえな男って。
それに僕を正気の人間につかせようとするところもモヤモヤする。まるで形美さんが形美さん自身を正気じゃないと思っているみたいで。
まぁ実際、形美さんは正気……じゃないというか変な人だけど。
「お前が信用できないってことだよ。お前、ずっと変えろ変えろ言ってるけど梔梨に好き嫌いなんかないだろ、人当たりもいいし」
上司が形美さんを説得している。形美さんというのは僕の上司だ。
同時に僕に好き嫌いがないと勝手に決めつけてきた。
まぁ、こっちもモヤモヤするけど形美さんの主張とは度合いが違う。上司の決めつけのほうはよくあることだ。好き嫌いなさそうとか、あと誉め言葉で優しそうとか、よく言われる。気が利くとかも。人に合わせるのが得意とか柔軟性があるとか。
正直、合わせないと問題が出るからそうやってるにしかすぎないので、柔軟性前提で話をされるともやもやする。
耐えてスムーズに進むなら耐えたほうがいいしそもそも高校の面接とか就活の面接とか社会にあるもの全部『人に合わせられる使い勝手のいい人間』を求めてる。
その後に今更「自分らしさ」とか「個性」とか「飾らずありのまま」なんて言われたってキツい。
生存戦略でなんとか尖ってきたものを丸めたあと、やっぱり出してとか。
なのでどうしても仕事で意見を求められても、自分の意見じゃなく相手に求められてそうな自分の意見を話す癖なんか取れないしそもそも自分の気持ちについてよく分からない。
将来が不安とか誰かの期待を裏切ったらどうしようとか三か月前にした自分の発言よくなかったなとかそういうことしかハッキリしてない。
「梔梨、プリントだで」
沈黙を貫いていると形美さんが実験台感覚でプリントを渡してきた。見世物にしないでほしいけど一応必要な資料なので礼だけ伝える。なんだよだでって。変なゆるキャラみたいな。面白い。会社でだでなんか言ってるの形美さんしかいなそう。笑いそうなのを堪え、表情を消す。
「あっす」
「どーも」
形美さんは僕に背を向け上司のもとへ戻っていくと「見てくださいよあの視線の合わなさ。あっすですよあっす。どうもですらない。びっくりする」とクレームを始めた。挙句の果てには僕をあっす怪獣あっすドンなどとあだ名をつけたかと思いきや「なんですかあの顔。死ねくらい思っててもおかしくないっすよ」と続けた。
ありがとうございます──ってちゃんと言った。死ねなんて思ってない。
ただ、短くなってしまっただけだ。そもそも形美さんが今注目を集めているせいでこれでゆっくり言うとわざとらしいし。
っていうかなんだよあっす怪獣あっすドンって。
僕は心の中ではすごく感謝してる。今回渡してくれたものは欲しい情報が入ってるだけでなく形美さんの手で見やすく整理されていたから。
ただちょっと、加減を間違えただけ。むしろこの加減を間違えた感に気づいてほしい。すごく感謝してるあまりこうなってることに気付いてほしい。気付いてるかもしれない。いや気付かないでほしい。恥ずかしいから。
でも本当に、どうなんだろうなあの人。
形美さんはややこしい。そもそも名前からしてややこしい。下の名前呼んでるみたいな名字だし。
それに外勤は主に車で移動するので、形美さんと車内で二人きりになることが度々ある。すると形美さんは何の脈絡もなく、「同棲とかあるじゃん。二人で住むとしたらさ、やっぱ狭いほうがいいと思うんだよね。理由なく、近くにいられるし」みたいなことを言ったりする。
他の人だったらサイコパス診断の回答みたい、なんてツッコめるけど、形美さんの場合、唐突に変なことを言うので適当な返事しかできない。傷つけたくはないから。
あと、「梔梨孤独死怖いよー結婚してよー」とか言うし。反応に困ることしか言わない。
そういうの誰にでも言う人なのかなと思って流したけど、実際上司にも言っていて余計モヤモヤしてたし。
僕は仕事で使うようなフリをして、スマホを開く。
形美さんは写真掲載のSNSをしている。アカウントはガバガバだった。載せているのは自撮りじゃなくて形美さんの読んだ本。形美さんはあんな感じのわりにすごい暗い本を好む。最後全員殺しましたみたいな復讐小説とか上司のパワハラがきつすぎてやっぱり全員殺しましたとかバラバラ猟奇殺人とか。ここまでくると何か心を病んでいる人ではと思うけど、唐突にグルメものを読んで翌日にそれに出てきた食べ物を撮ったりして、本当によく分からない。
「その嫌は常識によるものですか。百合に挟まる男が嫌いだからですか。それとも娘がいる父親として、年下の女が男に囲まれるともしも自分の娘が……って不安になるからですか?」
「全部だよ! 全部⁉」
形美さんと上司が楽しそうに話をしている。やっぱり僕が返す必要ないじゃん、とより一層もやもやが増す。こういうのが面倒くさいからリモートワークで済む職場にいるはずなのに、形美さんのやりたがる仕事は全部出社が必要なもので辛い。
「っていうかお前なんで百合嫌い知ってんだよ俺の」
「だって呟き見たもん。フォローしてるもん」
「お前だってオシャレSNSしかしてなかっただろ」
「全然いいね来ないしやめちゃおうかなと思って~見てる人もいないので新天地に」
形美さんは平気で言う。形美さんの閲覧数はたいてい2とか3だ。
でもいるし。僕。僕いるもん。
「いいね来ないってどれくらいだよ」
「0とか普通にあるっすよ」
「知り合いと繋がってないのか」
「はい。だからいつでもスパっと切れる」
スパッ
さっき、私と梔梨との相性最悪じゃないですか? なんて言っていた時とは別の痛みが襲う。スパッと切れるってなんだよ、と心の中で突っ込む。
やっぱり本人には言わない。見てますよとか言うのはストーカーっぽいし、形美さんのことだから絡んできそうで嫌だけど、僕だって見てる。
だからそんな言わなくたっていいじゃんと思う。
そもそも飲み会だって形美さん的に絶対危ない面々というか相性悪そうだから僕が代わりに調整したのになんなんだよ。
なんで気付いてくれないの。僕を試してる?
少しは察してくれたらいいのに。いや普通に僕が言えばよかっただけか。
いや、薄々察してるだろ。
僕は形美さんの最新の投稿をスクショする。
消すらしいので一応保存しておかないと、形美さんはややこしいのでこういう投稿も合わせて確認しないと仕事で合わせられない。
っていうかあの上司、SNSやってたのか。
僕は形美さんの写真投稿アカウントから形美さんの呟きアカウントに飛びフォロー欄を探す。百合好きアカウントはすぐに見つかった。形美さんは写真投稿SNSでは小説家を、呟きサイトではよく分からないゲームのアカウントとゲーム実況者のアカウントとフォローを分けているので、よく分からない百合好きを探し当てればいい。
というか昨日も見ていたので今日フォロー欄に突然現れたアカウントを見ればいいだけだ。
やっぱりいた。
車のアイコンにプロフィールには車種、スラッシュ、ずいぶん前のアニメのタイトルと、最近やってるゲームの記述。最新ポストには女同士の仲良しイラスト。
僕はすぐに上司のアカウントの縦に3つの点が並ぶ「三」部分をクリックし、スパムの疑いがあると通報した。手持ちのアカウントを切り替えてさらに通報を十セット繰り返す。ソーシャルゲームの水着ガチャで好きなキャラが出なかった嘆きらしい「これで出なかったら運営を許すことはないかもしれない」に対し、脅迫の疑いがあると付け足した。
ちゃんとこういうことしてるのに、形美さんはなんであんななんだろう。
僕に何を求めてるんだろう。僕はちゃんと仕事してるし、これ以上何をしろと言うんだ。家にでも押し入ろとかそういう話してるのだろうか。結婚しろとかじゃないよな。形美さん結婚したらややこしそうだし嫌だ。いや、僕が相手を選ぶ立場なんかじゃないけど。
僕は形美さんの呟きをさえぎる。
『好きなタイプなさ過ぎて好きになった人がタイプって言いたいけど芸能人ぶってると思われそうで言いづらい』
馬鹿みてえな男好きじゃないじゃん。
後半自意識過剰だろ。
嘘つき。
こうやって僕は丁寧に形美さんの記録を確認して、仕事に活用してる。
だというのに「とにかくさっさとあいつ私から外して、もっとちゃんとしてる奴につけくださいよ。私は馬鹿みてえな男でいいんで。やる気さえあればいい」なんて言うのは傲慢ではないだろうか。
そもそも「候補いっぱいいんじゃん」なんて言ってたけど、絶対無理だろ。形美さんわがままだし。気分屋だし。そもそも僕、愛想いいほうじゃないし。
嫌ってないし。言わないけど。嫌いじゃないですって言ったら「じゃあ好き?」とか聞いてきそうだから。
僕はため息をつきながら、形美さんをフォロワーを精査し、スパムアカウントとして通報していった。




