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天上尊の願い



宣伝します。攻略対象異常コミックス7巻が0602発売です。殺し殺され関係のある百合に興味のある方はぜひ。

 御上望(おがみのぞむ)が姿を消した。というか連絡がつかなくなった。連絡がつかないとはいえ、色々指定のもと「あとはお任せします」と言葉が添えてあったので、仕事に滞りはない。ただ、後々面倒になっても困るので興信所に向かうと、御上望の姿はなかった。


 この忙しい時期に勘弁してくれと思っていると、興信所の所長である鹿治道長(しかじみちなが)──御上望の上司に声をかけられ、なんでか一緒に喫茶店に入ることになった。スマホはずっと振動し、絶え間なく作家や別部署、印刷所からの連絡が届いている。御上望からの連絡だけがない。


 こんな時間はないのに、と思いながら断ることも出来ず、一緒にお茶をすることにした。


「でも、珍しいね、天上(あまがみ)さんが興信所に来るなんて」

「まぁ、連絡こないんで」

「仕事止まってるの?」

「いや、何も」


 御上は最後に連絡がきたとき、メールですべての進行指示をまとめ、他部署の進行が一切止まらない状態で連絡を立ってきたので、正直一か月以上停止しても問題がない。

 

「今回そんなひどいの?」


 黙っていると、鹿治さんが問いかけてくる。


「今回っていうか、いつもっていうか、一方的にこう、御上さんが……なんか、周期的なんですよね。なにか気に入らなくて怒るっていう」


 事の発端は……良く分からない。突然御上が暴れ出した。最近ミスが続いていたからどれかしらが気に入らず積もり積もってなのだろう。よくあることだった。周期的に起きる発作のようなもの。四月五月は新入社員が入り体制が変わり、なおかつ大型連休も入る為、ただでさえ業務が圧迫される。そのうえで御上望はこだわりが強く、通常の作家が気にしないようなことまで気にして、確認も多いし修正も多い。円滑に回すだけで手一杯だというのに、感情的な領域まで求めてくる。正直なところ勘弁してほしかった。


「何が気に入らないんだろ」

「分からないです。っていうか、いつも怒ってる感じ、ですよね? 一生懸命とも言えますけど、そう言う人というか」

「うーん。怒るってことは天上さんへの期待の裏返しじゃない? 御上くん、天上さんのことかってるから」

「……いや……でも、……重い……ですよね」

「重い?」


 鹿治さんが首をかしげる。


「はい。期待って言うか、あの人が求めてるのは専属マネージャーなので」

「そんなこと言われたの? ほかの作家の担当しないでほしいって?」

「いや、言われてないですけど……」

「だよね。御上くんそういうタイプじゃないから」


 いや、そういうタイプだろ、と内心思う。言わないけど。


「で、今回はなにがきっかけ?」

「いやー……毎回毎回のことですからね打ち合わせの大体一ヶ月後くらいに文句言うっていうか、色々言い出すって言うか。それかいっそ、会わないとか」

「会わなかったら仕事にならないでしょ。メールで齟齬が生まれるし」


 こんなことずっと続けていられないし、キリがない。業務に支障が出る。泳がせすぎた。理想が高いのだろう。これをしようあれをしようの全部が予算や人材を多く必要とするし、そうじゃなければ、こちらの業務を著しく圧迫するようなもの。こちらは別の担当作もあるというのにそれを一切考えてないかのようなオーダーをしてくる。


「なら担当、変わるか追加したほうがいいと思うんですよね。御上さんの希望を叶えるにはそのほうがいいっていうか。作品の為にも、御上さんのためにも」

「御上さんの希望って?」

「褒めてくれるっていうか、メンタルケア? が得意で、感想を言う。それで……企画に強い、通す力があるような、社内政治に長けた人」

「でもそういうのが上手いのが、前任さんじゃないの?」

「まぁ」


 御上の前の担当者は能力が高かった。当然、能力が高いと言うことはその分パワーがあり、我が強い。そのため衝突し緩衝材役として自分が選ばれた。御上は我も強いがそれなりに色々問題を抱えた結果、弱っていたのだろう。


 雛のすりこみのように自分に依存してきて、手を焼いている。


「だから、自分を気に入っていると?」

「はい」

「御上くんのことちゃんと人間に見えてるんだねえ」


 鹿治は穏やかに笑う。いや、人間ですからね、と言おうと思ってやめた。多分通じないから。だって、人間に見えてるって言ってきてるわけだし。


「でも御上くんは、天上さんの言葉だから欲しいんだと思うよ」

「なぜ」

「才能があるから」

「ああ、それが分からないんですよね」


 御上望はよく言う。才能があると。でも自分はそうは思えない。才能がないと思ったから、せめてと思い今の立ち位置にいるわけで。


「分からないふりをしているか、分かりたくないだけじゃなくて?

「え」


 鹿治の指摘に、時が止まったような錯覚を覚えた。いったいこの人は、何を言っているのだろう。


「分かりたくない、とは」

「自分に才能があると認めることがそんなに怖い?」

「怖いも何も才能なんてないんで」

「才能があるかないかは、自分が決めることじゃないよ」

「結果が出なかったんですよ。前にちょっとやってましたけど」


 だから才能がない。なのに御上望は才能があると言う。


「才能があるからといって必ずしも売れるわけじゃないでしょ? そっちの業界って。ほら、文豪だって詩人だって画家だって、サブカルチャーで晩年は目が出ず、死んでから美術館に飾られるようになった画家だって大勢いる。その瞬間、目に見えた結果が出なかっただけだよ」

「まぁ、そういうものですけどね……」


 確かに芸能人やタレントは容姿や演技力だけでなく業界の力関係やプロデュース力が絡む。必ずしも実力がある人間がハネるとは限らないし、逆を言えば予算を総動員させても何で売れなかったのか全く分からないことだってある。


 一人一人になんで気に入らなかったんですか、と聞いて回るわけにもいかない。そういうものだ。


「なのにどうして、自分に才能があることだけは徹底的に否定するの?」 

「それは、ないものはないので」

「でも御上くんは、あると思ってる。その御上くんの感性すら否定するの?」

「否定したいわけじゃないですけど……」


 主語が大きいなと思う。御上と同じ。興信所の人間は皆こうなのだろうか。

 

「期待されても、困るんですよ。応えられない。っていうか、買いかぶりすぎです。良く見えてるだけじゃないですか」

「別に応える必要はないんじゃない?」

「応える必要は無い、とは」


 だって期待を裏切ったら怒ってきそうだ。一体どうすればいい。怒った御上の世話をするのは自分になるし、そんな世話はしたくない。


「だって期待した御上くんが悪いんだから。天上さんが責任取ることじゃない」

「そうは言われても……」

「言えるわけないって?」


 挑発的に鹿治は微笑んだ。当たり前だろと思う。というか、分かっていて聞いてこないでほしい。しかし、それらすら見透かすようにして鹿治は笑う。


「天上さん、探偵はね、人間の目利きだけは上手いんだよ。出ないと、君たちの業界と違って、人の命に関わる仕事だから。目の前の依頼主が、人を殺すかもしれない。そのために依頼しているかもしれない。そう思って、毎日仕事する」

「そういう仕事のストレスで……御上さんは、依存的になってるんですかね」

「そういう話はしてないよ。根拠もなしに、探偵は人を信じない。そしてその信頼を裏切られたら、自分のせいって叩き込まれてるってこと」

「そうですかねえ」

「うん。だからねえ、御上くんは君を心の底から買ってる。それにあたって、心の底から、精査してる」

「精査、とは」

「駄目なところが許容できるか多分エクセルで管理してるんじゃないの? 良く見えては無いと思う。絶対に。人を見ることに対してすごく冷たいから」

「そうですかねえ」


 あんな感情的な人間はいないと思う。心の中で否定する。


「じゃないと、中途採用の君なんか相手にしないだろうしね。特に前任と揉めた後で一番攻撃的になっている頃だっただろうし、御上くんは一応、君に対して信念があるって言うけど経歴的に職転々としてる一年目の編集者なんて信頼に値しないし任せたくないでしょ。自分の大事な担当作。ましてや前任より君の力が弱いことなんて確実なんだから。それなら一度揉めた前任を手元に置いておいて、企画を走らせたほうがいいでしょ」

「でもその、前任結構、我が強いタイプで」

「知ってる。メール見てた。止めたよ。殺しかけるって。御上くんは法に触れない範囲の中で、第三者に読まれても問題ないよう調整しながら、最悪な言葉選びをしてた。徹底的に追い詰めてたよ御上くんは。そして自分が絶対負けないようにしてた。選択肢を奪って。君の前任さんは一生懸命、なんとかしようとしてたけど、最終的に代表が出て終わった。何でだと思う?」

「前任さんは、出されたような困るようなメールを出しちゃった。多分、それが明らかになれば、立場はまずくなると思う」

「そんなこと、書くようには……」


 前任は我が強いけれどそんなタイプに思えない。鹿治は「信じられないと思うよ」と肯定してきた。


「でも、御上くんが、追い詰め、書かせるような言葉を選ぶのは、信じられるんじゃない? それこそ、正しくて真っすぐな人の道を誤らせるような、そんな言葉を」

「いや、それもちょっと分かんないですね」

「へぇ。御上くん、天上さんには悪く思われないようにぶりっこしてるんだ」

「ぶりっこ……仕事相手にはそんなもんじゃないですか?」

「じゃあ、御上くんの怖い言葉一個教えてあげる」


 そう言うと鹿治は言った。


「取引先でさ、タバコ吸う人がいるの。なんて言ったと思う? ひょっとこノルマジジイだよ? タバコ吸うときに一生その人、ひょっとこ思い出すわけ。でも、若干の冗談で終わる。ただ、周りの人はずっと、御上くんの言葉が離れない」

「まぁ、それは……悪口の手段では」

「あなたの代表作、漫画家の降板起こして作品停止させた人間が担当してていい話なんですか、読者を裏切った自分が、感動できる話に触れていていいと思ってるんですか? そんな薄汚れた手で、触れていい作品なんですか、それは──って、前任に言おうとしてたよ。御上くん。やめたけどね」


 息が止まるような錯覚を覚えた。そして、「いや、でも言わなかったじゃないですか」と続ける。


「そういう言葉が、思いつく人間ではあるんだよ。御上くんは。君と見てる世界は違う。ずっと自立して、俯瞰的に物事を見ていて、君の才能を信じてる。そしてその期待が君を苦しめることも理解しながら、君が自分に才能ないって言うたびに、傷つく」

「傷つくかなぁ……だって才能ないし」

「傷つくよ。自分の無力さを知るから。伝えても届かないんだって思うから。それに彼、人に好きだって言わないというか好きなものが全くないタイプだから、好きって言いなれてないだろうし余計、傷つくんじゃない?」

「だから重いんですかね……」

「というかそもそも好意って重いものだからね。好きって言われるってうっとおしいものでしょ? 断らなきゃいけないしさ、面倒くさいって言うか。御上くんなんて一番分かってると思うよ。好きの面倒くささ。御上くんの人間吸収率、常軌を逸してるから。変態に好かれるというか」

「変態吸収……」

「だから、目利きも残酷だよ。見込みないと思ったらバッサリ切る」

「でも、前の担当者とは、しばらく持ってたというか……」

「御上くん女に弱いんだよ。母子家庭だから。特に母親に弱い。だから依頼主が母親ってだけで外すもん。御上くん。天上さん御上くんのと世代の男だし御上くん一番酷い目で見る世代だよ。最悪の世代」

「でも御上さん、男と相性いいじゃないですか?」

「相性がいいというか扱いやすいと思ってるんだよ。御上くん。男は殺してもいいと思ってる。暴力振るって許されるから。今ジェンダー的に色々あるけどさ、正直、女同士だと泣いたほうが勝ち、男女で揉めた場合、どうしたって男が悪く言われるでしょ。だから御上くん、男には何してもいいと思ってる。なんていえばいいんだろ、どうでもいい相手にはどうとでもできるでしょ」

「いやあ」


 人として最低限の礼儀は持ってるし、そうしないとトラブルになる。だから全員平等に接してるつもりだ。そして、御上望の才能論は重い。


「御上くんは、君の才能を買ってる。その事実は、君がどんなに自分を否定しても、そんなことないと思っても、御上くんが君の才能に憧れて、大事にしたいと思っていて、君にしかないものがあるということは、覆らない。実は才能が無かったとしても、それは御上くんの見込み違いだったってだけ。君が責められたりする必要はないし、君が傷つく必要もない。君の日々は、変わらない。変わる必要もない。ただ御上くんは、君の隣で、物語を紡いでいきたいと思っただけで、勝手に思ってるだけだから。それを重いって感じるのも君の自由だけど、君が自分の才能が無いと言うたびに、御上くんが傷つくことだけは知っていればいいよ。というか、好きな人を否定されて心が痛くならない人間はいないから。仕事相手でも」

「仕事相手に、思いますか?」

「うん」

「そうですかね……」


 そういうものなのだろうか? 仕事相手に感情移入することなんて。というか、感情は邪魔だ。特にプロデュースする側はある程度ものごとを俯瞰的に見なければいけないし、一人に肩入れできない。


「納得できないってことは職場の人間が悪い? それとも、仲が悪いとか」

「いや……こっちは、リモートが多いですし……そっちの職場はなんか、御上さんから話を聞く限り、仲が良さそうですけど……」

「仲は良くないよ。歩合制だから取り分の奪い合いだし足の引っ張り合いの世界だから」

「そういうストレスで、御上さんは依存的……なんですかね」

「御上くんがこっちの仕事のストレスで天上さんに依存してるならプロ失格だ。やめさせたほうがいいね。小説」


 鹿治は平然と言う。「そんなやめさせるなんて……」と続ければ鹿治さんは「天上さんは、興信所のトラブル聞いたことある?」と聞いてきた


「無いですけど……」

「でしょ? 天上さんが他の作家さんのトラブルを話さないように、御上くんは言ったことが無い。君に依存してるなら、興信所のトラブルについて話してるよ。君が思うより線引きはしっかりしてる」

「まぁ……そうなんですかね……」 

「うん。御上くん、本当に非情だから。些細なミスひとつ許さない。で? だから? しか言わないし、謝罪の前に対処法持ってこないと返事もしない」

「想像つかないっすね」

「うん。だからこっちの仕事のストレスをそっちに持って行ってるって君のロジックは、破綻してる……し、正直に言うとさ」

「はい?」

「御上くんと一年以上仕事してて、君の感情破綻したロジックが補正されてないっていうのは、かなりすごいことだと思う」

「すごいこと、とは」

「それ」


 鹿治さんはにやりと笑う。


「御上くんだったら、すごいこと、とは、みたいな、君の前提の確認について前提付けして分かった気になってんじゃねえぞとか言うはずなんだ。君の言うそうですかねえ、も、御上くんは多分、そうだよってすぐ言うし、てめえのそれは肯定なのか否定なのか受け流しなのかどれだよって問い詰めてる。ぶりっこについて僕が話をしたときに、君はぶりっこって復唱したけど、ビジネス書みたいな話し方してんじゃねえって怒る。ロジックが分からないって言うのも、理解する気がないんじゃない? って怒って、君を追い詰める」

「そうですか……ね……あ」


 相槌がうてなくなったことに気付いた。「ごめんね」と鹿治さんは申し訳なさそうにする。


「御上くんはそういう子だから。本来は。君より長い付き合いだから、断言できる」

「……」

「ね、何も言えないでしょ。でも、御上くんは、君の言葉だから欲しいし価値があると思ってる。大切にしてる。失敗してもいいと思ってる。期待外れだったとしてもそれを受け止める覚悟を持ってる。君に求めているのは成功でも幸せでもなくて、一緒にやること。その前提を持っていても大丈夫かって一点。たとえば君がその前提を持っていいとその瞬間言ったとしても、一生の契約になることは無い。頑張ってる間だけ、負い目を感じなくていいですかって話、ただそれだけ。強い編集者と一緒にアニメを作りたいなんて微塵も思ってないし、感想を三千字書くサービス精神が強い編集者とやりたいわけじゃないし、君と一緒に仕事をしている間、君の時間を奪い、担当枠を埋めて、それで大失敗した時に、君が許してくれるかって話」

「許すも何も、上から目線なこと、言い難いというか」

「じゃあ、君は御上くんより下なの?」

「まぁ……会社員なんで」

「なら、上の意向に沿うのが君の仕事だ。どうして御上くんの──取引先の意向に沿えない?」

「……」

「そもそもエンターテイメントは人に好かれる、人に惹かれさせるのが仕事だ。その動線を繋ぐ人間は、心の機微に繊細じゃなくちゃいけない。何かを好きになる心理について知っていて損はないように、好かれることも研究しなきゃいけないし、御上くんはそれこそ、重い関心を君に寄せているなら、ファンの心をつかんで離さないコンテンツ作りのいいモルモットだよ」

「モルモットって」

「それに、仕事相手におべっか使うのなんて当たり前だし、編集者に限らず、仕事の人間関係なんて、相手をおだてて気持ちよくするのが仕事だ。重いなんて言ってる場合ではないし、手玉に取って転がすべきだ」

「手玉……」


 確かに管理するのは仕事だけど編集者がそこまでする必要があるのか疑問だ。興信所の業界は調査があるから、違うんだろうけど。


「ちなみに御上くんから逃げるのは無理だと思う」

「え」

「君が、もし、担当変更とか追加を御上くんのためって言ったら、じゃあこれが実話ってことで公表するけどいいですかって、君の前任の話とか、そういうの公開して、諸共吹き飛ばすから。彼」

「そんなことしないと思いますけどね……」

「されたくないだけでしょ。絶対にするよ。ストーカー日報読んだでしょ? あれ、練習だから。それくらいの覚悟を持って君の才能を信じてる。そうした公開による自分の破滅を、いつか君が面白いエンターテインメントにすると信じて」

「重いんですよね……それが」


 途方もなく、重い。期待されても困るし、応えられない。すると鹿治さんは笑った。


「天上さんさ、結構傲慢だね?」

「え」

「だって重い、依存されたくないって繰り返して言うけど、御上くんから重い愛情を注がれて、依存されるほどの価値が自分にあるって思ってるんでしょ?」

「いや、だってそれは……」

「御上くん、君のいる出版社と揉めてるんだよ? 一度は権利移動まで持ち出した。その後現れた君に重い愛情を注ぐ。それこそ、君が嫌だと思うくらいに。普通、会社に何か復讐するために好きだってわざと言ったりするの、疑わない? 論理的に考えて、好かれる状況じゃないよ? 君。それに、御上くん、あれでも一応、受賞経験は多い。そこそこ結果出してて、編集者慣れしてる。なのに中途採用で、自分には才能がないなんて否定してくる人間にわざわざ好きだっていう理由、どこにあるの?」

「……」

「あと、要求が高い、理想が高いって言うけど、その要求も理想も、誰にでも出してると思う? 君とやりたいから難易度が上がってると考えたことはない?」

「……いや、そんなはずは」

「御上くんは君が思うほど、依存的でも重い人間でもない。飽きたらあっさり捨てるタイプだよ。覚えはない? じゃあもういいや、別の人でいいって、御上くんが飽きた瞬間」

「あれは天邪鬼的な……」

「あんなに、人間に対しての期待値が低い人はいない。そのうえで聞くけどさ、君の本心は、本当に依存されたくない、重いから、嫌なの?」


 鹿治さんが問いかけてくる。


「君の叶えられないって言ってる御上くんの願いは、本当に叶えられない願い? そして、君の言う御上くんの自立って、誰のための幸せ?」

「だって依存は……」

「依存させてでも、面白いの出してユーザー喜ばすのがエンタメじゃないの?」


 鹿治さんが問いかけてくる。


「君はなにから逃げようとしてる? 何を、恐れてる?」




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