5 幼なじみ
(((о´∀`о)(о´∀`о)))
俺という人間を客観的に見ると、恐らく本来のスペックは下の下くらいだろうと予想できる。自虐ではなく素でそう思うのだ。人並み以上に努力してようやく人並み。
きっと、ある程度良識的な家庭に生まれていれば特別学級にいても不思議ではなかっただろうとは思う。まあ、過ぎたことだし、俺自身、色々と経験したことで成長せざる得なかったというのもあって今はそこそこだとは思うけど。
とはいえ、俺がそう思ってしまうのはきっと1番近くにいた存在があまりにも大きかったせいもあるのだろうと思う。
「愛から呼び出しなんて珍しいと思ったけど……なるほど、彼女が出来たんだね」
「愛ちゃんおめでとうー」
「察しが早くて助かるよ」
そう、所謂幼なじみってやつが俺にはいる。頭もよく、運動神経も抜群で爽やかなイケメンの親友、神楽坂隼人。そしてその彼女で同じく幼なじみの神崎美沙、こちらも成績優秀でなんでも出来る天才な上に美少女となかなか凄いスペックなのだが……そんな2人を俺は彼女に紹介していた。
「中野さん。この2人が俺の幼なじみなんだけど……」
「どうも、愛の無二の親友の神楽坂隼人です」
「同じ、親友の沙耶だよー」
「あ、えっと……中野です」
「下の名前は?」
「えっと、その……姫です……」
恥ずかしいのかそう呟く彼女だが、名前が変わってる程度で笑うような2人ではないので、むしろ嬉しそうに美沙は彼女に抱きついて言った。
「可愛い名前〜♪あ、姫ちゃんて呼んでもいい?私と友達になろうよ」
「え、で、でも………」
「大丈夫大丈夫。というか、愛ちゃんもそのつもりで連れてきたんでしょ?」
「まあね」
嬉しそうに抱きついて彼女を質問攻めにする美沙を放置して、俺は隼人に言った。
「急に呼び出してごめん」
「いいって、高校違うから愛がまた無理してそうで心配だったしね。それで?もう大丈夫なの?」
「大丈夫って……なにが?」
「あの子のトラウマから脱したのかと思ってさ。鈴音ちゃん」
その名前に少しだけ胸がチクッとする。でも、もちろん我慢して俺は言った。
「違うよ。あれは俺のせいだ。あの子には何の罪もないよ」
「ならいいけど……でも、本当に辛い時は言いなよ。これでも親友だからね」
「ありがとう」
小学生の頃からの親友は相変わらずお世話で何よりだ。昔からこの光が強ければ強いほど俺が影で受ける影響は大きいのだが……もちろんそれも隼人のせいじゃないから気にはしない。
「んー可愛いー♪ねぇ、愛ちゃんお持ち帰りしてもいい?」
「頼むから勘弁してくれ」
一方向こうは友情の線を越えようとしてたので流石にそろそろ阻止することにした。隼人というイケメン彼氏がいるのだが、美沙はどちらかといえば女の子が好きなので本気で彼女を連れ去りそうで怖いのだった。でも、他に友達の宛もないしねぇ……背に腹はかえられないか。そうして俺は幼なじみを彼女に紹介するのだった。