小さな魔術師1
好機の雷は敵の罠がある包囲網を木っ端微塵に破壊してくれて、相手国の指揮官は驚き慌て、兵どもは動揺を隠せていないようで見事にまでに隙だらけな行動をとっていた。
こうも油断だらけで逆に罠で演技かと考えるも、それはないかと思い直す。あれだけの威力と現状では動揺せずにはいられないだろうと。
少々敵に同情しながらも隊長からの合図を待ち気配を殺していると、風の伝達が耳に入る。
『魔術師が3人お前の所にくる、後衛にて援護するから斥候し相手の様子見より薙ぎ払い数を減らしておけ!そうすりゃ、俺が暴れやすくなるからよ!』
楽しげな隊長の物言いに、戦闘バカだと呆れつつも。
俺自身も戦闘バカなせいか気持ちは高揚してはいたのだから人の事はいえないのだろう。
それにしても魔術師とか言っていたが、白き乙女ではないだろうと考える。もしあれだけの魔力を持っているならば消費量も強い稲妻を放った後に動けるわけはないだろうと俺は思っているし
戦場のこんな場所になど女がくるのもびびるに決まっている。ならばここにくる魔術師はどう考えても男だろう。
あー期待したくないのに期待してしまう俺がいやだ。
『おい、こら! 承諾の返事がないが了承するよな!』
黙ってるとせっかつく隊長の機嫌が悪くなっていることに気づいた俺は、軽くハイハイと返事をしてから
「了解ですよ。あんたが戦いやすいように掃除してやるから、さっさとその場所から来いよ隊長!」
とバカにした物言いで言えば、少しの間を開けてから
『おう!』と元気に返事をして伝達は切れた。
さてとしょうがないから隊長が戻ってこれるように片付けますかね。
背中に担いでる大剣を抜け取り、気配を出さずに足音すら消し歩みよりと敵の兵士が人垣がない場所に移動した瞬間に一人を昏倒させては意識を奪い捕縛していく
その作業を一区切り済ませた頃、指揮官が場の不利な現状に気付いたが既にそいつだけとなっている。青い顔をする指揮官に俺はほくそ笑むと同時に、奴との距離詰めて腹部に一撃、足払いをし倒れた隙に大剣で首筋へとあて降参するように(脅し文句で)促した。
あまりにも簡単で、こいつら本当に兵士かと呆れた。
それにこの指揮官も未熟すぎてるきもするから余計に罠かと勘ぐりたい気分だった。
周囲を確認して状況を分析しておく、兵士が数人と指揮官か。
ここは様子を伺っておく観測隊か分析隊ってとこかもしれん。ならば......だ。ここには敵の情報があるかも知れんって事だよな、面白いじゃんか。
ニヤッと不敵に笑みを浮かべていると僅かな木々の間から黒服に身を包む3人の人影が現れた。