はじまり
ファンタジーの話しで書いてみたいと思ったままの作品です。楽しんでくださると嬉しいです。
夕焼け空の草原で黒いマントに黒い髪を長く伸ばした人物が1メートルも長い杖を空高く掲げると、先端の端より金色の稲妻がほと迸り無数の雷が、前方の敵勢力に衝突しては消炭の如く消えて行く。
「さすがですね竜蘭。」
ポンと手を肩に置かれて竜蘭は、苦笑を漏らし首を振る。
けして褒められる力ではなく、周囲にとっては異質となり得る能力だから。
「まったく謙遜だな。」
「おい。魔術師様に慣れなしくしてんじゃねえ!」
「ってえな。なにすんだよ」
ベシッと背中を叩く音にチラリと後方を向いて文句を言う彼この戦場の副官のアルバトス様が隊長であるリコルト様を睨みつけている姿があった。
「大袈裟なんだよお前は、たかだか魔術如きで褒めてんじゃねえ。それに魔術師は他にも3人いるんだ、それを一人一人に称賛の言葉をなげかけんのか!」
「チッわあーってんだよ、たく。でもよ、コイツ結構ちっこいのに苦戦してた戦場の敵を倒してくれたんだ褒めてやらんと可哀想だろ。」
なっ! と同意を求められて竜蘭は怪訝な気分と、小さいとか可哀想とかの単語にイラッとして、普段なら声を出さない自分がアルバトス様に向かって文句を言っていた。
「可哀想とか言われる筋合いはない。大きなお世話は嫌いです!!」
「!!」
「ほえー魔術師様の声初めて聞いたけど、女子だったんだな! 女子も配属されてたとは驚きだなってアルどうした?」
戸惑い気味な表情でリコリス様に対し、アルバトス様は竜蘭を見詰めてガシッと両肩を掴み出す。
なっなに!? あまりの唐突な行動に竜蘭驚きと異性からの接触に嫌な汗が伝い。
「はな、離して下さい!」
「すまん、確認だけさせてくれ。お前は魔術師で女性なら、白髪の髪に赤い目の少女を知らないだろうか!」
その言葉に竜蘭はドキっとした、だって彼が言っている特徴が自分の特徴と似ていたから。
竜蘭はフードを深く被ってから首を振る。
何処かで自分と会っていた可能性に怯えて否定すると、アルバトス様は、明らかに落胆するように溜息を吐いてから、両肩から手を離してくれ竜蘭はホッとし、二歩程後退しておく。
フードからはアルバトス様の表情はこちらからは見えて、とてもお辛そうで何でか自分までキュッと胸が締め付けられる気持ちになり、首を傾げてしまう。
そんな時だった、リコリス様がアルバトス様に拳骨をかまして、いつまで気にしてんじゃねえ! と怒鳴り。
竜蘭には優しく微笑み、嬢ちゃんも気にすんなよ。と言ってからアルバトス様の首根っこ掴み離れていく。
「えっと、アルバトス様。何故その人を探しているんですか?」
なんとなく、その少女を探す目的が知りたい気持ちがきて聞いたら、アルバトス様はハッとしてリコリス様の手を払い
竜蘭に向かって「仮があるんだ。返しきれない恩がな!」と叫ぶ。
「ほれ、もういいだろ。まだここは戦場であり、人探しはあと、良いな!」
ガシッとアルバトス様の肩に手をあて、凄みのある声と笑顔なのに笑ってない表情で言うリコリス様にアルバトス様はビクとし項垂れて歩き出していた。
もう振り返らずに、だから竜蘭は小さく言葉を載せて彼にだけ呟いた。
「貴方なら、そのうち会えるかもですよ。」
言霊載せをアルバトス様に伝えると、チラッと振り返られてから頷き口元が上がり小さく微笑を浮かべる姿に、竜蘭はドキってして、同時にある記憶が過った。
それは幼い頃の小さな記憶。
意見や感想などあれば、随時返していきます。
読んでくださりありがとうございます。