第八章 『初めての自作魔法』
窓から差し込む朝日で目を覚ます。ベッドから起き上がり、昨日レッグスにそろえてもらった装備を着る。
「さて、この世界初の仕事だ。張り切って行こう。」
部屋から出て、グレンの部屋に向かう。
「グレン、起きてますか?」
「あぁ、起きてるぜ。装備は整えたか?」
部屋から出てきたグレンは、すでに鎧を着ていた。
「はい、いつでも仕事に行けますよ。」
「そうか、じゃあ行くぞ。」
グレンと共に旅館の広間に出る。するとそこでメルに会った。
「あれ、お二人ともこれからお仕事ですかぁ?」
「はい、今からグレンとギルドに行くところです。」
「そうですかぁ。フィニアさんはお若いのですから、あまり無茶はしないでくださいね?」
「そうします。」
メルと別れ、旅館を出る。
「それと、ギルドにも柄の悪い奴がいるから気を付けろよ。」
「はい。」
ギルドへ向かう道を歩く。この時間から人通りは多く、賑やかだ。
「ところでグレン。昨日から気になっていたんですけど、グレンには知り合いが多いですね。意外と有名だったりします?」
「まぁ、B級冒険者の中では有名な方だな。」
「B級冒険者……。確か、冒険者にはC級からS級までのランク付けがあるんでしたね。」
「あぁ。」
そんな話をしていると、ギルドに到着した。中に入ると、昨日来たときより多くの冒険者がいた。
「さて、俺は依頼を見てお前も受けられそうなのを探してくる。フィニア、お前はここで待ってろ。」
「分かりました。」
グレンが少し離れたところにあるクエストボードに向かった。すると………。
「おい、お嬢ちゃん。こんなところで何してんだ?」
「?」
不意に目に傷のある大柄な男に話しかけられた。
「えっと、依頼を受けに来たところです。」
「は?お嬢ちゃん、冒険者か。………誰と組んでる?」
「グレン・リッカーという人です。」
「はっ、グレンか。あの偽善者野郎のやりそうな事だ。」
どうやらこの男はグレンを良く思ってないらしい。……不愉快だ。
「……グレンは偽善者じゃないですよ。」
「あぁん?テメェはあの男の何を知ってるんだよ。」
「……まだ会って数日も経ってませんけど、彼が心優しい人間だということくらいは分かります。」
「そうかよ。……気に入らねぇ、あんな腰抜けが俺と同じB級冒険者なんて……。」
そう言うと男はギルドの奥へ入って行った。
「おーい、依頼が決まったぞ……ってなんて顔してんだ。何かあったのか?」
「………いえ、何でもありません。」
「……そうか?まぁいい、依頼はフォレスト・ウルフの討伐だ。行くぞ。」
「了解です。」
グレンとフォレスト・ウルフが出るという森へ向かった。
数時間後……。
「よし、ここがモーリス大森林だ。」
「………広いですね。ここを探すとなると時間がかかりそうです。」
「まぁ、期間自体は二日後までだから大丈夫だ。それに魔法の練習をするんだろ?」
「はい、色々考えてきましたから。」
早速、魔法をイメージし始める。
「範囲をモーリス大森林全体に設定。特定モンスターのスキャンを開始!」
「えっ!?お、おいちょっと待て!!」
瞬間、自分を中心に光が放たれた。俺が使った魔法は所謂サーチのようなものだ。範囲をモーリス大森林、対象をフォレスト・ウルフに限定したスキャン。
「よし、フォレスト・ウルフの居場所が掴めました……………」
「何やってんだ!!危ねぇだろ!!」
「………え…?」
突然、グレンが声を荒げる。
「ど、どうしたんですか?何かマズいことでも……?」
「マズいもあったもあるか!!お前は魔族の混血なんだぞ!?魔族ってのは心臓の位置に魔石があって、そこから供給される魔力で生きてる!!そんなお前が、一気に大量の魔力を失う大規模魔法を使えば、魔力が底を突いて死ぬぞ!!」
「えっ………!?」
グレンからとんでもないことを聞いた。つまり、99999を一気に使い切るようなことをすれば、気付く前に死んでいたということだ。
「くそっ、ヒヤヒヤさせやがって……今の魔法が成功していたらどうなっていたかと思うとゾッとするぜ……。」
「……すいません………。」
「………いや、先に説明しなかった俺の落ち度でもある。怒鳴って悪かった……。」
「いや………心配してくれてありがとう。俺も今度から気を付ける。」
「おう。」
……改めて思ったが、グレンは心優しい人間だ。こうやって本気で怒るのも、その証拠だろう。
「で、さっき何か言おうとしてたな。なんだ?」
「あ、そうだ。フォレスト・ウルフの居場所が分かった。」
「…………………………え。」
その後、しばらくグレンがショックで停止してしまった……。
ちなみにサーチ使用時の魔力消費量→59999/99999
つまり、魔力四万消費。