第四章 『国境の街へ』
馬車に乗せてもらってから数分。老夫婦が知り合えたのも縁だと言うことで自己紹介をすることになった。
「私は今向かっている街の領主でね。イワン・シュナイドという。よろしく、お嬢さん。」
「妻のヘレンよ。」
……老夫婦は領主だった。今のうちに混血種への差別の有無を聞いておこう。
「あの、今から向かう街って混血への差別とかありますか?」
「ん?いや、テネスは隣国の領地だからあまりこの国のような差別はないかな。なにせ、私はそういうことが嫌いでね。」
「へぇ、それは良いことを聞きました。」
「そういえば、お嬢さんはエルフと何の種族のハーフなのかな?」
イワンが俺の種族について聞いてきた。
「……母から聞いた話ではデーモンとのハーフらしいですけど。」
「ふむ、確かにこの国では魔族との混血は禁忌だったな。」
「まぁ、これから行く国がそうでないなら、良かったです。」
「なぁ、ところでお嬢ちゃん。」
用心棒のような男が話しかけてくる。
「何ですか?」
「さっきの話になるんだが、お嬢ちゃんの魔力ってどんだけあるんだ?」
「……………。」
これはあまり言うべきではないな。なにせスキルでの底上げだし、魔王だし………。
「ま、まぁそこそこ多いだけですよ。」
「ふーん……あ、俺は隣国のギルドで冒険者やってるグレン・リッカーだ。よろしく!」
「よろしくお願いします。………冒険者?」
また知らない単語だ。これは聞いても良いか?
「あぁ、冒険者ってのは………まぁ、所謂何でも屋みたいなもんだ。依頼を受けて、達成して、金をもらう。そんな仕事だ。腕自慢みたいなのがなる仕事だな。」
「…………良いですね。冒険者。力をつけるには良さそうです。」
今の俺には力が必要だし、そもそも生きてくためにどこかで働くのは必須だ。
「おい、お嬢ちゃん。聞いてたのか?結構危険な仕事だぞ?」
「分かってます。でも、俺には力をつける必要があるんです。」
「そ、そうか………無理には止めないが………。」
そんな話をしていると、御者が口を開く。
「国境の街が見えてきましたよ~。」
窓の外を見ると巨大な壁が見えた。
「あの壁の向こうが私の街だよ。まぁ、治安は良いから安心して大丈夫だし、差別もない。」
「ありがとうございます。」
「ところでお嬢さんは宿に泊まるお金はあるのかい?」
「…………あ。」
しまった。急いで準備したせいでお金を持ち忘れた。
「……冒険者になるなら、俺の宿舎を貸しても良いぞ。」
突然グレンが提案する。
「えっと、良いんですか?」
「ま、冒険者になるならだがな。」
「……なるつもりですよ?」
「なら先輩の厚意として受け取れ。」
「…………ありがとうございます。」
そんな話をしながら、馬車は街に入った………。