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エピソード一つ目~1~

変更内容:誤字脱字及び言い回しの変更を行いました。内容に変更はありません。





 突然、大きな魔力の膨らみを感知する。

 慌てて校長と窓辺へ駆け寄り、魔力が発生した校庭を確認する。

 見れば、先刻クラスメイトと合流したばかりのコーネリアの体から、膨らんだ巨大な魔力が立ち上り、その力が龍の姿へと具現化されていた。


 え? なぜ龍? どうして龍?


 今日の授業は、簡単な具現化を変化させる訓練で、龍みたいな複雑な具現化は必要ないのだけど?


 この世界では、誰もが魔力を持って生を受ける。魔力を用い、なにかを具現化したりすること等を、『魔法』と呼んでいる。魔法を上手に使うには、訓練をはじめ、他者からの教えが必要だ。


 小等学校……。前世で言うところの小学校でいう、四年生~六年生に当たる三年間で基礎的な勉学を習う。そう考えると、全般的な学習内容は、前世の方が進んでいるかもしれない。

 だけどこの世界には魔法があり、前世と違う点が多い。学習内容に差はあれ、どちらの世界がより文明が発達しているかは、判断が難しい。


 小等学校では、魔法の基礎を習う。その内容は、瞬間的に光を生み出したり、マッチ棒ほどの火を出したりと、規模の小さな魔法ばかり。まずは魔力を、自分の意図する形に具現化させることを中心に、教わる。

 中等学校……。前世で言う、中学一年生~高校一年生に当たる四年生の学校で、より魔力をコントロールさせる術を習う。

 今日は、まず火や水などを丸く具現化させ、そこから四角や三角など、他の形に変える訓練内容だったはず。


 それなのに、なぜ龍? どうして龍? 反省文書いた矢先から、教師の指示を無視して、具現化した龍を出すとは、どういうことですかね?

 っていうか、これ、もしかして……。


「ほう。あの年齢でこれほど大きな龍の形を具現化させるとは、たいしたものだ。流石は特待生だな」


 校長! 落ちついていますがね、これマンガの通りなら、王子が初めてヒロインを知るエピソードですから! 至急対応すべき案件だと思います!

 私のバカバカ! 未来が分かって最強とか言っておきながら、こんなエピソード通りの展開を許すなんて! 

 あ~、どうしよう~。王子、頼みますからマンガ通り、『なんて強い魔力なんだ……。あんな可憐な少女が、こんな強い魔力を持っているとは……』なんて、彼女に興味を持たないで下さい。

 彼女は授業をサボったりするし、自分の言葉に無責任な奴で、ちっとも可憐ではありませんから!


 校内のざわめきが校長室まで届いてくる。

 そりゃあね! 水魔法で龍だものね! 校内の生徒たちも興奮しますよね⁉


「あれで限界だと思うかい?」


 心の中で頭を抱え悶えている私の隣で、少しも落ちつきを崩さない校長に問われる。

 内面を気取られないよう、平静を装って答える。


「これを限界とするかは、本人次第でしょう。修行すればもっと力を引き出せ、今より巨大な龍を具現化することが可能だと思います」

「私も同意見だ」


 そんな会話をしている最中も、水龍は逃げるクラスメイトの頭上すれすれを、まるで右往左往するかのように動き回っている。

 そんな龍に向かって、胸の前で両手を握り、必死になにかを叫んでいるコーネリア。

 はいはい、可愛いですねー。可愛い女の子が健気って感じですねー。だけど……。


「だが、気に入らないな」

「同感です」


 さも力が暴走し、水龍を操れなくて、困っている様に見せていますがね……。


 演技だと、バレバレですよ?


 魔力の暴走は確かに起きるが、大体の術者が、気絶したり我を失うから発生する。

 もしくはコントロールを取得していない若者が、魔力を暴発させ、意識を持ちながらも魔力を操ることができなくなり、どうしようもなくなる場合もある。


 暴走すれば具現化した魔法と術者の間に流れる魔力は、常にMAX状態。

 だから放っておいても、いずれ魔力切れで本人がぶっ倒れ、その魔法も消滅する。

 だが今の彼女は、自身の魔力をコントロールしている。方向を変える時は魔力を多く流し、上手にコントロールしている。真っ直ぐ進む時は魔力を少なく流している。見る人が見れば、暴走ではないと一目瞭然。


 こちとらだてに三十一年、この世界で生きている訳じゃない。人生折り返しを過ぎ、それだけ見聞を深めている訳ですからね。

 ……まあ、具現化能力と操作能力の高さは認めましょう。自分で取得したのなら、たいしたもの。感覚で理解する、天才タイプに違いない。稀にいるのよね、こういう人。

 具現化と操作能力の二点に関しては、在校生で一番かもしれない。花丸をあげるレベルには違いない。だけどね、勝手に龍を出して暴走している風を装っているので、評価はプラマイゼロです!

お読み下さりありがとうございます。

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