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その1

編集内容(2月4日(月))

誤字脱字及び、言い回しの修正を一部行いました。

「書き終わりました~」


 不機嫌さを隠しもせず、問題児生徒コーネリア・ヴァーロングは、書き終えたばかりの反省文と誓約書を提出した。


 校長に彼女へのペナルティをお願いすると、あっさりと快諾された。

 どうやら他の教員からも話を聞いており、校長も今後について私と話したかったそうだ。

 一番口やかましい歴史家の男性教師、エクサム・スターリンは、彼女に誓約書を書かせろとまで言っていたそうだ。

 その話を校長から聞いた時……。


 は? 私のこと、信用してないってこと⁉ 私じゃ、問題を解決できないって、そう言いたいわけ⁉


 と、男性教師に対してムカついたのは……。



 仕方ないだろう。



 なにしろ誓約書の内容が、授業の妨害をする。又は授業を受ける気がないと教員が判断した場合、停学処分を受けることに同意するというもの。

 こんな内容を! クラス担任である私に相談一つせず! 校長へ直談判! 報連相を知らないの、あの男は!


 ……これはもう、ケンカ、売られていますよね?


 まったくあの男、何様なんだか。いや、貴族様なんだけどね。

 スターリンも学生の頃は爽やかイケメンで、問題行動もなく、いい生徒だったのに……。

 教師になって何年かしら? まだ三十になっていないから……。ああ、計算するのが面倒ね。とにかく学生の頃に比べ、可愛げがなくなったことは間違いない。それでもイケメンなので、女子生徒からの人気は絶大だ。

 イケメンって、お得ですねー。羨ましいですねー。


 ……そろそろアイツのことを考えるのは止めよう。コーネリアの対応が優先だ。


「あなたが本校に特待生として入学できたのは、魔力の含有値が高いと判断されたからです。その為、特に魔法科での活躍を期待されていますが、だからといって、それだけに専念すればよいという話ではありません」


 以前も行った説明を繰り返しているからか、明らかにうんざりとした顔をされる。

 繰り返されるのが嫌なら、真摯な態度をお願いしたいわね。そんなに難しくないと思うわ?


「いいですか。全教科の内、一つでも、履修が達していないと判断されれば、留年もありますからね」

「はあ⁉ なんですか、それ! 私が平民だからですか⁉」


 え? まさか留年があるって知らなかったの? そんなに驚くなんて、こっちがビックリだわ。


「身分は関係ありません。明らかに履修レベルに達していない状態で次の学年へ進んでも、周りとの差が広がる一方です。達していない場合は留年させ、昇級できるよう履修を繰り返す。これが本校のやり方です。

 ただあなたの場合、もし留年が決まれば特待生でなくなり、免除されている授業料も納めてもらうことになります。

 ……この話は入学前、説明を受けたはずですよ?」


 ややあって思い出したのか、舌打ちをする。

 ……女の子が舌打ち……。可愛くないから止めましょうね。

 というか、さっきからなんなの、この態度は。許されるものなら、ぶっ飛ばしたい気分だわ。


「思い出してくれたようで、良かったわ。とにかく今後は、自分の振る舞いに気を付けなさい。話は以上です。授業へ戻りなさい」

「はーい」


 クラスメイトは現在、校庭で魔法の実地訓練を行っている。

 本来なら私も教科担任として教鞭を執っている所だが、コーネリアが反省文及び誓約書を書くのに付き添うため、他の魔法科の先生に今日の授業は任せている。

 窓から校庭を見下ろすと、コーネリアが駆け足で皆のもとへ向かっていた。

 合流したことを見届け、彼女が書き終えたばかりの反省文へ目を通す。


「……あいかわらず汚い字ね……」


 この文字だけ見たら、ガサツな男の子が書いたと思われても仕方がない。前世の私も字は汚かったけど、ここまでは酷くなかったわ。

 この世界にはパソコンなんてないので、どうしても手書きになってしまう。だから字の美醜は、その人の評価の一つに数えられている。


 パソコンは良かったわね。フォントもサイズも、クリック一つで簡単に変換! しかも『元に戻す』を選べば、失敗もなかったことに!

 パソコンをこの世界で作れば、きっと大儲けできるだろう。

 だけどパソコンをどうすれば作れるのか分からないし、必要不可欠なプログラミングなんてできないし。前世がパソコン好きな人間だったら、チャンスがあったかもねえ。残念だわ。


 それにしてもコーネリアったら、見た目が可愛いだけに、この字はガッカリしてしまう。百年の恋も一時に冷める感じよね。

 マンガではヒロインの字についての描写なんてなかったから、見た目から勝手に、字も綺麗だと思っていたのよ。ヒロインというだけで、パーフェクト人間だと誤解していたわ。パーフェクトな人間なんて、いるわけがないのにね。

 それでもあの子を知れば知るほど、マンガとの差が激しくて泣けてくる。


「やっぱりこの世界って、舞台はあのマンガだけど、平行世界というか……。アナザーワールドなのかしら。それだとマンガ通り、ヒロインが王子と恋仲になることはないかもね」


 ちなみに肝心の反省文は、一応長々と書いてあものの……。



『どーも、さーせんっした』



 と、脳内で要約され、変換される。

 適当に心をこめず、反省文を書いたんだろうな。こういうのは案外、相手に伝わるからね。


 本当この世界が、あのマンガのアナザーワールドであってほしいと願う。前世でこんなヒロインを応援していたなんて、悲しすぎるし、嫌すぎるもの。アナザーワールドなら、救われるわ。


 そして、どうかこの世界の王子の女の趣味が悪くありませんように!

私も字は綺麗ではありませんが、人が読める字を書くようにと、心がけています。

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