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その5

令和3年2月19日(金)

加筆訂正を行いましたが、内容に変更はありません。







「なぜ、ですか。正直よく分かりません。もちろん授業をさぼることは良くないと、分かっています。だけど彼女に笑顔で誘われたら、頭がぼーっとなってきて……。気がつけば頷いていました……。先生、あの時は授業をサボって、本当にすみませんでした!」


 こいつもか! なぜコーネリアと授業をさぼったのかと尋ねれば、同じような内容の返事ばかり!

 恋愛レベルが底辺の私に、これをどう判断しろと? 若い男の子が、可愛い女の子に二人きりになりたいと誘われ、つい浮かれて過ちを犯したということなの? それとも精神魔法をかけられたから、正常でなくなったの?

 ダメ! さっぱり分からない!


 男子生徒全員の聞き込みを終えたと、校長へ報告をすると……。


「そうか……。なんとも判断つきにくい答えだな」


 校長も苦渋を味わっているように、顔をしかめた。

 ですよね⁉ 判断難しいですよね⁉ 良かったー。そう思ったの、私だけじゃなくて。


「カヤル先生とか、どうだろうか。色恋か精神魔法か、判断がつくのではないか? そういった方面に詳しいだろう?」

「それは……。どうでしょう。カヤル先生は、全て恋愛に結び付ける傾向がありますから」

「そうだな……」


 年齢差はあるものの、浮いた話がとんとない私たち。色恋の知識が低いから、結論が出るはずもない。最終的にこの件は、保留、様子見。ということになった。




◇◇◇◇◇




「先生、なにかご用でしょうか」


 私の呼び出しを受けたメーテルが教員室を訪れてきた。

 放課後、探し回るのは疲れるし、立場上忙しい彼女を確実に私の所へ来るよう、呼び出しておいた。

 幸い魔法科の他の先生は席を外している。いいタイミング、まさに絶好のチャンス。


「あなたに尋ねたいことがあって」

「どのようなことでしょう」

「これと似た本を、あなたが持っていると聞いたの。本当に持っているのなら、ぜひそれを読ませてもらいたいと思って」


 祖母の遺品であるマンガを取り出し、適当にページを開いて見せる。

 それを覗きこんだメーテルの目が大きく開かれ、その美しい顔が固まる。そのまま身を乗り出してくると、食い入るように開かれたページを見つめる。やがて……。


「……先生、この本をどこで……?」


 ゆっくりと顔を上げたメーテルの目には、驚きが宿っている。


「これは今から五十年ほど前に発行された本で、私の祖母の遺品なの。変わった本でしょう? とても面白くて夢中になれる本で、今では私の宝物なの」

「あの……。読ませて頂いても……?」

「もちろん、どうぞ」


 空いている席をすすめ本を渡すと、メーテルは前屈みで読み始める。瞬きもほとんどせず、夢中になっている。正直ここまで食いつくとは意外だったけれど……。とりあえずマンガを受け入れるタイプのようで、安心する。

 さて、彼女が読み終わるまで、私は生徒からの提出物の採点でもしておきましょうか。

 赤ペンを取り出し、作業を開始する。そのうち、コーネリアの提出物の番となる。

 ……やっぱり、字が汚いわね。そう思わずにいられない。可愛い外見なのに、もったいない。少しは字の練習もしてほしい。だってこの世界には、手書きしか手段がないのだから。


 メーテルは読み終わると息を吐き、ぱたんと本を閉じる。


「はあ……。胸キュン……。やっぱりマンガ、最高……」


 うっとりとした顔で呟くメーテル。うんうん、分かる。少女マンガの甘酸っぱい世界、胸がキュンキュンしちゃうわよね。特に主人公がヒーローとすれ違うところなんて……。内心で頷いていると、あることに気がつく。


 うん? マンガ?

 そんな言葉、この世界にはないはず……。


 私だって一度も『マンガ』という単語を出していない。なのに、どうしてメーテルの口からその単語が出るの? まさか……。

 自分の失言に気がついていないのか、メーテルはにこりと微笑み、本を返してきた。


「先生、ありがとうございました。本当に、とても面白かったです。確かに私は、これと似た本を持っています。ただそれは、この本と違って、出版社から発行された本ではなく、見苦しいものです」


 やっぱり! マンガを持っている!


「お、お願い! それを読ませてちょうだい! 私、この斬新な作りの本にとても興味があって、他の作品も読みたいの!」

「分かりました。では、持って来ますね」

「ええ、楽しみにしているわ!」


 明日、持って来るとメーテルは約束してくれ、教員室を出て行った。

 一人になった教員室で、喜びながらも思う。


 まさかメーテル……。あなたも転生者なわけ……?


 その答えは早くも翌日、判明した。



◇◇◇◇◇



 メーテルから渡されたのは一冊のノート。なるほど、ノートへ個人的に書かれたマンガ。ようは同人誌みたいなものね。それでも構わないわ、大好きなマンガが読めるのだから! ワクワクしながら表紙をめくり、現れた絵に釘付けになる。

 こ、この絵は……! 見覚えがある……! 前世で読んだ、あの、コーネリアが主人公だったマンガを描いた……!


「夢キラ子先生⁉」


 慌てて次々ページをめくるが、どこをどう見ても夢キラ子の絵! 前世で好きだった、夢キラ子先生の絵がノートに描かれている!


「うっそ! 本当に⁉ どう見ても、夢キラ子先生!」


 歓喜に震え興奮し、つい先生の名を口から出す。


「せ、先生? 夢キラ子をご存知で?」

「もちろん! ああ、嘘みたい! 夢みたい! これ、夢キラ子先生の新作? それとも未発表作? なんにしてもこれって、先生がノートに直筆で描いたマンガに間違いないわよね。恐れ多い……。拝まねば……。まさに神ノート……。信じられない! まさか、こんな所で……」


 そう。異世界に生まれ変わっても、また先生の作品が読めるなんて、夢の、よ、う……?


 我に返る。


 まって⁉ どうして前世で読んでいた、夢キラ子先生の作品がこの世界にあるの⁉ 魔法が使えるから、ここは前世とは別世界と思っていたけれど、実は地球から遠く離れた他の惑星とか? そして地球と交流があり、それで先生の作品が輸入されたとか? いや、そんなバカな! そもそも科学の世界で魔法なんて……! いや、超能力とかオカルト的には未知のパワーが……。

 って、今はそんなことより……!

 慌ててメーテルを見れば、驚愕の眼差しを私に向けている。


 やっぱり! やってしまった! いろいろ、やってしまった! これはマズい! 誤魔化さないと!

 こほん。と、軽く取り繕うように咳払いをする。


「ごめんなさいね、つい興奮してしまって。その……。知っている方の作品だったから、驚いてしまって。夢先生は、一部では有名な方で、私、本当に大好きで……。新作の発表をいつも心待ちにしていて……」


 ええ、前世の話だけれど、確かに一部では有名な人でした。ネットで不定期配信だったから、次の更新はいつかな~? と、毎日ワクワクして待っていたものですし。

 それにしても……。飲み会の時といい、どうして誤魔化そうとすると、こうも泥沼に……。本当、誰か助けて……。


「……つまり先生は、夢キラ子を知っている。ということですね?」

「え、ええ。好きな作家なの」

「そうですか……。先生? 夢キラ子は、この世界の住人ではありませんよ?」


 そう言うと、詰め寄って来たメーテルが私の両手を取る。


「先生! 先生も転生者なのでしょう⁉ 私もそうなのです! 夢キラ子がいた世界が、私の前世の世界なのです! 夢キラ子を知っているのなら、先生もそうなのでしょう⁉」

「えええええ⁉」


 予想していたとはいえ、突然の告白に驚きの声を上げる。

 ええ、確かにその可能性を考えていましたよ? だけど本当にそうだなんて……。


 ねえ、神様……。コーネリアといい、メーテルといい、ちょっと転生者が多すぎませんかね?


 この調子なら、まだまだ他にも仲間がいるかもしれない……。






お読みいただき、ありがとうございます。


この作品はプロットがなく、見切り発車で始めた作品でして……。

それで、あらすじが変更になることが多々あります。

この話の公開前にも、あらすじを変更しております。

もしかしたらジャンルも、また変更するかもしれません。

いろいろ定まっておらず、申し訳ありません。

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