プロローグ
変更内容
活動報告に記しましたが、誤字脱字の見直し及び、言い回しの変更を行っています。
ストーリーの変更はありません。
「いいですか、担任のあなたからも注意して下さい。よろしくお願いします」
念を押すように強く言い残し、やっと歴史科の教師、エクサム・スターリンは去った。
一人になるとため息をつき、受け持っているクラスに所属する、一人の少女を思い浮かべる。
茶色くサラサラの艶ある髪は、肩より少し長め。
肌は色白く潤い、若いからシミもシワもない。
大きな瞳は赤味の強いピンク。まつ毛も長く、二重でキラキラ輝いている。
ほんのり赤い唇は小さく、柔らかそう。ってあれ、口紅つけていませんか? お化粧は校則違反ですからね?
胸は成長期だからともかく……。
ああ、まさに可愛いヒロイン。男子生徒にモテるのも分かります。
もしも私が同い年の男子生徒なら、チラチラ気になって見ちゃって、惚れていたかもしれない。
しかし、いいのは見た目だけ! 生活態度は不真面目! あんなのヒロインと認めてたまるか!
担任の私が受け持つ魔法科の授業態度は、普通に受けているのに、それ以外の教科では、サボったり、出席しても居眠りが当たり前。
彼女がこの学校に入学して、もうすぐ一か月。
ここ数日、他の教科担任の教師から、彼女を注意しろ。指導しろと毎日苦情を言われている。
もちろん私も、すぐに注意しました。ええ、ちゃんと注意しましたとも。
不機嫌そうに、ぶすっとした顔だったけれど、『分かりました~。気をつけます~』と返事をもらいました。注意するたび、毎回同じ答えだけどね!
ここまでの語りからお察しの通り、彼女は舌の根の乾かぬ内に、すぐ寝たりサボったりを繰り返す。で、私に苦情が入る。
いやいやいや。本当にね、ふざけないでくれる? って、話よ。あなたの謝罪の言葉は、本当に言葉だけよね。
私よ、あんな問題児をヒロインと認めていいのか⁉ もちろん認めませんとも、私!
確かにマンガでは、魔法科以外の授業風景はほぼ、描かれていなかった。
だけどヒロインだもの……。まさか、王子と恋に落ちるヒロインが、居眠りサボりの常習犯だと思う訳がないじゃない! 他の教科も真面目に授業を受けていると、思うじゃない!
実際は仲の良い男子生徒とサボって、居眠りして……。最悪ですよ、本当。
あ、申し遅れました。私、この学校で魔法科を教えている三十一歳女性、マジェス・イサーラといいます。実は私には、前世の記憶があります。
とはいえ、前世を思い出したのは、つい一か月ほど前。入学式で、今や問題児となっている女子生徒を見た瞬間でした。
まさかこの年齢で前世を思い出すとは……。
遅いよね? 三十一歳で思い出しても、前世で読んでいた転生モノ作品のように、主役になれる訳がありません。しかもこの世界、平均寿命が六十なんですよ。つまり今の私は、人生折返しを過ぎた、ただのババアなんですよ。
若い頃に思い出していれば、私の人生、違っていたでしょう。
さて私の前世は、この世界とは違う科学の発達した世界で人生を送っていました。地球という星にある、日本という国で人生を終えました。
前世の私はその世界に存在していた、マンガやアニメという創作物が大好きでした。
いろいろな創作物を見たり読んだりした中に、なんと、問題児ヒロインが主役のマンガがあったのです!
そう、ここは前世で読んだマンガの世界! いや、きっと私がマンガの中の世界に転生に違いない! ヒロイン以外の登場人物も、ちゃんと存在しているし。
だけどマンガの中に、私は登場していなかった。
モブ教師ババア。それが今の私だ。
ちなみに、マンガの内容はというと……。
ヒロインは魔力が豊富で、将来有望の魔法使いだと期待され、特待生として王立学校へ入学する、平民の女の子。学校生活を送る中、一学年上の王子と、互いに惹かれあっていく。しかし王子には婚約者がおり、二人には身分差もある。そのため、なかなか互いに本心を打ち明けられない。それでも思い合っている二人は、いろいろあるけれど、最後は王子が卒業すると同時にめでたく結ばれる。そんなハッピーエンドの作品だった。
うん。改めて思い返すと、単純な内容ね。その単純さが逆に良くて、私は好きだったのよ。
ヒロインは可愛いし、王子はカッコいいし……。すれ違いもあり、なかなか結ばずやきもきしたけれど、王道のシンデレラストーリーで……。
だからヒロインがあんな困った子なので、本当、ガッカリだよ!
今さら前世を思い出しても意味がないと思っていた。だがきっと、神は私にこう言っているのだ。
居眠りや、男子生徒と二人で授業をサボる娘が、将来の王妃なんて嫌でしょう? 嫌なら前世の知識を使って、阻止しちゃいなさい。
ええ、もちろん嫌ですとも、神様!
国民の一人として、あんな王妃は絶対に嫌です!
幸いマンガの内容は、ほぼ思い出している。つまり私は、未来が分かる! それって最強ですよね?
ふふふ、覚悟しなさい、ヒロイン。生活態度を改めない限り、私が貴女の恋路を邪魔してみせるわ。
さあ、気分も落ちついたことですし、校長のもとへ相談に行きましょう。
何度注意しても口だけで正さないのは、問題ですからね。そろそろペナルティーを与えなくては。
その内容は、魔法科の授業を受けさせず、各教科担任に向けた反省文を書くこと!
モブ教師ババアの力、侮らないでね。
あらすじにも記載しておりますが、不定期掲載及び、更新頻度は遅くなります。
すみません……。
追記(平成31年1月26日(土))
お読み下さり、ありがとうございます。
修正作業にしばらくかかりますが、終了まで、誤字報告を受け付けない設定にしておりますので、そのようによろしくお願いいたします。