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生徒手帳
男はため息をついた。
雨の中タクシー乗り場へ歩みを進める。
残業、残業、残業。
今日も終電を逃した。
今朝は降ってなかった雨がスーツを叩く。
走る気力も残っていなかった。
タクシー乗り場に入ると、ベンチにぽつんと落ちた生徒手帳を見つけた。
何気なく広げるとツインテールで色白の美少女がうつっていた。
ロリコンというわけではなかったが不覚にもときめいた。
今までそんなことは無かった。遅いが初恋というやつだ。
男はそれを手にすると、今来た道を急いだ。
数メートル先の交番へと。
「生徒手帳、ですか…」
警官はぽりぽりと頭を掻いた。
不真面目というわけではないが真面目という印象も受けなかった。
ただただ面倒だなぁという雰囲気が伝わってきた。
「じゃあ、預かっておきます」
警官がそう言ったとき、ぱたぱたと中年の女性が入ってきた。
そして生徒手帳を見て安堵した表情を浮かべた。
「それ、私のです!」
男は目を疑った。
色黒でお世辞にも美人とは言えない。
「良かった…」
「…これ、亡くなった私の娘なんです。お守りなんです。」