助祭様と行商人3
酒盛りの翌朝、とーちゃんとにーちゃんが帰って来た。
「頭痛てぇ……そうそうモーブス、昨夜の酒盛りで行商人さんに伝えておいたぞ。簡単な文字や自分の名前なんかなら教えてくれるってさ。やったな。ところで水をくれ。」
「多少の毛皮とか干し肉と交換なんだから感謝しろよー。後、桶取って吐きそう……ウプッ。」
「お、おお!とーちゃん!にーちゃん!ありがとう!頑張って勉強するよー!取り合えず水飲んで!今、桶持ってくる。」
「まったく二人共だらしない……」
かーちゃんは途中で帰ってきて俺と一緒に寝たけど結構飲んでたよね?かなーりお酒臭かったよ?平気なの?
ともかくやったぜ。しっかりミッチリ教えてくれる訳じゃないみたいだけどこれで無学ともおさらばだ!ひゃっほい!
この後、かーちゃんと共に二日酔いの二人を介抱してから朝食を済まして家族で行商人のおっちゃんの所に向かいました。
「一家総出で来られるとは気合が入ってますな。はっはっは。んで坊主。いやモーブス、聞いたぞ?村の役に立ちたいんだって?立派じゃないか。」
「はい、僕はまだ小さくて村の外に出れないから中で役に立てる事を色々考えてみたんです。読み書きとか計算ならできると思ったんです。」
おk、この問答は想定済み。建前だけど文字憶えたら村の役に立つだろうし全くの嘘じゃないよね。
「おお、読み書きは聞いていたが計算もか?はっはっは。そこまで出来たら商人でも役人でもなんでもなれるぞ。まぁ貪欲なのはいいが俺がここに居る内には無理だろうなぁ。」
「そこをなんとか!文字と一緒に数字を教えてくれるだけでいいから!暗算得意なんです。」
夢の知識のおかげで四則演算までなら出来る。微分積分とかも習ったような気がするけど覚えてないね。社会に出てから使わなかったし。あれって受験以外のどこで役に立つんだろうね?疑問。
「あらモーブス、計算なんてできたの?私知らなかったわ。」
「お前指が足りないからって10以上数えられなかっただろ。嘘はいかんぞ嘘は。」
「ひど、大丈夫出来るって。かーちゃんととーちゃんの息子なんだから信じて!」
「とは言っても前例がなぁ……。」
と言ってにーちゃんをみる両親と俺と行商人のおっさん。
「ひど、お、俺だってやればできるぜ?」
にーちゃん、目を見て話して欲しい。
「まぁともかく無理すんな。計算は簡単な文字を覚えてからゆっくり覚えればいいさ。俺も長く滞在する訳じゃないし少ししか教えられんしな。」
えー全く計算できるって思われてないのぅ……ここは自己アピールせねば!
「じゃあじゃあ試して!計算できるから問題だして!頑張るから!」
「んー本当に出来るのか?じゃあそうだな……では問題だ。銅貨が100枚あるとする。銅貨七枚で買える薬を7つ買ったら余りは?」
「51枚!」(ドヤァ)
「……ですが追加で軟膏も必要になった。100リートで銅貨300枚だ。余った銅貨で何リート買える?」
「何その引っ掛け問題!?」
「勝手に勘違いしただけだろ。さぁさぁ答えは?」
「グギギ……ちょっと待って。」
どっかのクイズ番組じゃねーぞ!大人げ無くない!?つーか六歳児に出す難易度じゃねーだろ!
「えっと……17リート?」
「……おぉう?あー……正解だわ。やるじゃねーか、マジで計算得意なんだな。」
「いえい!じゃあ合格だよね!?」
「おうおう、教えてやるとも。ただまだ準備も何もしてないから明日からな。あ、ガルムさん、奥さん、話があるんでこの後お時間もらえますかね。」
「ええ、構いませんよ。」
「はい、分かりました。」
「ふへへへ……あ、かーちゃん、みんなに自慢してきて良い?」
「ん?ええ良いわよ。いってらっしゃい。お昼までには戻るのよ?」
「はーい。んじゃいってきまーす。」
やったぜ。順風満帆とはまさにこの事。
次回は初のアクション回の予定です。
うまく表現できるかな。




