兎編 ~そもそも此処は何処なんだ~
一ヶ月以内に投稿しようと決意したものの、かなり遅くなってしまいました。
学校で大きいテストがあったのも大きいですが、もうすこし投稿ペースは早くしたいです。
「・・・と、いうわけだから、よろしく~」
拝啓、お父さん、お母さん。
そちらでは元気にやっていますか。
俺は今、自分が元気なのかわかりません。
数々の親不孝をお許し下さい。
これは、あれです、そうです、それです、まあ、なんだ、これは、そうだ。
ーーーここは、何処だ。
「それじゃあ皆、元旦の日に会おうね~」
目の前に広がる美しい湖。
それを囲むは数々の動物達。
それをまた囲むように存在するのはこれまた美しい草木。
そしてそれを眺める俺はーーー兎。
俺が気がついた時には、一匹の兎が湖を眺めていた。それが自分だということを理解するのに結構かかった。
ここは、何処なんだ。
まあまず落ち着け。落ち着きは肝心だ。
俺は一体何をした?
そうだ、俺は自殺したんだ。虐めに耐え切れず、親にも頼れず、色んなものを見捨てて見捨てられて。
そして、どうしてこうなった?
走馬灯ではないよな。そうなると、転生か?
だとしたら、神様はなんて残酷なんだ!
虐めで人生を諦めたしがない中学校2年生男子を、報われることなく兎に転生させるなんて!
自分しか言ってくれる人がいないから言うけど、あんまりじゃないか!
「とうとう、この時がやってきたな」
お爺さんみたいな声で、上空に浮かんでいる龍が言った。
っへ?龍・・・だと・・・!?
そんな馬鹿な。幻想的過ぎるにも程がある!
ユニコーンとか、人魚とか、カッパもいるじゃねえか!
もしかしてここは、地球じゃないのか?俗に言う異世界というやつなのか!?
だ、駄目だ!逃げなければいけないのはわかってるけど、体が動かない!
しかし、動物達は皆、まったく動かない。
・・・あれ?
もしかして大丈夫?・・・ではなさそうだな。
皆、殺気が漂っていやかる・・・。長居は不要だ、さっさと撤退しよう!
ひょっとして俺、今から殺されるのか!?だとしたら、なんて可哀相なのだ自分よ。おおよしよし。逃げるか。
さっきよりはすこしは落ち着いたし、こんなところにいたらやばい。
龍がいる時点でオチは見えてんだよ!炎吐かれて焼き兎にされるんだろ!?知ってるよ!逃げるぞ!
そーっと、そーっと、慎重に!
ばれたら命は無いと思え!こいつらの目は本物だ、殺意で溢れてやがる・・・。
そうして、俺は少しずつ後退しはじめた。
幸い、他の動物達は、真剣に龍をみつめているので、こちらには注目していない。
音を立てなければいけるぜっ!
「とうとう、この時が来たな」
龍よ、俺をビビらせても良いこと無いぜ。なんてったって、俺は兎なんだからなっ!
それじゃあ、あばよっ!!
ピョーン!
よし!飛べるっ!行けるっ!流石のジャンプ力!
よくわからんが、あんなところにいたら死ぬ!皆目がヤバかった!
笹に突っ込み、体を擦りむき、若干よろけながら俺はジャンプし続けた。
でも、兎だからそろそろ疲れーーー。
ドッゴォーン!
凄くでかい爆発音が、俺の後ろから聞こえてきた。
背筋が凍る、というのはきっとこのことに違いない。
ししし死ぬうううっ!!
止まるな自分っ!跳べ跳べ跳べ跳べっ!
耳を立てると、後ろから何かが走って来るような音がする。
まさか、追っ手!?
何故追われてるのかはわからんが、追っ手!?
こ、これはやばい。どこかに隠れなければなるまいが、疲れたせいでジャンプの着地に失敗、地面にひっくり返った。思いっきり頭を打ち、一瞬動けなくなった。
ズドドドドドド!
明らかにやばい足音が近くで聞こえる。
まるで土砂崩れが起こっているかのようだった。
あ、これは終わったな、と反射的に思った。
これは駄目だ。お父さん、お母さん、僕はまた親不孝をしてしまいますーーー。
ズドドドドドド!!
足跡がすぐそばで聞こえた。兎だから耳が良いのかもしれないが、ここは明らかにやつの通る進路だ。
踏み潰されたら絶対死ぬが、起き上がった時点でもう手遅れだった。
ガサガサ!バサッ!
草むらを掻き分け、茶色くて大きく、とてつもなく大きいモノが俺の目の前に表れた。
恐怖で体が凍りつく。息がつまる。
しかし。
ザザザザザザザザ・・・!
そいつは俺の体を踏むことなく、あっさりと向こう側の草むらに飛び込んで行った。
し、死ぬかと思った・・・。
俺はその場にへたりこみ、安堵のため息をついた。兎でもため息つけるんだな。
しかし、俺は再び気がついた。
まだ何か音が聞こえる。
さっきのやつよりは明らかに小さいが、微かにこちらに向かってくるような、草を掠めて土を踏むような音が聞こえる。ここもさっきの場所とはそんなに離れていないと思うし、やっぱりここも危険なのかもしれない。
奇跡的に手にしたハズレに等しそうな当たりくじだ。
ここでふいにしてたまるか!
ここはひとまず隠れよう。疲れて今は動けん。
俺は近くにあった木の根本の窪みで一旦休むことにした。
ここなら草むらに隠れてるから、みつからないだろ、多分。
ああ、つかれたな・・・あんまり転生したっていう感覚はないけど、実際に俺は兎なんだよな。
そう考えると悲しい。どうせなら龍に生まれ変わりたかった。
とりあえず一旦寝るか。
ここなら滅多なことがなければみつからないだろうし、大きな音が聞こえてくれば起きるだろうし。
こうゆうとこは、兎の聴力の良さはよかったのかもな。
敵に気付かれる前にこちらが音で気づくことができるんだから。
寝てたらあんまり意味無いかもしれないけど。
ああ駄目だ。横たわってたら頭も働かなくなってきた。
もう寝よう。すべて考えるのは明日からだ。