第二話:ワルツ第二楽章
それからさらに一週間が立った。
錬金術の応用に入ってから生傷は増えるしなんか八雲さんはピリピリしてるし薫さんは俺のバイト先の定食屋【オタメ】でバカ食いしてつけを溜めていくし、木葉さんはたまに俺を危ない目で見てくるし何回もヨシさんとナナさんにメガネ取られそうになるし・・・はぁー。
そして今日の補習は第七グラウンドに召集。しかも特務科との正式な配属訓練だ。
つーか特務科って何かをまだ聞いていない。
そんでもって、なんでも第七グラウンドはこの学校の地下にあるそうな。
しかも今日はいきなり実戦訓練。楽しみで楽しみで涙が出てきたよ。
でも・・・
「・・・迷った」
ここどこだ?
たしからせん階段をひたすら下って来たからここは地下のはずだ。
でも目の前にはどう考えても相当長い間使われていない雰囲気の錆びついた扉。
「まぁでも入ってみないとわっかんないよね」
ノブを回そうとするが開かない。
≪パスワー・・ド・・ヲ、ニュ・・・ニュウリョクシテク・・・クダサイ≫
明らかにもうここはグラウンドではない。それはわかっている。だけども気になるお年頃ってやつだ。
「それにパスワードって響きは男を狂わせるのさ」
自分でも意味のわからない言い訳をしながらドアの隣についてるパスワード照合機に手を伸ばす。
たぶんボイスが出たんだからこっちも動いるはずだ。
「それに22桁のパスワードが合うわけがないしね」
多すぎだろ数字。
まぁ適当に入力する。
「適当適当。えっと、09121521051324182118っと!」
ん〜我ながら適当だ。会うわけないな。
≪パスワード照合完了。ドアガ、開キマス。ゴ注意クダサイ≫
「うぉ!当たった!それになんか声も元気になってる!」
ドアからカチリとドアの開く音。
≪ガチャ≫
「失礼しまーす・・・って汚い!」
部屋の中は、なんとなく研究所だった場所のようだ。。
だった、と過去形なのはあまりに時間が立って錆びついてしまっているからだ。
それにほとんどの物という物が壊れていたり倒れていたり。かつて火事でもあったのか焦げてしまっているものもある。
そんな研究所だった場所・・・。お化け屋敷っぽくてわくわくすんゾ!(悟空風)
「探検探検また探検♪」
そうとう広い場所のようだ。どんどん奥に広がっている。
開かない扉はボクトーでふっ飛ばしながら進む。
まっ暗闇だけど体外錬金のおかげで十分に見える。
まぁ体外錬金とは、体に霊力を纏うことです。二話参照。
何個かまだ生きている機械があるようで、どうやらそれらの機械があの入り口のロックシステムを動かしているようだ。
電源来てるのお驚きだけどね。
どんどん進むと、開けた場所に出た。
さっきまでは歩く場所がないほど機械でびっしりだったのに、この部屋にはまったくない。
その代りにひときわ大きな真っ赤な扉がそびえ立っていた。
≪パ・・・パスワ・・・ワードヲニュウリョクシ・・・シテクダサ・・イ≫
おぉう覚えてねぇ!読了時間2,3分程度戻って見てこなきゃ!
口に出しててよかったぁ〜
「えぇっとなになに?『パスワードって響きは男を狂わせるのさ』・・・ってここじゃねぇ!んっと『そもそも22桁』・・・ってそこでもねぇ!んっとあったあった!『09121521051324182118』っと」
≪パスワード入力完了です。アリガトウゴザイマシタマタオコシクダシマセー≫
もう来ねぇよ
その部屋は、明らかにほかとは違った。
空気が違う。造りがちがう。そしてなにより
「なんだ?なんで俺はこんなにも・・・」
胸の奥でなにかが震えている。なんだこれは?なんで俺はこんなにも・・・
「こんなにも霊力が共鳴してる?いったい何があるんだ?」
その先には、たしかにそれがあった。
丸い台座の上に大事に置かれ、さらにその上からガラス・・・いや、霊力強化ガラスをかぶせられたケースに何重にも包まれ、それでも光と闇をその身に載せながら放つ深紅の輝き。
「籠手?・・いや、手甲?」
幾筋もの飾り彫りと窪みにルーンの文字。間違いなく魔導具だ。
その輝きから目を外すと、ケースの側面は古代ルーン文字で埋め尽くされていた。
「なになに?えっと・・・あぁ、これは動詞活用か!そうすると・・・【この宝戒に触ることなかれ、求めることなかれ。触りし者求めし者、その身をもって禁忌となし、無限の苦痛に囚わるであろう。この宝戒、選ばれし者を選びし物。その身に女神の祝福あらんことを。その身の全てを解き放たんことを・・・】だって?」
あいかわらずルーンは言いたいことがわからない。もっと単刀直入にいけよ。
「でもどうしてこんなところに魔導のルーンが?」
「それはかつてそれがこの場所で研究されていたからです」
ビクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「ヒャゥッ!や、八雲さん!?」
そこには確かに八雲さんが立っていた。
「・・・そんなに驚くことですか?姫の錬金の余波を辿ってきただけです」
あぁ、なーんだ。この前の頭殴られたショックで幻覚見えたかと思った。
「その・・・さっきの研究って?」
「そもそもその赤鐵甲は、コントラクトのない供給者にコントラクトを付加させることができる物だそうです」
「えぇぇ!!?そんなことが可能なんですか!?」
コントラクトとは、そもそもそれ自体がいまだに解明されていない不確かなものなのだ。解明されていないから、俺は苦しんだ。付加させるなんて不可能もいいところだ。
「私はその場面を知りませんし、そもそもこの研究中にも1度も成功していないようです」
「まぁ、幾人もの犠牲者を生んでしまった、歴史に消えた悲しい兵器ですが」
犠牲?まさかそれって・・・
「姫は天精戦争って知っていますか?」
「ええ。」
天精戦争・・・5百年前に起こった、今よりも数百年先の技術を有する天宙種族と名乗る者たちと、今の精霊魔導士の原型となった精霊騎士団と供給者達の、十年間続いた歴史上最大の戦争だ。
確か勝者は精霊騎士団だった気がする。歴史は苦手なんだ。これ以上解説できない。
「その戦争のいわゆる末期、天宙軍は精霊騎士による圧倒的な魔導攻撃により壊滅の危機に立っていました。そこで天宙軍はその技術の全てをかけてコントラクトを開発することを決意します」
そこから先はだいたいこうだ。
一人の協力者から取れるだけのデータを取り、それをもとに急ピッチで開発を進める。
そして一年の歳月をかけて遂に完成。もうほとんど壊滅寸前の天宙軍にとっては正に救世主だった。
しかしここで予期せぬ事態が発生する。
天宙の技術者たちは、焦りすぎて人体実験をすっぽり抜かしてしまっていた。
しかしもう時間がない天宙軍は強制的に実戦投入するが誰一人としてまともに使えなかった。
それどころか次々とその激痛と浸食で人格崩壊していってしまった。
そしてそうこうしているうちに天宙軍の首都が陥落し、戦争は終結。研究所はその兵器と共に土の下深くに埋められてしまった・・・そうだ。
「まさかその兵器がこの紅鐵甲で研究所っていうのが・・・」
「姫は勘がいいですね。そう、ここです。そもそもオリオン都市とはこの研究所を悪しきことに使わないように監視・保管するために作られたものですし」
そんなものがあったのか。
「でもなんで八雲さんは知っているんですか?」
「生徒会長にでもなれば、知ってて当然のことです。まぁこの秘密は私を除いて学院長と一部の教職員だけしか知りませんでしたが。姫も知ってしまいましたね」
「まさか、秘密を知ったものは・・・」
そんな、まさか!
「消されます・・・なんてそんなことがあるわけないでしょう?バカを言ってないで第七グラウンドへ行きますよ。迷子さん」
あぁ、からかわれてばっか。
知っているんならさっさと連れていけばいいのに!
★
第七グラウンドに到着。野戦場よりは狭いし障害物も少ないが、確かに実戦訓練には向いている場所だった。
八雲さん曰く、つい昨日補修工事が終わったそうな。キレイだ。
「遅すぎるぞ陽乃!昼休み終了と同時に始めると言ってあるだろう!今何時間目だ?6時間目だ!今日はさらにしごいてやる!」
「いや、迷子になっていたんですって!」
「バカか!ここは校庭から階段降りてすぐの場所だぞ!迷うわけがないだろう!」
いやでも・・・
「先生、姫は方向音痴です」
「だーから言ったろ?マジなんだって」
アリガトウ八雲さん!薫さん!涙が・・・涙が止まらないよ!
「まぁ今回はどうも故意だったようですが」
うぉぉい!何言っちゃってんだよ!
「やはりな。許せん」
おえ?先生!それボクトーじゃなくね?ねぇ!」
「今回は私の実戦用の錬金核を見せてやろう。リリーズ!」
片手に持っていた明らかにボクトーのそれよりも長いIsが発光する。
「その名も【金剛剣】だ!」
ブワアァァァっと波動を飛ばしながら現れたその錬金核は、その丈俺と同じくらいはありそうな長さ、そして悠然と光る金色の両刃。
「普通なら振り回すことなんてできないが、体外錬金の力でこの通り」
そのままぶんぶん振りまわす。なるほど、これなら十分集団戦にも一対一にも使える。
「さぁ、実戦訓練だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
できるか!死ぬわ!
ポニーテールを照明に照らしながら振りかぶるミナコ先生。
あぁ、もう・・・なんと言うか・・・
夢でありますように!
「ケラケラケラケラ!んなもん使っちゃダメだろセンセー!リリーズっと!」
≪ガキィィィィン≫
「む!薫か!邪魔をするな!」
うっすら閉じていた目を開くと、目の前には薫さんの流れるような体が。
その手に握られた二本のトンファーで先生の一撃を食い止めてくれたようだった。
「んなこと言ったって・・・そんなもんでいきなりぶっ叩いたらいくら坊主が体外錬金をマスターしててもたんこぶじゃ済まないって」
≪ガキンッ≫
そのまま間合いを取る二人。
「ばかだな、薫は。戦闘とは常に急を要するもの。咄嗟の判断がその身を守るのだぞ!」
そのままとりあえず金剛剣を戻してくれる先生。よかった・・・
「んなこと言ったってな・・・坊主がほんとに実戦に立つのはまだまだ先なんだから。ゆっくりやってかねーとマジで死んじまうぞ?」
「ぐっ・・・まぁ、それもそうだな」
あぁ、なんだかんだで薫さんは俺に優しいんだよな。気にかけてくれるというか。
それに先生もなんか薫さんの言うことを聞くって言うか。というか八雲さんも茶化していたよな、薫さん・・つ、強い・・・
「あ、ありがとうございます」
「いいっていいって。まぁ坊主も坊主だぞ?あのくらいならすぐリリーズして避けるなり受けるなりしねーと。いくら霊力や才能があっても意味がねーぞ」
「すいません・・・」
あのくらいって・・・マジで死ぬかと思ったんだが。
しょぼーん
「ケラケラケラ!坊主は本当にかわいいなぁ!だっこしてやるから泣くなって!」
そういってひょいっと持ち上げられる。
「うぉぅ!ちょっと薫さん!おろしてください!」
は、恥ずかしいやら何やら・・・イヤァァァァァァァァァァ
そんなに小さくないのに!平均よりもすこーーっし小さいくらいなのに!
「ちょっと薫!?なにをしているんですか!?」
「おい薫!そう言うおまえがそんな態度ではないか!」
「ケラケラケラ!長身の特権ってやつだな。逃げんぞ坊主!」
そのまま俺を・・・今度はお、お姫様抱っこしたまま走り出す薫さん。
「ちょっと!恥ずかしいですって!おろしてください!」
暴れようにも薫さんの掛けた加重錬金のせいで体が動かない。
まぁでもなんか落ち着く・・・ってそんなのだめだろ!流されるな俺!
「文字どおりお姫様というわけですか薫・・・リリーズ」
うわぁ!八雲さんがリリーズした!
「姫もろともこの【トライデント】の錆にしてあげます」
三又槍!?
「薫?陽乃?真っ二つに叩き割ってやるぞ」
金剛剣!?
「薫さんなんかヤバいですよ!?」
「あぁ、そうだな。このグラウンドじゃ狭すぎる」
え?ちょっと待って!外には出ないで!ダメだって!
「外はやめてぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇええ!!!!!!!!!」
「あぁん?授業中なんだから大丈夫だって!」
「生徒全員いるってことですよね!?そうですよね!?」
あぁ、階段を昇り切ってしまう・・・後ろの二人は目が据わってる・・・
「ケラケラケラ!坊主!加速すんぞ!つかまっときな!」
≪ガクンッ≫
そのまま俺はお姫様だっこのまま音速の壁を突き破った。
気絶した。
パンパカパーン♪
ナナ・ヨシ「「オリオン調査レポート報告会略してオリレポ!始まるよ?始まるよ!」」
ナナ「さぁ始まりましたねオリレポ!このコーナーは後書きを利用してこの物語の補完・・・もとい紹介をしていく・・・」
ヨシ「私たちの存在意義をかけたコーナーです!」
ナナ「あんた・・・間違ってはいないけど重いわよ」
ヨシ「だって〜ほんとに出番無くなっちゃうかもだよ?」
ナナ「そうならないように調べてきたんでしょ?さぁヨシ?栄えある第一回のテーマは!?」
ヨシ「今が旬!越中かに道楽食べつくしの旅パート4でっす!」
ナナ「スルーします。もう一回どうぞ」
ヨシ「す、すんません・・・はい!今回のテーマは!」
ヨシ、フリップを取り出す。
ヨシ「ドン!オリオン学園都市案内パート1!でーす」
ナナ「なるほどね。まぁフリップの意味はまったくないんだけど」
ヨシ「気分の問題よ!さぁ始めるわよ!」
ナナ「OK!そもそもオリオン学園都市は、大学を中心として四つのブロックに分けられています」
ヨシ「真中に大学の巨大ビル群。工学部系から専門学まで、全てがここで学べます。まぁアメリカの摩天楼を切り取ったような感じでっす」
ナナ「そこから北に見た場所が、中等部ブロック。山沿いに加えて狭い場所のため、長崎風の坂の多い街になってます。オランダ坂ならぬオリオン坂や、路面電車の走る、日本と異国の混ざった街並みです」
ヨシ「西に行くと初等部ブロック。駅と寮棟のある広めのブロックで、駅デパートや外部系のショップが並ぶ参道もあります。下手な町よりもよっぽど充実してるんだって」
ナナ「まぁ高いんだけどね〜。グロス一本ここで買うならオリヨシ(ディスカウントショップね)で3本は買えるし・・・」
ヨシ「えっと、寮棟はかなりたくさんあって、学校別なのが基本なんだけど、グレードによって入れる寮もあるんだとか。一応完全寮制だからお嬢様とかが入る前部屋スイートとかもあるんだよね・・・ちなみに私とナナは【きさらぎそう】で、まぁ平均的な家賃(食費こみ)かなぁ」
八雲「ちなみに姫は共同寮【オリオンハイツ12号館】の40・・・」
ナナ「わーーーーーーーー!わーーーーーーー!けっこういろんな人見てるんだから言っちゃダメだって!」
ヨシ「っていうかなんでカイチョーがいんの?」
八雲「さぁ・・・?」
ナナ「さては尺の問題で作者に召喚されたな・・・」
ヨシ「ナナ、リアルだね」
カンペ『終わらせます。かっこよく締めてください』
ナナ「無茶ぶりだな・・・ヨシ!昨日徹夜で考え奴行くよ」
ヨシ「OK!」
ナナヨシ「「次回は・・・」」
八雲「次回はオリオン学園案内パート2です。またお会いしましょう」
ナナヨシ「!!そこで取るか普通!」
作者「次回は少し遅くなるかもしれません。根性出して更新がんばります!お楽しみに!」