第一話:ワルツ
朝。
寝汗をかいた髪を掻きあげ、自然と目が覚める自分に驚く。
・・・が、睡魔が俺を優しく誘惑する。
≪いやーんもっと寝て行ってーン≫
わかってるさ睡魔よ。俺はお前を置いていくようなことはしないさ。
さぁもう一度行こうじゃないか!夢の国へ!
「・・・それは二度寝と言うのです」
そっすね。
昨日は星が輝く窓も、今は鮮やかな青が眩しい。
晴れた日の朝は、なんか興奮するよな。
「・・・〜今何時だと思っていらっしゃるんですか?」
「ん?朝の8時・・・って!朝の連続テレビ小説始まってんじゃん!」
やっべ!見逃したら付いていけなくなっちゃう!
テレビのチャンネルを探す。(リモコンなのに、チャンネルと言っちゃうの。秋田は田舎なの)
「違います。今朝はあなたの登校初日の日です。ちなみにすでに遅刻してるんですが」
・・・登校初日?
遅刻?
「おいおい坊主ー朝礼もう終わっちまうぞ?」
キッチンで勝手に食パン焼いて食ってる薫さん発見。
ん?ちょっと待て?
「なんで勝手に人の部屋に入ってるんすか!?」
「いや、今気付いたのかよ・・・」
「あなたが約束の時間になっても現れないため電話をしたんですが出ず、仕方がないので寮まで来たらなんと不用心にドアが開いていたため、一抹の不安と寝坊の確定したあなたへの制裁に対するワクワク感を胸に入ってみました。」
無表情かつ冷めた声でこんなことを言われても、反応できない。
まぁ声が笑っているから冗談だろうけど
「まぁでも起こそうとしたら、寝顔にノックアウトされたってか?ケラケラケラケラ」
わ、笑い方豪快だな。
「薫・・・余計なこと言わないことを強くお勧めします」
「ん?私はノックアウトされたけど?」
「私は至ってそういったことはありません。勘違いしないように」
「またまたそんなこと言っちゃって!頭から水蒸気噴き出したの誰だっけ?」
「薫?私の話を聞いてました?」
いや、その前に何の話?
「あの、遅刻じゃないんですか」
「あぁ、いいんだって!遅刻の原因は編入生君の寝坊ってことになってるし?ケラケラケラケラ」
冗談じゃない!なんて恐ろしい女の子だ!
「急ぎましょうよ!」
「急ぐのはあなたです。」
「坊主、朝飯食わないともたねーぞ?」
ベットからはね起き服に手をかけ・・・
の前に、
「着替えますから部屋から出ていって下さい!」
あ、昨日の補習の筋肉痛がっぁぁ
★
「ここがおまえの新しいクラスだ。初めが肝心だと聞く。外さないようにな」
こっちを振り返って美奈子先生がニヤリと笑う。
「ハードルあげないでください」
教室の上には【2−C】の文字が。ここが俺の新しい出発点。
昨日買ったメガネをクイッと上げて、しっかり前髪を梳かしておく。
気合い入れて、行きましょう。
≪ガラガラガラ≫
「はやく席に着くんだ。はい、起立!」
気をつけー礼ーおはようございますのどきに行ってもおんなじのあいさつ黄金律を決め、みんなが席に着く音を聞く。
「いよいよだぞ、俺!はずすなよ」
手に何度も精神安定剤を出す。いや、これはだめだ、でも飲まなきゃやってらんねぇ・・・っ。
「えー今日から、編入生が来ることは言ってたよな。入ってくれ!」
かっちこっちのまま、教室に入る。うぅ・・・みんなの目が痛い・・・
「こんにちは、陽乃 紅姫です。ベニヒメって書いてコウキって呼びます。よろしくお願いします」
黒板にチョークで名前を書きながら決めた、自虐この上ない掴みを発動する。
「・・・・・・・・」
あら?反応が・・・
笑ってたよね?俺。
「・・・・・・・・・・」
アリア、どうやら俺は編入初日から外したようです。
★
「せ、先生・・・編入生って、男の子?」
「そうだ。仲良くな」
「ちょっとヨシ!あんた地味目の娘って嘘じゃないのよ!」
「違うわよナナァ!あんの双子がぁぁ!」
「でもなんか超前髪長くね?」
「つーかメガネと前髪で顔見えねーし」
「なんかすっごい地味目なことは当たってるよね、ヨシ」
「なんか男の子って新鮮ー」
以上、俺の知らない所で行われていたガールズネットワークでした。
「フッ、やっぱりあのままっていう私の考えは当たったようね。ここで一気に私がアプローチをかけることで彼に大きな印象を与えると共に、他のクラスの連中が話しかけるきっかけを作ることで潜在的な部分での仲間を作りやすくしておけば・・・クックック」
★
「こ、この前はありがとう」
「ん?あぁ、確か木葉さんだっけ?」
HRになってアヤノ先生と薫さんと八雲さんが出て行ってから一人寂しく机にポツンしていた俺に、背中から声がかかった。
うーむ、こうやって見るとなんかすっごいかわいいな、この人。
「うん、コウキくんは前はどこにいたの?」
長めのボブのゆらしながらさりげなく俺の前に座る。
うん、女の子万歳。
「秋田の方から来たんだ。木葉さんはもとからここの人?」
まぁ群馬出身ってのも都会と言って良いものかは知らないが。
「ううん。東京なんだ」
「そうなんだ、俺修学旅行でいったことあるんだ」
「修学旅行ね・・・」
「楽しかったんだよねー建物おっきくてさ、焦った焦った」
思い出を熱く語る俺。東京はでかい。なんせ首都だ。
「くっアッハハハハ」
「なんだよー!笑わなくたっていいじゃないか」
「だって、建物って・・・アッハッハハハ」
むっとしてる俺だが、笑っている木葉さんはかわいいから、まいっか。
「なになに?木葉もうなかよくなったの?あたし白鳥奈々子。よろしくぅ?」
「あ、ナナずるい!よろしくね?陽乃くん。あたし喜子って言うの。漢字ダッセーからヨシでヨロ」
うぉう!なんか元気よさげな女の子達だな・・・
「あ、よろしく」
「ちょっとちょっと!ナナ、ヨシマジ邪魔なんすけど」
「うちはカヨコ!よろしく!」
「えっとえっと水瓶です。よろ・・・「ちょっとミキそんなんじゃだめだって!あ、私キョウコでっす!」そんなぁ、かぶせないでよぉ!」
おぉ?なんか人だかりが・・・
「つーか秋田から来たんだー」
「メガネとって!後前髪も!」
「なんでこの学校にきたん?」
ん?ん?ん?ん?んー?
「ちょっと他のクラスの奴来てんじゃねーかよ」
「まぁいいんじゃない?というより陽乃クン!ここだけの話、彼女いんの?」
「いや、いないですけど・・・」
アリアは幼名馴染みだろうし、カトレアさまもそうだ。
あ、ちなみにカトレアさまって言うのはシリウスの・・・まぁ絶対的トップの四天空の一角、ネプトゥーネス家の一人娘で俺とアリアの姉代わりでご近所さんだった人だ。ちなみに一歳しか変わらないが、俺より背が高い。ちなみに特務科の皆さんも全員高い。
まぁ詳しくは、機会があれば。
「いないですけどぉ?いないけど、そう言った対象の女の子はいたんだねぇ?」
なんか木葉さんがピクッとした気がするが・・・
「いません!生まれてから一人もいません!」
「まぁいないだろうな」
「ハゥッ」
ナナさん、刺さります。
「はいはいはーい質問しつもーん!」
「わたしも〜っていうかメガネ外して〜!」
「ちょっとおさないでよ!」
「うるせぇな!やんのか?」
こ、怖いよぉ・・・誰か助けちゃくれませんかぁ
ってか女の子ってこんなに怖かったか?ん〜怖かったな。
ってなんか人おおすぎるよ!
どうにかしてーーーー
★
ここで私がやんわりとやばくない?みたいな雰囲気を作りながら彼を助けるようなしぐさを見せる!完璧よ。
いま私には二人の幸せが見えるわ・・・
「ねぇ、みんな?ちょっとこれは≪ガラガラガラ≫「おいおい!さっさと席に着かんか!一時間目のチャイムは鳴ったぞ!」チッ・・・」
「やべ!死にかけだ!」
「ゾンビ足速やいからな」
「撤収!徹収!」
さっきまであんなにたくさんいた人だかりが一気に散っていく。
こう言った所はむしろ感服する。
にしても失敗しちゃったじゃないの!ったくあの歩く寿命の神秘め!まぁいいわ。策はまだある。
フッフッフ
机上の理論は完璧よ。
「・・・すいません遅れました」
「遅れまっしたーさーせん」
フッフッフッフッフッフ
★
八雲はイライラしていた。顔には出さないが。
編入生の彼を迎えてから一週間。
まぁ一応やじうまの方は減ったのだが、問題は彼のほうにあった。
バイトは寮の下の階で営む定食屋らしい。何回か行っている・・・というか常連の場所なので気にはならないし、毎日きちんと錬金術の補習を受けている。
だが行く先々でちやほや&特別扱いされてなんとなくいい気になっているような気がするのだ。
なんとなく同じクラスの木葉さんといつも一緒にいるし。
それが一番気になった。
なんでこんなにもイライラするのかはわからなかった。
ただ漠然といやなのだ。
「これが・・・恋というやつでしょうか。なんてね」
ただ、そうなる可能性は自分でもあるのかもしれないと思っている。なんせまともに話した男の人は父と使用人を除いて彼が初めてだ。
「おーい八雲!次は錬金術の日だろ?さっさと行こうぜー。遅くなったらまーた遅刻扱いされちまうぞ」
「わかっています」
まぁとりあえずこのイライラを彼にぶつけるとしましょう。
ぼっこぼこにしてやります
★
毎週金曜日は午後いっぱいを使って錬金術の授業だ。まぁ実は二回目なんだけど。
この前は木葉さんと組んだから、今日もそうなのかな?
「コウキくん!また私「陽乃紅姫クン、私と組みましょう」と・・・なんでもない」
ん?今日は生徒会長と?
「いいですよ。でも相手になりますか?薫さんじゃないと大けがするってこの前言ってた気が・・・」
「いいんです。今回は私が陽乃紅姫クンの成長をチェックさせてもらいます」
そういうと生徒会長はボクトーをリリーズした。
なんかいつにも増してオーラが禍々しいような・・・
それにチェックってあの時の痛い記憶が・・・
「あの、フルネームはちょっと勘弁してもらえませんか?」
ボクトーどうしで軽く組みながら話す。
「なら何と呼びましょうか。コウキくんは既に使用済みですし陽乃くんでは新鮮味に欠けます」
「いや、なんでもいいですよ?」
「なら紅ちゃん?」
「バブー・・・って違うでしょう!」
「いい反応です。そうですね、では姫は?」
「いやです。それにどう考えても俺男でしょう?」
姫って・・・変態じゃん俺。
せめて向こうでもお姫様くらいの悪口だった。
「嫌がる姿勢が気に入りました。私は姫と呼ぶことにしましょう」
「えぇぇ!?」
「いい反応です。ますます気に入りました」
えぇぇ?決定?ちょっと待ってくれ!恥ずかしすぎる!
「それでは姫。さっそく模擬戦に入りましょう。チェック開始です」
なんか口調が怖い。
嫌な予感しかしないが・・・
「突破衝対貫!」
「ギャァアアァア!」
武道錬金術の基礎、突破の一対一用術らしい。通称二式。食らうと気絶するが、まだ体外錬金を応用しきれない俺にとっては必殺の一撃だ。
「コ、コウキくん!何か出てる!出ちゃってる!」
え?俺が俺を見てる・・・ってぇぇぇえええええええぇえええ!!?
「ケラケラケラケラ!おまえサイコーだな!」
「こらそこ!なにをしている!ってどうした陽乃!」
だれか戻して!早く戻して!
いやだよ船頭さん!まだそっちには行けないよ!
「ふー。スッキリしました」
すんなよ!
女子高生R:「というわけで、紅姫クンが元女子高のオリオン大学付属学院高等部【きさらぎ】に編入いたしましたー!」
女子高生P:「ところであんた誰よ?」
女子学生R:「作者さんからこの作品の人物の調査と紹介を頼まれた2−Cの良心、ナナさね!」
女子学生P:「ナナかよ!この部屋暗くて顔わかんないって!ちなみにヨシだかんね?」
ナナ:「しょうがないじゃない?身内を調べる仕事なんだし。面割れたら次の錬金授業で公開処刑だよ?」
ヨシ:「怖!そんなリアルな単語使わないでよ!・・・っていうかその調査って仕事は私のキャラを立てるために用意された仕事だと思ってたんですけど」
ナナ:「邪魔だけはしないでよ!?失敗したらたぶん作者から出番減らされんよ?」
ヨシ:「えぇ!?今後チョイ役が予想されてるのにさらに減っちゃうの!?勘弁してよ!一話毎の読了時間平均一分未満なんて悲しすぎるよ!」
ナナ:「その数字のほうがリアルで怖いわ!ヨシ!次からばっちり紹介できるように調べ上げておくわよ!」
ヨシ:「了解!っていうか紹介できなきゃ消されて、調査バレテも消されるんだね・・・私たち」
ナナ:「カヨコ達よりマシよ!まぁ失敗したらあの子らに回るんでしょうけど・・・」
ヨシ:「世界一いやな引き継ぎ作業ね・・・」
ナナ・ヨシ:「「次回からさっそく紹介を始めます!お楽しみに・・・みなさんどうぞ、どうぞごひいきに!!!」」
作者:「なんかこう言うのって書いてて少し寂しくなってくるような・・・ハッ!何でもないぞ!なんでも・・・」
次回=紅姫の毎日?お楽しみに!