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プレリュード第三番

ベットの上で目を覚ます。




「あー・・・まだ頭ががんがんする」


最後にボクトー(錬金強化)で脳天にクリーンヒットを食らって気絶。俺の頭がい骨に感謝。


こんな気絶の仕方をしたのはまだ小学校に入る前にしていた護身術講座の時にアリアが前の日の喧嘩を根に持って繰り出した幻の左を食らって以来だ。


アリアに殴られたのはあれが最後だが、あまりに痛かった。


「・・・編入生相手のテストだからって、ここまでする必要りましたか?」


「すまん。ここまでするつもりはなかった。」


「まったく。ミナコ先生もいい大人何ですから、加減と言うものを覚えてください」


「まぁいいじゃねーか八雲。それで?センセーはあの編入生をどうするつもりだい?」


「・・・まだ錬金術と言うものを知らないからしょうがないだろうが、いずれは特務科に入れようと思う。八雲はどう思う?」


「私はそれより・・・」


ベットのまわりに掛けられた白いカーテンの向こうで声が聞こえる。


以外にも担任(仮)は、生徒に叱られているようだ。


そのまえに、頭に乗ってる氷が完全に溶けてしまっている。気持ち悪いのに加えて顔中びしょぬれだ。


うっとうしい前髪を払いのける。


久しぶりの視界クリーンだ。外気が冷たい。


「あのー」


その声にカーテンの向こう側の人達は焦ったようだ。シャッとカーテンが開く。


「大丈夫ですか、けがの具合は・・・・・って失礼ですが誰ですか?」


「いや、陽乃 紅姫ですけど」


え?なんか違う人にでもなっちゃってる?何々?一大事?


「おまえ、前髪上げてんのか?」


褐色肌のいかにもスポーツ系の女の人が聞いてくる。


「はぁ。髪に張り付いて気持ち悪いので・・・の前にどなたですか?あと先生の名前も聞いてないんですけど・・・」


驚かれてもこっちが困る。あんた誰だよ。


「あぁ、すまない。私の名前は水原 美奈子だ。美奈子先生でも先生でも水原先生でもなんとでも呼んでくれ。そしてこっちにいるのがそこにいる八雲と同じクラスで特務科、そして昨日副会長になった火崎 薫だ」


先生はポニーを翻しながらニコッと笑った。ん、美人。すんげー美人。


「そういうことでよろしくな!転入生君?」


こっちのスポ−ツできそうな女の人・・・薫さんだっけ?も、お人形みたいな八雲さんやキリリとした先生とはまた違う、人懐っこさのなかにある頼れる姉貴って感じの美しさがある気がした。


「あ、陽乃 紅姫です。よ、よ、よろしくお願いしますね?」


きちんとアリアに言われたとおり、相手の顔を見てにっこり笑って頭を下げる。うん。完璧だっずぇ!


「あ?あーうん。よろしく」


「お?おう。よろしくな!」


二人して顔を赤くしているのだが・・・俺は成長した自分を必死に褒めちぎるのに忙しく、見逃しちゃっていた。



それから一時間の休養を八雲さんから言い渡さた。


ん?八雲さんも顔赤かったな。俺に恋でもしたか・・・ってのはないな。悲しいけど。


「というか編入していきなり保健室。二日目なのに・・・。まだ授業にすら出てないのに・・・」


時間はもう6時。つーか八雲さん生徒会室来いって言ってたけど、どこだっつー話・・・


まぁ仕方がないからとりあえずシーツをたたんで保健室を出る。


薬品の香りは、いろいろと思い出すから好きじゃない。


あの日々を。


夕日差し込む廊下をとぼとぼ歩く。たぶん生徒会室は一番上の階だ。


「あぁ、気分も黄昏」


っというよりこの校舎、かなり作りがシンプルなようだ。


一つの大きな縦長の校舎がデンと一つあり、そのとなりにコの字になるように小さな校舎が渡り廊下で繋がっている。


まぁ全部洋式の造りになっているんだけど。


そして正面玄関入ってすぐの場所に巨大な階段がある。貴族の屋敷のような奴だ。


「たしか西の方の階段を下ってきた気がしないでもないから・・・こっちに・・・んであっちに・・・」


・・・


・・・・


・・・・・


・・・・・・


・・・・・・・


「迷った」


完全に迷った。ここどこだ?今何階だ?


「やっべ!気分が倍速で黄昏・・・」


ああ、憎きかな方向音痴!


「んー誰かに聞こうにもそもそも今日学校休みだし・・・」


部活生もまったくいない。そういえばほとんどの部活動は他の高校や大学なんかと共同してるんだっけ。



「んっと・・・よいしょ」


階段を上がってくる人影。夕暮れの日差しが逆光で、よく見えないが・・・シルエットと声からして女の子だ。まぁ女子高だし。


その少女は、何冊もの本を抱えて、ふらふらになりながら階段を上ってきていたようだ。


危なっかしいことこの上ない。


「あっ・・・きゃぁ」


それは一瞬の出来事。顔までつみあがった本のせいで階段を踏み外し、そのまま本の重みで急速落下。


階段最上段からの落下。落ちれば怪我じゃすまされないことは確かな高さだ。


「間に合え!リリーズ!」


ポケットからIsを取り出しボクトーへ解除。


下へ下へと重力にひっぱられながら階段を落下していく女の子。


間に合わない?くそったれがぁぁぁぁ!


のばされた手を追いかけ自分も落下する。


ボクトーを軸にして霊力を足に付加。そのまま跳んで彼女の手をつかみ・・・


迫る地面。コンクリートに恋をするほど俺はドMじゃない。ドMじゃないんだ!


彼女を上にし抱きとめながら落下の重力を流す、いわゆる空中回転をかます。


ボクトーによる霊力供給の賜物だ。そのままバランスよく着地。足にものすごい衝撃と、なれない霊力の使用での疲労が一気に流れ込んでくるがそこは男の子の気合いでカバー。


呆然とするその少女に笑いかけるだけの余裕はないのだが、そこも男の子の気合いでカバー。


舞い上がるうざったい前髪を払いのけ、まるでお姫様だっこのような状態にも気付かないまま、軽く話しかける。


「生徒会室ってどこ?」


・・・彼女は、気絶した。



「・・・まったくもって迷惑な話です」


気絶した少女を抱えたままどうしようもなくパニックになっていたところに、大きな音を聞きつけ隣の部屋から八雲さんが現れ・・・って俺けっこう近くまで行けてたんだね。やったネ!


そのままその少女を抱いたまま再び保健室へ。


ベッドに寝かせ、怪我がないかのチェックが済んだ後、お説教が始まった。


ちなみに彼女は木葉 円と言う名前で、これまた俺と八雲さんとおなじクラスらしい。


んー、顔だけ見てるとすっごく頭よさそうな美人さんだ。なんというか、インテリ?的なオーラが出てる。髪は短めにバッチリ切りそろえられてる。


「聞いているのですか?だいたいあなたは編入生としての・・・」


無表情に冷たい口調で説教食らうのは、精神的に病んでくるな。


八雲さん、怖いっす。


「失礼なこと考えてませんか?」


「イイエ。マッタク」



私はこの日、王子様を見た。


優しく、力強く、かっこいい人を見た。


甘く女性のように整った顔だった。


私を助けるために必死になってくれた。


私はこの日、恋に落ちた・・・。



「ん・・・」


「あ。目、覚めた?」


私はこれを夢だと思っていた。


でも目を開けたその先には・・・前髪の長い見るからにへタレそうな感じの、でも声色や背丈からさっきの彼だと思われる、男・子・学・生が心配そうにこっちを見ていた。


「?なんで男子学生がここにいるの?」


すると彼の後ろから、盛大な溜息が聞こえてきた。


「・・・厄介なことになりましたね」


生徒会長がなんでここに!?


「彼は、こんどここに・・・」


「へ、編入生!?こ、ここに!?」



「そ。なんかおんなじクラスだそうだから、その、よろしく」



同じクラス、そしてこの出会い・・・。


そしてこれを週明けまで私と生徒会長と特務科のミナコ先生と薫と補佐役の双子しか知らない・・・。


「運命の人」


「?なんか言ったか?」


「いいえ?なんでもないわ。こちらこそよろしくね?紅姫クン!」


絶対にものにしてやるわ。彼を。この手で。


そのためには誰よりも彼と近くならなくては。だから下の名前で呼ぶ。一歩リードする。


私は始めてこの学年トップの頭脳を、勉強以外のことに回し始めた。



とても楽しくなってきた。



今日は、たくさんの人と知り合うことができた。


俺としては、かなり頑張った一日だ。


明日は早速錬金術の補習だ。


勉強の方は、むしろシリウスのほうが早いくらいだが、錬金術はそもそもそんな教科がないんだからしょうがない。


ミナコ先生張り切ってたな。


死ななきゃいいんだけど。


あとバイトも決めておかないとな。


仕送りなんて全くないし。貯金はかなりあるが、手をつけるには気が引ける。まぁ特務科に入れれば奨学金で授業料免除だそうだから、それまでは努力していくしかないだろう。


とにかく、死ななきゃいいか。ね?アリア、カトレアさま。


俺は何もない部屋で窓から見える星を見ながら、そんなことを考えていた。


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