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第十三話:ワルツ第十三楽章

「みんな、出て行ってしまいましたね」


記憶がまだあやふやになってる。頭がスキッとしない。

体も動かない。

何があったのか。記憶にはいった亀裂。

何か、あったのは分かる。

よくないことがあった。

違和感。強い違和感、重い。鈍痛。


変化した雰囲気。

いや、なにかをされていた訳じゃない。


「私の知らない、私・・・」


やめよう。こんな状態で考え込んでも、いいことは浮かばない。

暗い気持が回るだけ。


でも頭には残っている。反芻している。

なにか、気を引けるもの。


「そういえば、このベッドは姫の・・・」


なんだか恥ずかしくなってきた。


「姫の、・・・ベッド」


ああ、意識しだしたら止まらない。

どうしよう、身動きが取れなくなった。


いや、そんなことだ。たかが、そんなこと。



・・・なんて、そんな、流せることではない!


ああ、今度は変な方向に頭が回りだしてしまった!


『愛ですねぇ。愛を感じます』



「こ、小林さん?」

『まさか、この私が押し入れから出てこなくてはいけないとは』


小林さんが、のそのそと押し入れから出てきているところだった。

え?なんで?


『いやいや、力を失ってしまいましてね。姫が門を開けなくなってしまって、精霊核からの霊力供給がストップしてしまったんです』


門が閉じた?精霊の門が?


「いえ、その、なんでそんなことに?」

『いかに姫と言いましても、慣れないものを長時間使えばそうなります。いま、姫の霊力は底をついてますよ』


外見が大きく変わっている。

長い金髪に、真っ白なローブの容姿なのは変わりない。違うのだ。

羽がない。それに、あの圧倒的を通り越して、暴力的とも言える存在感が消えている。

体中から溢れる光が消えている。


天使が人になったような、そんな非現実的な雰囲気だ。


『まあ、雑で急ごしらえですがね。なんとかこの世界にとどまっているような状態です』


「あの・・・それでなんで押し入れに?」


『それは聞かないお約束』




到着してみれば、学園内は平和そのもの。

残留しているはずの、野生種の霊力すら感じない。正にいつも通りの光景。


「信じられん。本当に野生種の襲撃があったのか?」


見回す限りお祭り騒ぎだ。


「それは間違いありません。レーダーの記録を見る限り、確かに野生種はここを襲撃しています」


「ますます、意味がわからんが・・・。アドルフ!とりあえず、学生会幹部を集めろ。本部に戻って状況を整理する」


「了解」


「状況を、とにかく整理しなくては、無事だったと安心することもできん」

「そうですね。啓太様、お体は大丈夫ですか?昨日あれほど戦いになったのに、あまり寝ていないんじゃ・・・」

「御静。大丈夫だ。それに今はそんなことにかまってる場合じゃない。だろ?」

「それはそうですけど、疲れた状態では、満足な判断ができるかどうかもわかりませんし、それに、」

「そんときゃお前がいるだろう?それに慎吾もアドルフもいるんだ。とにかく、はやく状況整理だ」

「・・・はい。ですが決してお無理はなさらないでくださいね?」

「大丈夫だ。大丈夫」


今は、状況を把握したい。


なにがあったのか。


クソッ。後手に回りすぎてる。



「ん、おじゃましまーす」


薫さんからまさかこの言葉が聞けるとは。何も言わずに入っていくかと思っていたよ。


「にしても狭いよなー」


ま、それでも遠慮は知らないんだけどね。

ずんずん廊下を歩いていく。玄関入って廊下。まっすぐドアのほうへ行けばリビングキッチンだ。

廊下の途中にはトイレと風呂。一応別だけど、洗面所と脱衣所は一緒で、全部かなり狭い。洗濯機は寮の一階にあるので共同だ。二層式の年代物で、色んな洗剤のにおいが染み付いてるけど、コインランドリーで金払うよりはましだ。ま、使うときは掛けられてる表に名前書かなきゃいけないんだけどね。使いすぎると家賃プラスだし。書かずに使うと、ばれたら最悪退寮って話だ。


家賃はかなり安い。けど、ここは寮のくせに飯が出ない。なんでも、部屋にキッチンが付いてるからいいだろうという、先代の寮監からの習わしだ。


にしても、風呂、かなり狭い。というか、風呂には浴槽しかないといっても過言ではない。シャワーでためないといけないし。とうか、風呂ためたら体洗えないじゃん!と当初はおもったが、まず温まってから体を洗う、というスタンスならどうにかなる。ま、一人のときしかできないけど。


ガチャ


「おう八雲!寝てないとだめじゃねーか・・・って誰だお前!」


は?


『すいませーん、姫、狭くて暑苦しいので出ちゃいました』


何やってんだよ小林さん・・・。



「で?こいつが、姫ちゃんの言ってた連れか?」

「はい。俺が契約した固有精霊の、小林さんです」


「こゆうせいれい?は?なんだ?それって、魔道精霊師が使うもんだろ?え?意味わかんねぇ」

「あの、それは、えっと。ちょっと待ってくださいね、俺も、説明する順番を考えてたもんで、えーっと・・・」

『姫は突発的なことには本当に弱いですよね』

「小林さんが言うなよ!小林さんが!」


「おじゃまします。戻ったぞ。いや、あの自販機は結構品ぞろえが良くてなー・・・・って誰だお前!」


ああ、事態は悪化する一方なのね。



「この際、お前たちのことは不問にする。とにかく、何が起こったのかを俺にきちんと説明しろ。混乱してるのは分かるが、俺たちは何も知らないんだ。なにをどうすれないいのか、全くわからん」


目の前にいる学生会のメンバー十一人全員が、落ち着きなく目配せをしあっている。混乱してるんだ。俺もそうだ。だが、このままでは埒が明かない。


「さっさと言え!俺だって訳わかってないんだ!説明しろ!不問にするって言ってんだろうが!」


一斉にビクッ。そんなビビらんでも・・・。


「会長、あの、えーっと、その・・・」

「ケネス、落ち着け。まずはー、そうだな。野生種がいつどうやって発生したか、からだ。そこから順を追って、ゆっくりでいい。焦らないで、一つずつ教えてくれ」


ケネス・シェン。学生会整備委員長。19歳で最年少。オリオン学園の各校舎の管理、や全体の用具の整備を行っている。おどおどしているが、責任感と正義感は慎吾並みだ。


「ケイちゃん、そこはあたしが説明する。レーダーに野生種が感知されたのは7・00時。それから大学の部隊を派遣したんだけど、止められなかったの。そして10・30時に第一防衛ライン突入。あたしたちもすぐに現場に向かったんだけど、その時はもう第三防衛ラインまであと少しってところだったのよ。すぐに学園に緊急警報を出して、そのまま討伐部隊を編成、学生たちを誘導しつつ、応戦体制を敷いたわ。それが10・47時」


桐沢 大輝。学生会厚生委員長。22歳。商店街や学園内の寮の管理を行っている。俺がスカウトした、体は男だが、心は女という。いわゆるオカマだ。アマリリスというのが、大輝の今の名前らしいが。


「俺たちに連絡入れたのは、時差的に考えて、そのぐらいの時間だな。対象が第三防衛ライン侵入時に警報発令。マニュアル通りだな。だがなぜもっと早く俺たちに連絡を入れなかった!」


「それは、会長たちも野生種との戦闘中である可能性があったからだ。そちらの状況を把握できずに、無暗に連絡を入れるのはどうか、ということもあった。何より野生種がこの学園の霊力を感じて、避けていったり、防衛ラインに阻まれ逃げるということも否定できなかった。・・・今は言い訳にしか聞こえないが、な」


新堂 楓。学生会風紀委員。21歳。学園内の風紀を守る、学園内で最も恐れられている存在だ。堅物で古風だが、人情味のある気持ちのいい女でもある。


「・・・。そうだな。普通はそう考えるし、普通なら、そうなっていたはずだ。お前らの判断は間違えてはいないだろう。・・・今はそういうことを言っている場合ではないな。それで?最終防衛まで侵攻された訳だな」


「はい。第四防衛ラインを突破されたあたりから、野生種は侵攻のスピードをうんとあげてきました。えっと、10分かからずに、最終防衛ライン寸前まで突破されました」


小町 春香。学生会文化委員長。20歳。学園の各図書館と管理、文化部の総括、文化祭の指揮がおもな仕事だ。小柄で、実年齢よりかなり幼い容姿と甘ったるい声をしており、人見知りする性格だが、芯は強く、やるときはやる奴だと評価している。


「早いな。ということは、恐らくこのあたりから人為的に突破された訳だな。防衛網は?しっかりと組んだはずだろう?」


「組んだコトは組んだが、大学部の隊員以外はほとんどハジメテの対精霊戦だ。必然的に、主要ブロックの防衛に主力を置くことにナル。しかも増殖した。・・・絶望的だった」


サリー・サンジェル。学生会体育委員長21歳。グラウンドの整理、体育系の部活動の総括、体育祭の指揮を行う。まだ言葉に異国のなまりがあが、かなり上達したほうだ。普段は陽気だが、理性的になったり、かなり複雑な性格をしている。


「増殖は、野生種なら頻繁に行うことだ。・・・経験不足だった、な。そしてここからだ。何があった。増殖までした野生種が、なぜ爆発し、なぜ霊力も残さず消えた!」


「あたしらで、他の奴らの証言まとめてみたんだけど、共通しているのは空が赤く染まったこと、光の雪が降ったこと、そしてその雪が光の槍に変わって、野生種たちに降りそそいだこと。以上よ。でもね、高等部にいた子達が言ったんだけど、その光が出るほんの少し前に、八雲ちゃんの放送が聞こえたんだって。高等部の回線だから聞こえなかったんだけど、『最終兵器を使うから、下がっていろ』って言ってたみたいよ。しかも、そのうちの一人が、光の輪に乗って飛んでいく血まみれの男と八雲ちゃんを見たって」


高等部に最終兵器?そんなものはあるはずがない。管轄以外にも、学園内の点検管理も学生会が行っている。特に俺の代になってからは力を入れてきた。それこそ学園内のすべてを。


「八雲って、あの?美奈子さんの生徒で、無愛想な・・・。だったよな?御静」

「ええ。たしか・・・そのはずだったと・・・でも啓太様、あの子はそんな、最終兵器をわざわざ前置きまでしてまで人前で使うなんてこと、しない子だったと」


静香と一緒になんどかあったことがある。美奈子さんは俺たちの先輩だし、なにより大学に入ったら学生会に入れようと思っていた候補の一人だ。冗談言ってもクスリともしなかったよな、確か。隣にいた薫はゲラゲラ笑っていたが・・・。


「どう考えても、おかしいな。性格からして、こっちに連絡しているはずだ。そんな物騒なものならなおさらだ」


「あの、お二方の言葉から察するに、その八雲さんは最終兵器の存在を、周囲に隠していたかもしれないということですか?」


アドルフの言ったことが一番可能性が高いだろう。が、どうもそれはないような気がする。命を預けあう仲間に、武器の存在隠す意味がない。なにより効率的でない。あいつは人の上に立つということをよく理解していた。有事の際に己しか使えないなんて、不確定なものに頼ることなってありえないはずだ。


「もしくは、ギリギリのタイミングで、なにかとんでもない方法を思いついたのか、ですね」


慎吾のつぶやいた一言。!・・・そういえば、高等部に転校生がいなかったか?たしか、付属女子に初めての男子生徒。あいつ確か、


「たしか、その男の子はシリススから来たって、記録を読んだ気がします」

「吉美!そうなんだな!?」

「え?あ、はい。ね?真琴ちゃん」


「見たわ。珍しいわねって、話した記憶があるわね」




地下・・・。

ある。いや、これしかない!不確定事項が山ほどあるし、なにより奇跡的な偶然が重ならなくてはならないことだ。だが、今考えうる中で一番しっくりくる仮説だ。これしかない!そう思える。普段なら笑って流すようなことだ。でも今はそれしか考えられない。あまりにありえない答え・・・。



「アドルフ!すぐにツキコ博士を呼べ!確認したいことがある。それと、八雲、薫、美奈子さん、それからその転校生の男子もだ!」







ようやく、事態を把握できたぞ!











ナナ「はーい。みなさんオリレポの時間ですよー」

ヨシ「でーすよー」

ナナ「今日のゲストは?」

ヨシ「ゲストは?」

ナナ「木葉 円だー!」

ヨシ「マドカだー!」

円「ずいぶんと手抜きな始まりかたね」

ナナ「ビッグゲスト続きだったからねー。マドカくらいならこんぐらいでいいでしょ」

ヨシ「出番も私らとあんまし変わんないしね」

円「はぁ~。ま、いいわ。あんな濃いメンツに混じるだなんて、私には無理だもの」

ナナ「でしょ~?濃すぎると思うのよ!ね?」

ヨシ「そうそう。消えちゃうって。私ら消えちゃうって!」

円「で?そんな話なら教室でいいでしょ?なによここ。暗くて狭くて」

ナナ「フッフッフ。ここは尋問する場所。取り調べする部屋よ!」

ヨシ「監査官なのさね!」

円「~。わかった。じゃ早く終わらせましょ。昼休み終わっちゃう」

ナナ「そういうとこ好きよ。じゃあヨシよろしく!」

ヨシ「1、好きなもの2、嫌いなもの3、趣味4、特技5、日乃くんの気に入ってる所です!いってみよう!」

円「好きなものはお漬物。奈良漬がとくに。嫌いなものは身の程知らず、かな。趣味は読書。休みの日は一日読んでることもあるわね。あとは弓道。特技は・・・弓道でいいかな?一応部長だし。コウキくんの好きなところはーって、こんなことまで言わなきゃなんないわけ?」

ナナヨシ「「ぜひに」」

円「・・・・意外と男らしいところ」

ナナ「え?聞こえなかったわよ?」

ヨシ「もっと大声で!」

円「い・や・よ。もう本当に間に合わなくなっちゃう。帰るわよ」

ナナヨシ「「えー!」」

円「次、担任のセンセー様よ」

ナナヨシ「「すぐ、帰りましょ」」

円「・・・まったく。ん?なにかしらこの紙?」

ナナ「やばいわ。宿題全部答え出し切ってないのよね」

ヨシ「あたしぜんっぜんやってないよー!」

円「なになに・・・ここまで読んでいただき、ありがとうございました?ってこれなんか危ない文章じゃない。えっと、感想、評価、お待ちしております?ほんと何これ?」


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