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第十一話:ワルツ第十一楽章


「会長!会長!起きてください会長!」

「おい慎吾、会長はまだ起きなさらないのか」

「今起こそうとしてるんですが、こんなときまで、まったく!」

「御前は?あの人を呼んで来るんだ。一発だろ?」

「申し訳ありません、アドルフ。御前は本部会へ確認を取りにいっています」

「もう俺が手筈を整えてる。あとは会長を起こして出発するだけだ」

「仕方がない。起きてください!会長!・・・・・・静香御前がお怒りですよ」


ガバッ


「お静!俺が悪かった!」

「会長、大変です!」

「お静!すまん!何をしたのかはしらんが、すまん!お静!・・・んぁ?ってなんだよなんだよ!まだ4時じゃねーか!外真っ暗な時に俺起こすんじゃねーよ!昨日野生種いくら殺ったと思ってんだよ。寝させろ」

「慎吾!会長が起きたとほかの者たちへ。出発の準備を手配。会長、緊急連絡が入りました」

「緊急連絡?なんだ?」

「学園に野生種が襲撃しました!数は昨日俺たちが倒したのと同じ数です」

「な、なんだと!?」

「野生種が、学園に侵入しました!」

「!・・・すぐに、学園本部へ連絡!大学に残した奴らとの連絡は?とれたか!?状況は!?」

「本部へは御前が。残った者たちはみな初等部から本部へつながる西地区の防衛へまわってるそうです」

「南から東へのオリオンパイプは!?」

「あそこは高等部と待機部隊に守ってもらうしかないかと・・・」

「無理だ。くっ!すぐに学園へ戻るぞ!準備は済ませてあるだろうな?」

「はい。会長の分は御前が」

「わかった。すぐに飛行錬金核に乗るよう指示を出せ。10分後に発信するぞ!」

「了解。もう出してます」

「全員スクランブル!連金核のリリーズを許可する!行くぞ!」





「・・・野生種の同時多発か?ありえん。百年に何度あるか・・・まさか」



「名前を教えてくれない?」


人の戻り始めた商店街を抜け、大学の研究所の集まる区画へとはいっていく。

小林さんは、不可視の状態に入っている。精霊核のかけらでここまで霊力は戻るんだ。きっとうまくいく。

にしても目の前の研究者風の人間について行ってはいるが、正直本当にこいつは胡散臭い。

まず街に溶け込み切れていない。浮いている。研究者も多いこの学園都市だ。白衣は多く見かける。だが目の前を歩くこいつは浮いている。存在が、じゃない。こいつのいる空間がもう浮いているのだ。


黒い色の中に、濃い藍色があるような、光の加減ではまったく変わらなくなるような、そんな感じだ。でも後ろから光を当てれば、青だけがはっきりと目につくような、なんというのだろうか。これは。


「おや?興味を持ってくれたのか。いやうれしいものだね」

『興味というより、初対面で名乗らないあなたの常識を疑っているだけです』

「私はツキコ。ツキコだ」

「あー、苗字は?」

「ないね。ツキコ。ただのツキコだ」

「ってことは女性?」

「そうだね。よく言われるよ。男っぽいとね」


女性、女性・・・ああ、言われると女性にしか見えない。男っぽいところもあるが、今は女の部分が“浮いて見える”。


「ここだ。私の自慢の研究所さ」

「えっと、ここアパートじゃ?」


「・・・地下、さ」


なんか前もこんなのあったな。地下好きなのか?錬金術師ってのは



「ここ?」

「ああ、ここだ」

「ずいぶんと、なんていうか、その、えーっと」

『見かけ、だけ、は一流なんですね』

「まぁね。さ、精霊クン、そこの銀色の台に座ってくれ」


研究所だ。診察室なんて期待できない。あるのは椅子と机。あとは電子機器の山。一際大きな机は、会議用のものなのだろう。


『座りましたが。それにしても、他に人間がいませんね?』

「ここは私だけの研究所でね。個人の研究施設にしてはなかなか豪華だろ?」

「豪華っていうか、なんていうか、でかいよね」

『いけません、姫。華美な装飾は、無駄以外の何物でもありません。質素堅実です』

「それ、小林さんが言っちゃだめ」

「いいから、早く始めよう。これが、人工精霊錬金核だ」

「錬金核?なんでそんなものが?精霊核じゃ・・・」

「錬金核の技術を応用して作ったんだよ。精霊の霊力波長は実はすごく単純でね。人のそれとほぼ変わらないんだ。違うところ、それは根っこが精霊特有の霊力か人間の霊力かってことだけで、そこさえ解明できればすぐにでも製作可能ではあったんだ」


いや、それは簡単じゃない。簡単だったら、今頃世界は精霊だらけだ。


「でも私は、これを以降に精霊核は作らないよ」

「え?なんで?」

「私は、完成品は一つしか作らないことにしてるんだ。量産する気がなくてね。というか、情熱が冷めるとなんでこうなったかがわからなくなってしまうんだ」

「と、とにかく!その精霊核を小林さんに!」

「少し待ってほしい。この精霊核は、あくまでも人工の紛いものだ。本物と比べれば、月とすっぽん。ゴミと思ってもらったっていい。それに頼るってことは、小精霊である力を削ることを意味する」

「人になるってこと?」

『そうですね。人と同じように、霊力を空気のように補給する必要が出てきてしまいます。力はいつもと同じように送ってもらえれば、大きな術を使うことは可能です。しかし、昔のようには、うまく術を使えなくなるでしょう。元の霊力が削れるわけですから』


精霊としての霊力の制限。人ではない肉体。きっと、これはとんでもないことだ。


「でも、それでも、消えるよりは百倍増しだ!消えるなんて、許さない」

「わがままなんだね。君は。そして強情。見かけとは大違いだ」


フッと、ツキコさんは笑った。普通なら、気に障るのだろうけど、なぜか少しも嫌にならない。懐かしい。初めて会ったはずなのに。初めて見た、顔のはずなのに。


『勝手気ままなのは認めましょう。それより、早くすませましょう。八雲さんが目覚める時間です』

「八雲・・・大地、八雲かい?」


ボソっと、つぶやく。驚き、そして何かはわからない感情。声に震えがまじっていた。


「え、ええ。知り合いですけど?あ、ツキコ・・・さん?も知り合いなの、ですか?」

「そう警戒したような態度でいられるとさみしいね。彼女とはちょっとした縁があるだけさ」





「さ、始めよう。無駄話が過ぎたようだ。じゃあ、この錬金核を持ってくれるかい?」


よくよく見ると、精霊核は丸い水晶のようなものだった。中心に、鈍く青く光るモヤが透けて見える。


「君たちがどうそれを使うかまでは知らなくてね。さ、初めてくれるかな?」


『姫、霊力を少し、分けていただきますか?ここの陽の霊気だけでは、向こう・・・精霊界の半分もありませんから』


小林さんは、丸い精霊核を額にくっつけ、目をつむる。

体が鈍く青く光り始める。


「送るよ」

「いいデータがとれそうだ」



結果を言おう。


成功だった。


でもそれは、俺の中の、ツキコさんという存在への、言いようのない違和感を強めていった。


彼女は果たしてどういう存在なのか。

錬金側の研究者でありながら、元魔道精霊士。そしてその知識は天空人時代並みだ。


でもそれでも、友達を助けてくれた。


「ありがとう。ツキコさん」

「・・・・・・・・・・・・。あ、ああ。そう、ね。フッ。どういたしまして」


よかった。本当に、よかった。


<ヴーーーーーーーーーーーーーー>


『姫、携帯が』


「ああ、えっと・・・あ!薫さんからだ!」

『では、戻りましょう』

「うん。あの、このお礼は必ず!必ずしますから!すいません!今は時間が無くって・・・」


「いっていいよ。私は、今とれたデータを早く解析したくてたまらないんだ」


「もう、本当にありがとうございました。行こう!小林さん!」

『待ってください。今の私は、歩くだけでも精一杯で』






「大きく、育つものなんだよね。人っていいうのは。分かってはいたんだ。それでも、昔と、変わらない笑顔・・・」





思い出す、あの日々。


見守る。それが。


それが、私の、私の立ち位置。それでいい。


せめて、せめてもう一度。


あの笑顔を、見たい。


ナナ「ハーイ!今日は、テンションあげて、行っちゃうわよ!」

ヨシ「オッケイオッケイ!さー、今日のゲストはーーーーーーーー」

ナナ「この方!姐さんこと、火崎 薫!」

薫「スポットライトか!眩しいけど気持ちいーじゃねーの」

ヨシ「さぁ、我らがクラスの仕切り役!姐さんにさっそく五つの質問!」

薫「うっし。どんと来い!」

ナナ「1、好きなもの2、嫌いなもの3、趣味4、特技5、日乃くんの気に入ってる所です!」

薫「あー、好きなものは『おため』のA定食とB定食と日替わり定食、嫌いなもんは根性のない奴、趣味は体を鍛えることで、特技は車の運転かな。あ、言ってなかったかもしんないけど、あたし一回ダブってっから18なんだよね。ま、後からその話は出るだろーけど。姫ちゃんの気に入ってるとこは、んー。かわいいとこか」

ナナ「流石、姐さん。言い難いことでもかまわず言っちゃうのね」

ヨシ「憧れるよねー」

八雲「でもああなっては、女としてどなのかと」

美奈子「まったくだ。薫はもっと女としての慎みと恥じらいというものをだな」

薫「なんだ?まるであたしが女っぽくないみてーじゃねーか」

美奈子以外全員「え?気づいてなかったの?」

薫「てめーら!そこに直れ!あ、こら!逃げんな!てめーら全員鉄拳制裁だ!」

美奈子「まったく、騒がしい奴らだな。あ、評価、感想お待ちしております。では、続く!」


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