表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫煙の旅路  作者: 白猫
紫煙の行き先
8/45

現状把握は難航中



ネズミからしばらく後。

遠くに草原以外のものが見えてきた。

アルくんは俺が背負い、雪はネズミを持ちながらリーエちゃんと何かを話している。

色々聞きたいことはあるが、おそらくあれが街だろうから、もう少しの辛抱だ。






街に着いてみると、門をくぐらないと入れない構造のようだ。

しかも門の側には槍をもった人がいる。

今時槍を持つなんて、いつの戦国時代だよ。

しかし、門を通らなければ入れない訳で、はてさて、後ろの2人を待とうかと思っていると。



 「エードさんただいま。」

 「おお、アルじゃないか。帰りが遅いから心配してたぞ。」

 「ちょっと不注意で。」

 「なんだ、怪我でもしたのか?森は危ないから、ちゃんと魔物除けを使うんだぞ?」

 「魔物は大丈夫だったんだけど、帰りにこけちゃって。」

 「相変わらずおっちょこちょいだな。で、そちらの方は?」



アルくんの知り合いらしい。

それもそうだろう。

なんせ、アルくん達はここを通ってきたわけだから。



「ええと、僕らは・・」

 「ただいまエードさん。」

 「おや、リーエちゃんおかえり。アルが怪我したんだって?」

 「ええ。幸い森の浅瀬だったし、彼らが通りがかってくれたから助かったわ。」

 「そりゃ有難い。お礼を言わせていただきます。」

「いえ、偶然通りがかっただけですし、当たり前のことですよ。」


2人とも追いついてきた。

僕が説明しなくてもよさそうだな。


 「アルはまだしばらくは、町中での特訓だな。」

 「ええ、ちゃんと行って帰ってきたじゃない。」

 「でも怪我しただろう?まだまだ注意力が足りない証拠だ。」

 「折角外に出られたのに。」

 「また人手が足りている時に連れて行ってあげるから我慢しなさい。」  

 「はーい。」


和やかな雰囲気が流れている。

これはこのまま入れるのだろうか。


 「では、続いてお2人ですね。」

 「お2人はどのようなご用件で?」



そんな僕の淡い期待は、あっさり裏切られた。




 「旅の人らしいわ。アルを送ってくれるついでに、しばらく滞在したいみたい。」

 「おお、そうですか。辺鄙なところですが、ゆっくりしてください。」

「お気づかい感謝いたします。何か気をつけた方がいいことはありますでしょうか?」

 「いやー、特にこれといってないですね。しいて上げれば、町中で騒動を起こさないぐらいか と。」

「承知いたしました。ではしばらくの間よろしくお願いします。」

 「はい、レントへようこそ。」




レントという名前の街らしいが、僕は結局話をしないまま中へと入れた。

果たして門番の意味はあるのだろうか?

中に入れたので特に文句は無いのだが。




 「さて、町まで送ってくれてありがとう。ここで解散・・という訳にはいかないわね。」

「そうしてくれると有難いな。」

 「とりあえず、家へ行きましょう。落ち着いて話をした方がいいわ。」

「助かる。このネズミはどうしたらいい?」

 「ハーベストね。大丈夫、そのまま持ってきて。」




どうやら2人の間で話は纏まっているらしく、僕はそれに着いていく。

途中、アルくんが「またねー」と手を振り離れていった。

姉弟かと思っていたが、別の家の子らしい。




周りの家々より一回り大きめな建物に着くとリーエちゃんは率先して入っていく。

ここがリーエちゃんの家らしい。

地主か何かだろうか。

周りの家に比べても、やや歴史を感じさせる佇まいだ。



周りと比べて思ったが、どうやら相当田舎の方らしい。

建物は基本的に木造で、人々の服装も上質とは言い難い。

これは電波など入らないのではと思わせる、そんな街並であった。




 「ただいま。」

 「おう、お帰り。遅かったな。」

 「アルが怪我しちゃってね。」

 「大丈夫なのか?」

 「軽く足をひねっただけよ。すぐ治るわ。」

 「そうか、して、そちらの方々は?」

 「アルを背負って来てくれた旅の方。」

 「それは有難い。お礼を言わせてもらいます。」

 「エードさんからも言われてるわ。それより、今から2人と話があるの。」

 「そうか。ささ、中に入ってください。」

「ありがとうございます。俺は雪。こちらは天馬。お邪魔させていただきます。」

「おじゃまします。」

 「ようこそ。私はアラン。ここの町長を務めています。何かございましたら何なりとお尋ねく ださい。」

「お心遣い、感謝いたします。」






さて、やっと腰を落ち着けて話せる訳だが、一体何から聞けばいいのやら。

とりあえず、電波の確認からしてみようか。


生憎、電波は圏外のままだった。

ふと顔を上げてみると、リーエちゃんがこちらを見ている。




 「何それ?」

「これで少しは信用してもらえたかな?」

 「さっき言ってたことは本当だと?」

「そういうこと。まあ流石に、全部が全部信じろとも言えないがね。」

 「でも、見たこともない物だものね。」



はて、ここでは携帯電話は珍しいのだろうか?

確かに電波どころか、電気すらなさそうな場所であるから、珍しくてもおかしくはないが。



 「わかったわ。まあ実際、話の内容からしてどこか知らないところからきているとは思ったけ ど。」

「普通そうだよね。」

 「まさか異世界とか言い出すだなんて。」

「逆に異世界という考え方が理解されて驚いたよ。」

 「おとぎ話や、童話の世界ね。今でも信じられない。」

「嘘をついてる訳ではないと、信じてもらえればそれでいいさ。」

 「魔物がいてるんだもの。ある意味納得しやすいわよ。」

「魔物も別世界から来るのかい?」

 「そう言われているわ。詳しいことはまったく分かって無いらしいけど。」

「そうか。その点に関しては魔物に感謝だな。」

 「で、あなたたちは・・「ちょちょちょ、」・・何?」

「何!?どういうこと!?」


「俺達だけが納得してもしかたないものな。天馬良く聞け?」

「うん。」

「結論から言うと、俺達は異世界にいるらしい。」

「・・・へ?」












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ