唐突な出会いは熱烈に
代わる代わるアルくんを背負うことにし、僕らは街へと向けて歩き出した。
今は雪が2回目に背負っている番だ。
先頭を背負った二人、次に残った1人、最後尾を籠を持ったリーエちゃん。
雪はどちらとも親しげに会話しているが、僕はあまり積極的に話しているわけではない。
旅人という設定は認識済みだが、何を話題にすればいいのかわからないのだ。
「じゃあ、2人は森の中までわざわざその果物を取りに行ってたんだ。」
「そうだよ。あれは栄養満点だからね。」
どうやら籠の中身の話をしているらしい。
1回目の時は街の様子や普段のことを話ししていたらしく、背負うのを代わった時に、僕も町に興味があるのか聞かれていたからな。
その反面、リーエちゃんはあまり話が好きではないようだ。
今も特に話をすることもなく、黙々と歩いている。
どれぐらい歩いただろう。
ここに来てから、体が軽い気がする。
実際、小さいとはいえ、人を背負っていても全く苦にならない。
元々体は動かしているし、体力もそこそこあるとは思っていたが、ここまでとは思っていない。
雪の場合はそれが普通に見えてしまうから何とも言えないが。
「天馬、そろそろ交替しよう。」
「おう。」
全く疲れた素振りを見せないが、果たして代わる意味があるのか?
なんなら僕がずっと背負っていてもいい。
「よっと」
「よろしくね、テンマさん。」
「おう、任せとけ。」
やはりアルくんは社交的だ。
沈黙が苦手なわけではないが、リーエちゃんはどうも険悪な感じがする。
まあ、見知らぬ人に出会ったらそれぐらいが普通かもしれないが。
仮にも手助けしているはずなんだが、何か変なことをしただろうか?
「リーエちゃん」
「・・何?」
「相変わらずそっけないね。」
「これが普通なの。」
「そうか。さっきと違い、他愛ない会話ではなく、ちょっと踏み込んだ話がしたい。」
「・・・。何が?」
「別に捕って食おうってわけじゃないから安心して。実際俺らの方が困惑しているから。」
「どういうこと?」
「ここってさ、マモノがでるんだよね?」
「? 当たり前でしょ?」
「・・・。そうか。そうだよね。」
「それがどうしたの?」
「いや、普段眼にしないものだったから、ちょっと気になってね。」
「心配しなくても、こんな草原には弱いものしか出てこないわ。」
「それは助かる。」
「ていうか、普段眼にしないってどんな生活してたの?そこいらでも見かけるはずよ?」
「気になる?」
「きになるというより、最初は盗賊か何かだと思ってたから。」
「それ言っちゃっていいの?」
「いいも何も、そんな馬鹿げたこと聞いて来るような奴が、粗悪な人とは思えないだけよ。」
「それもそうか。」
「一体どんだけ囲われたところで生活していたんだか。」
「・・囲われたね。確かに、囲われてはいたかな。」
「そう。で、何が聞きたいの?」
「実は俺達はさ「カサっ」・・ん?」
「リーエ、ハーベストだ!」
ハーベストってなんだ?
眼の前に飛び出してきたのは大きなネズミだが。
そんなことを思っているとリーエちゃんが前に出てきた。
「下がって!」
「おいおい、たかがネズミに・・」
「天馬リーエちゃんの言う事を聞いて。」
「お、おう。わかった。」
ついでに雪も飛び出してきた。
いくら大きめなネズミとはいえ、そこまで過敏になるだろうか?
病原菌でももっているのか?
確かにアルくんは足を挫いた時に擦り傷もできているが、そんな大層なと思っていた。
「ユキさん。あなた戦えるの?」
「分からない。でも、こいつもそうなんだろ?」
「弱くはあるけど、列記とした魔物よ。」
「じゃあ、女の子1人に任せている訳にはいかないな。」
「足は引っ張らないでね。」
「善処する。」
なんだかよくわからないが、2人はネズミと戦うらしい。
それよりも、今マモノって言わなかったか?
「テンマさん、もう少し下がっていましょう。」
「おう。・・・なあ、あれってなんだ?」
「ハーベストです。ハーベストラット。弱い魔物ですよ。」
「へえ、そうか。」
間違いない。
今もはっきりとマモノって言ったな。
こちらでの通称なんだろうか。
さっぱり訳がわからない。
そうこうしているうちに、雪達の戦いが始まった。
「とりあえず気をつけることは?」
「しいていうなら、前歯ぐらいですね。深く噛まれると大けがしますよ。」
「わかった。なら、そこに気をつける!」
雪が動いた思えば、ネズミとの距離を詰め、大きく蹴り飛ばした。
あんなに強く蹴ったら、ひとたまりもないだろう。
思った通り、ネズミは高く宙に舞い、地面へと叩きつけられた。
「なんていうか、ダイナミックね。」
「一番効果的かと思ってね。一応蹴りは習っているし。」
「そう。まあ、初めてにしては良かったんじゃない?」
「そいつは嬉しいな。あいつって食べれるの?」
「食べれるけど、それなりに重いわよ?」
「大丈夫、体力には自信があるからね。それよりも、無駄な殺生の方が気に障るから。」
「じゃあ任せるわ。町ももうすぐだしね。」
どうやら、殺したネズミを持っていくらしい。
あれ、食えるのか?
それ以上に疑問がたくさんあるんだが、とりあえず街まで行ってかららしい。
雪に話しかけようとしたら、「後で教えるよ。」と言われた。