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紫煙の旅路  作者: 白猫
紫煙の行き先
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青空の下で


「さて、行動方針は決まったけど、当てがないが。」

「僕に聞かれても困るな。」

「そりゃそうだ。」

「人がいる場所ってどんなところだ?」

「少なくとも水を確保できる場所だろうね。じゃないと、生活できないさ。」

「じゃあ水辺を探しに?」

「そうだね。小川なんてあったらばっちりだ。森沿いを歩いてみよう。木々が枯れてないってことは、水資源には事欠いてないだろうから。」



とりあえずは、水辺を探すことで方針は決まった。

まあ、水があったら俺たちも生きることはできるだろうし。

何よりも最優先なのは確かだ。



しばらく歩きながら、ふと『まるで山に遭難した時のようだな』とそんなことを思っていると。



「なんか、懐かしいね。」

「何が?」

「昔さ、山を散策しようって無茶した時、電波が入らないような場所で遭難しかけたじゃない?」

「ああ、日が落ちてきて、遭難一歩手前になったやつだな。」

「あの時のことを思い出してさ。」

「いやいや、今も昔も笑いごとじゃねえぞ?」

「確かに。でも、なんだか懐かしいね。」

「まあ、小川を見つけてそれにそって歩いたところは似ているな。」

「だろ?」

「残念ながら、肝心の小川が見つかってねえよ。」

「そりゃそうだ。」



いつも通りの和やかな会話。

いつもどおりの雪。

これが見知らぬ土地でなければ、いつもの日常のように思える。

こいつのすごいところは、どんな相手でも・どんな状況でも動揺しないところだ。

いや、『動揺はするけど、隠してるだけだよ。』なんて言っていたから、それをおくびにも出さないところというのが正確なのかもしれない。

少なくとも、余計なプレッシャーによる疲労を感じないだけでも、こいつと一緒なのは助かる。

あまり感情的にならず、常に面と向き合って立っている。

またひとつ、こいつの凄さを再認識させられたな。



「そういえばさ、天馬は特に運動をするわけでもないけど、体力多いよね。今だって疲れた様子ないし。」

「適度な運動はしてるからな。」

「例えば?」

「別に筋肉が欲しいわけではないから、ストレッチとランニングぐらいだ。」

「だから健康的なんだね。」

「自分の体ぐらい思うように動かせた方が楽じゃないか。」

「同感だね。それに、その方が集中もしやすいしね。」

「だからといって、サークルを2つも3つもかけもつのはどうなんだ?」

「まあ、適度にやってるから大丈夫だよ。」



大学に入ってからの雪は、色んなサークルを兼任し、おまけに和食にまで手を出す超人っぷりを発揮している。

どれひとつとっても疎かにしていないのが雪らしい。

いったい何がしたいんだか。



「最近は空手もはじめたよ。」

「まだ増やしたのか?」

「学べるものは学ばないと損じゃない?」

「限度ってものを知らないのか?」

「体を壊さない程度にするよ。」



大丈夫だ。

お前なら体調を崩しても、女の子達がお見舞いに来てくれるよ。



 「大丈夫!?」



そうこんな感じで・・?



「天馬。人だ。」



話に夢中になっていたからだろう。

今更になって、森の浅いところに人影を発見した。



「女の子と、もう1人かな?」

「うずくまっていてよく見えないな。」



どうやら向こうも2人組みらしい。

この距離ではあまりよく見えない。



「もう少し近づいてみよう。」



雪の意見にのり、見つからないように近づいてみる。



「もう1人は男の人だね。」

「というか、比較的小さい子じゃないか?」

「うん。うずくまってどうしたんだろう?怪我でもしたのかな?」



雪の予感は的中した。

もう1人の男の子はどこか苦しげにしている。



「助ける?」

「なんで俺に聞くんだ?」

「俺たちは2人で行動してるからね。勝手に先走っても悪いじゃないか?」

「雪のことだから、有無を言わさずに助けると思ってたよ。」

「ここが日本ならね。」



いちいちこちらを気遣ってくれる。

いや、この場合に関しては気をつけているってところだろう。

見知らぬ土地にもすぐに馴染んでやがる。



「せっかくの手がかりだし、どうせいつかは接触しないといけないしね。どうだろう?」

「答えは出てるじゃないか。」

「じゃあ決まりで。」



形だけの意思確認をし、僕らは2人との接触を試みた。



 「どこか痛いの?」

 「さっき木の根っこに引っかかって、足を挫いたみたい。」

 「せっかく森を抜けたのに。」

 「少し休めば回復するよ。」

 「まあこのあたりじゃ、恐い魔物もでないとは思うけど。」

 「ごめんね。」

 「仕方ないな。すこし「あの。」!?」

「大丈夫ですか?」

 「・・・誰?」

「俺たちは通りすがりの旅人です。」

 「旅人さん・・・?」

「はい。うずくまっているのを見かけたもので、怪我でもされているのかと思いまして。」

 「・・・珍しい服装をされているのですね。」

「よく言われます。何分変な服が好きでして。お怪我をされているようでしたら、近場の街まで運びますが?」

 「お心遣いありがとうございます。少々お時間を頂きます。」



どうやら2人は相談するらしい。

声をかけた途端警戒心露わに対応するとは、若い子にしてはできた子みたいだ。

まあ、声掛けを全部任してる僕が言うことでもないが。



 「アル。どうする?」

 「どうするもこうするも、お願いしようよ。浅瀬とは言え、森の近場には変わりないんだし。」

 「確かに早く森からは離れたいけど、あんな服の人見たことない。」

 「多少服装が変でも、いい人には変わりないと思うよ?襲ったり攫うようなら、とっくに行動しているさ。」

 「それもそうね。」



どうやら話はまとまったらしい。

女の子が近づいて来る。



 「町までお願いできますでしょうか?」

「喜んで。いや、実を言うと俺たちも道が分からなくて困っていたところだったんです。」

 「・・・そうですか。」

「こちらに来たのは初めてでしてね。あ、自己紹介が遅れました。俺の名前は雪。こちらにいるのは天馬です。」

 「私はリーエ。あっちの子はアルです。」

「リーエさんにアルさんですね。よろしくお願いします。」

 「お願いします。」



やっと街へ向かえるらしい。

ようやく現状を把握できるな。

それにしても、木の陰にいる時はわからなかったが、2人とも綺麗な髪色をしている。

リーエちゃんが薄い茶色、むしろ金髪に近いな。

アルくんは青みがかった色合いだ。

その代わり、服装はどこかみすぼらしい。

スラムやストレートチルドレンなのだろうか?

まあ、街に着けたらそれで構わない。

早く休みたいものだ。 









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