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死体が無いなら作ればいいじゃない♪  作者: たしぎ はく
1stシナリオ~プロローグ~
7/63

閑話:聖夜の未踏破エリア。って俺ん家かよ!!

 最近、内容がありきたりすぎると思っていたんですが、指摘された為マンネリ解消プロジェクト第一弾ってことで一つ。 


 さて、一見閑話ですが、ちゃんと本編に関係あります。


 予告どおり間に合ってよかったです

 




「こっはぁぁぁぁぁぁあぁあ!!!」



 翌日、俺は、腹部を襲う凶悪な痛みと、自分自身の口から出た悲鳴で目が醒めた。


 ……せっかく、リラから告白される夢を見ていたのに。好きです、って言われて、つきあってください、と、聞いて来た時の返事が、「こっはあぁぁぁぁぁぁあぁあ!!!」ってのはどうなの? 何がしたかったの? 俺。聖夜から言われたとしたら、「こっはあぁぁぁぁぁぁあぁあ!!!」で正解だ。…言うのは聖夜だが。


 さて、混乱しまくっているようなので現状確認。なんだ、意外と落ちついてるじゃないか、俺。ちなみにここまでの思考に費やした時間、コンマ2秒。


 枕元の携帯をまさぐり、開く。


 今は何時? 八月二日金曜日、09:27.


 ここは? 俺の部屋のベッドの上。


 何で起きた? 襲撃されたから。


 ……襲撃? 誰に?


 とりあえず、俺を襲撃した張本人を確認する。


 まあ、予想はつくんだけど。


「お兄ちゃん、成也お兄ちゃんからでんわー」


 はいビンゴー!


 俺の安眠を妨害せし悪鬼は、妹だった。


 成也からの電話などどうでもいいので、もう一度寝ようと思ったのだが、沙羅のジャンピングボディープレスを喰らった後のため、あえなく失敗。


 ……眠気完ッ全ッに! 消えた!


 おはようございます、皆さん!


 電話を沙羅から受け取る。


『グッモーニン、黒』


 ガチャ。ツーツーツー。


 現在、黒羽様は寝起きの為、成也の声は刺激が強すぎます。五年後くらいにかけなおしてください。おやすみなさい。


 と、思ったら、また電話がかかった来た。


 受話。


「何?」

『ああ、今日、君の家に遊びに行こうと思うんだが、沙羅ちゃんはいるかい?』

「なんで沙羅の予定!? そういうのって俺に聞くもんじゃない!?」

「なにー? 沙羅ー? いるよ「あーあーあー! なんだ?電波が悪いな。じゃあ切るぞ。13時にダマスナット集落集合な、以上」


 ガチャ。ツーツーツー。


 キキーッ。(家の前に、狭い住宅地をどうやって通過したのか、高級リムジンが止まる音。)


 ガツッ。(車から出た成也に軟球テニスボールがあたる音。)


 軟球テニスボールはたまたま家にあった。


 テニス? やった事無いよ?


 さて、成也との防衛戦、開始!


          ☆☆☆


 『Treasure online』段突トッププレイヤー聖夜すら行っていない、未踏破エリアが発見された。


 東京都A市S町明野家、末っ子沙羅の部屋である。


 何故未踏破なのか。それは、守護神、黒羽が沙羅の部屋周辺に君臨するからである。


 誠也は、これまで幾度も沙羅の部屋への到達を試みたが、一度も辿り着いた事は無い。今日こそは、と決意を新たに、成也はリムジンから降りた。


 ガツッ。


 リムジンから降りるといきなり成也の頭に軟球テニスボールが直撃する。


 ……先制攻撃のつもりか、黒羽。


 しかし、誠也はこのくらいで諦めたりするような“(ヲトコ)”ではない。


 そもそも、これくらいで諦めるようなら、明野家への侵入すらままならないのである。


 成也は、ニヒルな笑みを浮かべつつ、玄関横のインターホンを押す。


 ……父方か母方が出たら流石に追い払われずに家の中に入り込むことが可能だろう。


『はい、どちらさまでしょうか?』

「あ、中津と申します。黒羽君いらっしゃいますか?」

『あー、今、家に誰もいないんで、帰ってください』


 二階、黒羽の部屋の窓を見上げる。インターホンと携帯を見慣れぬ機械で繋ぎ、こちらを見てニヤリと笑う黒羽を確認した。


 ……これも想定済み。車が無い事から父方や母方がいないことは容易に想像できる。


 そして、こちらの本当の狙いは、


 ガチャ。


「鍵が開きました、成也さま」

「うむ、ご苦労であった」


 二階に黒羽をひきつけ、家の鍵をピッキングする時間を稼ぐこと!


 ちなみに、鍵を開けたのは、成也付き専属メイド筆頭、神島さくらである。頭脳明晰、運動神経良好、その他色々特殊技、整った美貌、女性的な出る所は出、引っ込む所は引っ込んでいると言う、文句なし、百点満点の女性だが、誠也には興味の無い事だ。


 まだ分かっていなさそうな黒羽に意味深な笑いをむけ、悠々と玄関のドアノブに手をかける。


 一度深呼吸し、勢いよくドアを開けると同時に横に飛び退く。


 パパパパパパパンッ!!


 一瞬前まで成也がいた場所を、BB鉄砲の弾が通り抜ける。


 そのまま待つ。


 パパパパパンッ!


 ……フッ。やはりな。時間差で仕掛けていたであろう事はお見通しだ!


 そして、玄関から入り、靴を脱ぐ。そして家に上が…りかけようとした足を、玄関マットを飛び越えるようにして前に出す。


 ……黒羽の性格から、この玄関マットに何かしらのトラップをかけている事は必至!


 そして、そのまま傘を一本拝借し、体の前に突き出すようにして、慎重に、一歩一歩階段をのぼる。


 プツッ。


 傘が、目に見えない糸を切るのを確認すると同時、階段から跳び退る。


 が、着地ポイントに画鋲がばら撒かれているのを確認。壁を蹴り方向修正して廊下に逃げた。そして、着地後階段上から全てのボールが落ちてくるのを確認した後、先ほどと同じように慎重に階段をのぼり、行き止まった。


 ……………? は? 階段から先が無い、だと?


 階段を一番上までのぼると、三方を壁に囲まれた謎の空間に出る。


 ……この前に来た時(十年前。沙羅にゲームを持ってきたときは、すぐに家に帰ったため、家に上がってはいない)は、確か、階段をのぼりきった後は左に曲がったはず。


 左側の壁を軽く叩く。片側を押せば動きそうだ。


 右側を強く押し、半分開いた状態にする。


 特にトラップは無く、その先には、ここのフロアボスが待ち構えていた。


「よくぞここまで来たな、勇者よ!」

「ああ、魔王よ!


 ……パパパン!


 うわ、ちょ、エアガン!」

「喋らせるか馬ー鹿!」

「ちょ、座り込んでるのに何でそんな正確に眉間だけを狙って打ち込めるの! 避けんの楽だけど!」

「あー、あれだ、今すぐ出て行く気は…無いか?」

「無論無い!」

「じゃ、死ね」


 フロアボス――黒羽――は、今もっているエアガン一丁のほかに三丁だすと、エアガンをジャグリングのようにして、連射、いや、乱射しはじめた。さながらバルカン砲である。そして、成也の体から一ミリもずれない正確な銃さばき。


 ……まさにフロアボスと呼ぶにふさわしい!


          ☆☆☆


 中津成也はロリコンではない。


 中津成也には、今年14になるはずだった(・・・)妹がいた。


 当時12さいだった彼は、妹を溺愛していた。完全なるシスコンであったが、成也は気にせず、また、妹である霧香(きりか)も彼を溺愛した為、お互いに、互いに依存している状態が続いていた。


 そして、彼の父が経営するゲーム会社、『ゲームクリエイト中津』、通称GCNは、当時最新技術だったVRMMOを使用した『Treasure online』の開発に着手していた。


 ある程度開発が進んで、成也と霧香は、日々、テスターとして、このゲームに潜っていた。


 何故ダイブできるのか。何故こんな事が可能なのか。12歳とはいえ――霧香は8歳――まだ幼かった二人にはよく分からなかったが、一つ分かる事があった。


 それは、このゲームが面白い、と言うことである。


 二人は着々と――時にバグを見つけたりしつつ――ゲームを進めた。


 そして、迎えたラスボス戦。


 開発当時は伝説級宝レジェンダリィ・ウエポンに数的制限は無かったので、ラスボスさえ倒せば二人とも、伝説級宝フルコンプ、ゲームの全クリアを意味していた。


 ラスボス戦で、前半こそ順調にボスの体力を削ったものの、残りHPを三分の一くらいまで減らした時だ。


 ラスボスの放ったスキル、死の波動、に反応できず、前衛(ナイト)だったキリカは、直撃を受けた。


「助けて! お兄ちゃん!」


 後衛(ウィザード)であった成也には、当たらなかった為、ダメージはキリカのみが受けた。


 そして、成也が反応するよりも早く、キリカのHPは削り取られ、キリカは“死んで”しまった。


 ゲーム内で死んだのは初めてではなかったが、それども成也はキレた。


「大規模破壊系能力(アビリティ)龍星雨メテオリック・シャワー、発動! 滅びろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!」


 MPを全消費し、MP1につき龍の力を纏う星を一つ落とすこの魔法を使い、ラスボスをフィールドごと跡形も無く吹き飛ばした。


 エンディング後――キリカは追いついてこなかった――、ログアウトした成也を待っていたのは、霧香が目を覚まさない、と言う現実だった。


 かなり深刻なバグが発生し、ラスボス戦において死んでしまうと、ゲームの世界にある精神と現実世界にある肉体が切り離されてしまった、と成也は説明を受けたが、心には届かなかった。


 それ以来、成也の家には、――生命維持装置をつけ、死にはしないが――あの日のまま目を覚まさない霧香がいる。


 成也の親は、成也をこれ以上『Treasure online』に関わる事を禁止し、でも、商売であったためゲーム開発を続け、そして発売にまで至った。


 成也が立ち直るまでには、ゆうに二年の歳月を擁した。


 そして、立ち直ったあとの事だ。


 遊びに行った黒羽の家で、たまたま出会った黒羽の妹、当時8歳だった沙羅と名乗る少女。


 沙羅は、驚くほど霧香に似ていた。


 成也は絶句した。


 神など、大人が言う「後で」、の次くらいに信じていなかったがこのときばかりはこう思った。


 ……ああ神様、この子は、霧香とあえない自分への、一番の奇跡なのですね?


 それ以来、事あるごとに沙羅と会いに言っているが、黒羽が邪魔をする。


 以上のことを黒羽と沙羅は知らない。


 そして、成也は霧香を諦めてなどいない。だからこそ、一度クリアしている『Treasure online』に潜り続けているのだ。


 そう、成也が、溺愛する霧香を諦めるはずが無いのだ。


 手がかりは、未だ見つからずにいる…。


          ☆☆☆


 いい加減、成也が黒羽の撃ち続けるBB弾を避けるのが難しくなってきた。


 ……だって八丁拳銃だもの。


 どこのスナイパー、って話であるが、現状、成也の目の前にいる。


 と、エアガンを撃つかたわら、黒羽が右手で大きめのクラッカーを取り出した。


 そして、それを右手で持ち、左手で紐を引いた。(ちなみに、黒羽はこの間も左手だけで八丁拳銃を撃ち続けている。再度言おう。どこのスナイパー?)


 ボシュン。


 気の抜けるような音がし、痴漢撃退などに用いられるネットが広がり、成也を捕らえた。


 流石の成也といえど、エアガンで動きを封じられている状態では避けることができなかった。


 捕獲された成也は、玄関まで引き連られて行き、外に放り捨てられてそして、律義にそろえてあった靴を投げつけられた。


「腕を磨いて出直して来……、あ、やっぱ来なくていいや、じゃ、13時に『ダマスナット集落』な。じゃ」

 

 ガチャ。


 恐らく黒羽のことだからチェーンも閉めていることだろう。


 今日のところは諦めて、誠也は家に帰ることにした。


 一見霧香のことを諦めているように見えるかもしれないが、諦めてなどいない。


 2ndシナリオがどのようなものかをプレイしていない成也は知らないが、彼は2ndシナリオに全ての答えがあることを、何となくだが感じていた。


 あるかどうかは誰にも分からないのだが。


 今日も成也は妹のためにダイブし続けている。




      成也は、ロリコンでは無いのだ。





 感想、誤字脱字、欠点、変な言い回し等ありましたら指摘お願いします。



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