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死体が無いなら作ればいいじゃない♪  作者: たしぎ はく
5thシナリオ~第二章~
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第三話:ジン


 ともゾン更新小休止中なので、こっち投稿。さあ、ともゾン書くぞー!


 空気を焼きながら一直線にこちらに突き進んできた太陽光は、一つに固まる俺とゆーき、聖夜の方向に一直線だった。

 しかし、俺と八咫烏の間には、銀の大鏡がある。超カッケ―銀の大鏡がある。

 光は、鏡面などにあたると反射する性質を持っている。いくら魔法でも、物質の性質までは捻じ曲げられない「トレジャーオンライン」において、光は、鏡に当たれば全反射する。

 はたして八咫烏が放った光は一つ目の鏡に全反射して、その入射角と反射角は同じとなり、八十度くらいの角度で鏡にぶつかった光が、同じ角度で真下に抜けた。

 そして光が進む先には、もう一枚の鏡が生えている。

 全反射した鏡は再度全反射して、突っ込んできた光と平行になるようにして発射された。


 八咫烏が焼ける。


          ☆☆☆


「よし、今度こそ開けるぞ」


 八咫烏はしっかりとゾンビ化させておいてから、ダンジョンのドアのノブに手をかける。

 すっかりラスボスを倒した気分なのだが、まだダンジョンに入ってすらいない。Sギイルの奴は、いったいどれだけ全力でダンジョンを作りに来たのだろうか。


「はぁ、やっとですの?」


 やれやれ、といった口調でゆーきが言う。まさにその通りだ。ダンジョンに入ってすらいないのに、消耗が激しすぎた。


「はぁ、やっと入れるのか?」


 やれやれ、とゼスチャー付きで聖夜が言う。なんで疲れてんの? お前、さっきの戦闘で何もしてないだろ? むしろお前が一番消耗してしかるべきだろ。


「それじゃあ開けるぜ? 準備はいいか? ここから先は――、まさに死地だ」


 枯れ木と同じ素材でできたドアを全力で引いた。


 ――ズダム!


 すごい音がして、ドアが歪んだ。

 ――外開きじゃなくて、内開きだった。


「ククク、おい、内開きだぞ? そ、それを、外にひいて、しかも、ここから先は、し、し死地! ――まさに死地だ! クはーっはっはっ! うひひ、うひひひ!」


 恥ずかしい!

 なんか格好つけたセリフを言った後だったから余計に恥ずかしい!


「その……、あの、クロウ様? ……私、見てませんのよ?」


 ゆーきの気遣いが俺の心に突き刺さる!

 同情されるくらいなら笑われるほうがマシだ――っ!

 たぶん耳が赤くなっているだろうなと思いながら、ドアを内開きに押した。


 ――キィ


 と、軽い音を立ててドアが開く。

 同時に中から、黒い靄のようなものが溢れ出してきた。


「うわぁ!?」


 あわてて飛び退く。

 あふれ出した黒いそれは、ダンジョンの外で収束し始めた。

 その間に俺は幻影龍の憑依を解除して、渓谷の守護竜――機械竜を憑依。発生させた風でその靄を霧散させた。


「さ、行こうか」

「いえいえいえ! い、いいんですの? 明らかに敵MOBでしたのよ!?」

「そうだぞクロウ! 倒さなくて――」

「いやあの、正直なところ、いい加減面倒くさいんで。早くダンジョン入ろうぜ?」


 もしこの場面見てたら、Sギイルは歯噛みして悔しがるだろうなー、などと考えつつ、やっとこさダンジョンに足を踏み入れた。


          ☆☆☆


 枯れ木の内部は、階段になっていた。下り階段だ。

 ドアを開けたら一歩目から段差になっており、天井はそれと同じ角度で傾いている。左右には壁が張り出していて、少し息苦しさを感じた。


 やや長めの階段を下ると、壁に突き当たった。

 通路だ。

 右と左に伸びており、どちらの道も数メートル進んだ先で曲がっていた。


「どちらに進みますの?」


 ゆーきが、腕を組みながら言った。胸が強調される形になったが、現実世界でガン見してるので特に何とも思うことはなかった。まあ、ゆーき――ユーキ無防備だしなあ……。


「やっぱり――」


 聖夜と俺の声が被る。


「――右だろ。俺のカンがそう告げている……!」

「――左だな。セオリー的に行くと」

「私も、右だと思いますの」


 よし決まりだ。

 右側に賛成二票、左側一票で右側に進むことが決定。


 通路を数メートル進み、左に曲がるとそこには広間があった。

 何の変哲もない、それこそ壁の凹凸や模様すらもない空間だ。壁は薄紫の色をしており、ダンジョン内の薄暗さと相まって不気味な雰囲気を醸し出している。

 向こう側に通路が続いているのが見えたので、やや警戒しながらも、足を踏み入れる。

 俺、聖夜、ゆーきの順に部屋に入り、そして。


 ――ガション


 広間の壁が動き、通路につながる道がすべてふさがれた。

 ――密室だ。


          ☆☆☆


 入口が二か所とも防がれると同時、先ほどの黒い靄が部屋に充満し始めた。

 俺の周囲は、風の幕を張って浸食をふせいである。聖夜は――知らね。なんか防ぐ方法ぐらいあるんじゃね?


「おい、お前! ちょ、助け! 先輩への気遣いとか! 覚えてろ!?」

「すいませぇん、聖ぇぃ夜先ぱぁい、これ、定員二名なんですぅ」


 語尾にハートでもつけてやろうかというくらいの猫なで声を出してみるが、あまりの気持ち悪さにゆーきに殴ってもらおうかと思った。最近気づいたけど、俺、S(サド)でもM(マゾ)でもどっちでもイケる。いや、殴られたいとは思わんけど。

 ゆーきは、あいかわらずどエムで困る。つい先日にも、真夜中に押しかけてきて恥ずかしそうにもじもじしていたことがあった。いったい何を言い出すのかと思っていたら、「罵ってほしいんですの……!」とか言い出した時には、なにかこう、エロいことを期待していた俺としては甘引いた。いやもちろん、罵ってあげたけど。


 そんなことを思い出していると、靄は収束し終わり、人型をとった。

 魔法のランプで出てきそうな闇色の魔人――。それが、


「いったい何体いますの――!?」


 

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