第二十話:サーバーダウン
現在二十一話執筆中。
予約投稿で12時頃にはみなさんのもとにお目見えすることができるかなー、と。
頑張ってますよー。
敵は二人。いや、二人と一匹。
対して俺に味方はいない。
ならば作ればいい。
幻影龍の能力を使い、俺の分身を大量に生み出す。
多重影分おっとパクリになるところだった。
「ええい、ちょこまかと煩い蠅どもよ……!」
そういって鏡が両手を広げる。
そいて鏡を始点にして禍々しい黒の波動が辺りに撒き散らされた。
俺はガード姿勢をとるものの、幻影は全てかき消された。
「鬱陶しいわ……! 二人まとめて相手をしてやろう……。かかってくるがいい……」
鏡の言い分は無視。
ウイロウに向かって咆哮を放つ。
「うわ! ちょ、ここは共闘とかそんなので!」
無理無理。
俺には時間制限があるんだよ。
残りHPは1620、残された時間は1時間21分だ。
ここでウイロウと共闘しても、鏡を倒したあとウイロウを倒せるとは思えない。
でも鏡なら倒せそうだ。
だが鏡と共闘するのは無理そうだ。
というわけで。
「ここから先は三つ巴の乱戦だ!」
☆☆☆
残りHP1300。制限時間残り1時間5分。
ウイロウの残りHPは3120。鏡は7890。
ケーリを俺に憑依させて鎧鬼村裂を纏ってから、鏡にもじわじわとだがダメージが通るようになった。
それでもそのダメージは微々たるもので、イライラさせられる。
そして今、鏡の放った漆黒の槍がウイロウを貫いた。
ウイロウ残りHP2120。
「さて、いつ使うか考えてたんだけど、今しかないよね、やっぱり」
ウイロウは緑色をした瓶を取り出すと、中身を嚥下した。
「うぇ、しょっぱ苦い。総じて不味い」
口に残った白濁色の液体を吐き出した。
そしておもむろに俺の方へ向かって、駆け出す。
近づいてくるウイロウに向かって、こちらも高速移動。
ウイロウの右足に手をつくようにして、体を回転させる。
刃状の右足でかかと落としを叩き込む。
ウイロウには、動きを制限しても攻撃を当てることが可能ということが鏡の攻撃によって分かった。
そしてかかと落としを振り抜いてから、右腕を突き放して、後方に回避。
俺がいたところを漆黒の光弾が通り抜ける。
「ククク……。鏡を忘れて勝手に勝負するとか酷いもん。忘れないでよ……!」
ちょっと涙目の鏡が俺たちに向かって右手を突き出していた。
えーっと、もしかしてさみしがりとか? あれ、実はかわいい性格してるの?
突き出した鏡の手から漆黒の光弾が放たれ続ける。
「弾幕か!?」
俺もウイロウも光弾に直撃。吹き飛ばされるのを辛うじて踏ん張る。
その後弾幕の間を縫うようにして鏡に接近する。
避けきれない光弾は四肢を振るって弾き飛ばす。
両腕も刃状態に変形させている。
この鎧は、ある程度自由に形状を変えることができるのだ。
鏡の手前で腕を交差。
鏡の左隣をすり抜けるようにして右腕で切りつけ、真横で左腕をその柔らかそうな腹に叩き込む。
女の子に手を上げるなんて最低?
ごめんその通り過ぎて何も言えない。
やっぱやるなら勝ちたいじゃん。
これで鏡の残りHPは6720だ。
そのまま空中に飛んで逃げる。
鎧鬼村裂の形状を変化。
足は揃え、両腕を頭の上に突き出す。
その状態で腕の先をより鋭利に、一つの刃物のような形状にする。
それで完成されるのは一本の槍だ。
紫が混じる、漆黒の槍。
空中で反転、鏡に直進する。
そして鏡を突き刺すように攻撃、HPを削っていく。
しかし振り払われた。
光弾を喰らう。
更に吹き飛ばされたところに直撃こそしなかったものの白銀の光線が掠めていく。
☆☆☆
俺、残りHP790。
鏡残りHP2390。
そしてウイロウ。残りHP3120。
「なんでHPが減ってないんだ!?」
「ああ、これだよ」
ウイロウは緑の瓶を振る。
「これはね、無敵になれる薬さ。その効果はHPが三十分間減少しない。ただ欠点としてすごく不味い」
「それは欠点というのか?」
「苦いとかじゃなくて不味いんだ。吐き出したくなる。それに食感もドロドロしていて気持ち悪い」
会話しているふうに見えるが、実際は俺がウイロウに斬りかかりウイロウがそれをかわし、飛竜が鏡にブレスを放ち鏡が俺に光弾を飛ばし、それぞれがそれぞれを避けたり弾いたりしている。
さっきウイロウが緑の薬(仮名。俺考案)を飲んでから大体10分ほど経っている。
あと20分程で効果が切れる。
「ククク……。もう飽きたぞ。我がこの手で終焉をくれてやろう……!」
鏡は右手を上に突き上げ、左手を下に突き出した。
「『重力反転』……!」
途端、重力が反転した。
地面に吸い寄せられていたのが今度は逆に地面に弾き返される。
「『星砕き』……!」
空中に投げ出され続ける俺とウイロウに空中から隕石が降り注ぐ。
すごい数だ。
「『流星群』!」
さらに数が増える。
「『終焉の星:序章』!」
隕石の数が増え、更に隕石以外にも鉄の塊や氷の塊、炎の塊、岩石の塊などがあらゆる方向から降り注ぐ。
「『終焉の星:終幕』!」
そこで全ての攻撃が掻き消えた。
「……ククク。どうやらこのゲームが耐えられなくなったようだ」
「技が消えた……!?」
「システムが耐えられなくなったの!?」
急遽メールを受信。
鏡の放つ技が強力すぎてサーバーが一時的にダウン、技を発動できなくなったらしい。
最後の技が完成していたらと思うと、空恐ろしい。
というふうなことをぼんやりと考えていたから、あと少しで地面に激突するところだった。
「所詮この世界の器では我の全てを権限することはできぬのだな……」
鏡が少し悲しそうな顔をしていたのは見間違いだろうか。
「…………降参」
「「え?」」
ウイロウと声がかぶった。
おそらく現時点で最強のプレイヤーである鏡が降参したのだ。
驚くのも無理はない。
鏡は俺たちに背中を向けた。
その泣いているように見える背中にかける言葉は見つからなかった。
☆☆☆
「残ったのは二人のようだね」
「そうだな、お前も降参するか?」
「いーや、まさか。さっきの鏡の攻撃で無敵効果は消えてしまったけどね、ぼくには絶対回避がある」
そうですか。
右腕を大剣に変形させる。
左腕は拳の形に。
両足は刃のまま。
右の大剣を振りかぶり、ウイロウに肉薄。
大剣は紙一重のところで避けられてしまうが、振り抜いた大剣を変形、剣の腹から拳を生やし、殴りつける。
「うぐっ!」
ウイロウは吹き飛ばされ、代わりに白銀の光線が俺に迫る。
もちろん避ける。
ウイロウが巻き込まれない距離まで離れたら飛竜が光線を放ってくるのは分かっているのだ。
今度は四肢を全て刃状で統一する。
ウイロウと戦うなら、手数を稼いだほうが戦いやすい。
吹き飛ばされて体勢を立て直しつつあるウイロウに斬りかかる。
右手、左足、左手、右手、右足。
そこで飛龍の尻尾に攻撃をはじかれ、その勢いに負ける。
後ろに弾き飛ばされた。
ウイロウの残りHPを確認する。
残りは、あと一発でも攻撃を放てばウイロウを倒せるくらいまでには減らすことができている。
このままいけば倒せる。
高速でウイロウに肉薄する。
☆☆☆
あと三メートル。
二メートル、一メートル。
右腕を振りかぶる。
これを振り下ろせば終わりだ。
振り下ろす。しかしウイロウは右にそれて回避。
慌てず今度は左腕を叩き込む。
それもよけられる。今度は返しの右腕。
「あ」
そこで、ウイロウが転んだ。
俺の鎧の突起物に服が引っかかったのだ。
ここから攻撃を避けるのは不可能だろう。
俺の右腕とウイロウまで、あと十センチ!
剣が迫る!




